急速に勢いが衰え、約320店舗の撤退を余儀なくされた。2022年8月に創業者の邦夫氏が退任し、息子の健作氏が社長に就任。2024年9月末日時点で、いきなり!ステーキ(国内 177、海外5店舗)、その他3店舗ある。

 不振に苦しんだ状態を打破するため、顧客層に合致させた店舗リニューアルと新規出店、海外での認知度向上、市場におけるポジショニングの獲得、 成長モデルの確立、店舗網の拡大に取り組んでいる。現在は、立て直しに向け、攻めの投資に力点を置き、経営力の強化に努めている。2023年10月、東証スタンダード市場へ市場変更している。

 いきなり!ステーキの損益状態と財務の安定度は以下の通りだ。

いきなり!ステーキの損益状態(売上/営業利益/自己資本比率)】
2022年:148億円/▲16億円/20.2%
2023年:146億円/▲5億円/44.8%

◆会員ランク制度「肉マイレージ」にも変化

 自己資本比率も改善するなど、どん底状態からは若干明るい兆しを見せているようだ。なお2024年度上半期は、売上69億8200万円、営業利益100万円である。直近の売上の推移は、

【いきなりステーキ 売上等推移(2024年7→9月)】
売上:91.3%→90.4%→95.5%
客数:83.8%→82.4%→85.9%
客単価:109.0%→109.7%→111.1%

客単価は上昇して前年の大幅赤字は解消されているが、店舗数と客数の大幅な減少から売上は前年を下回っている。第2四半期においては原材料や人件費などあらゆるコストの上昇対策として、グランドメニューの改定、DXの導入などを実施。現在は名物のオーダーカットを廃止するなど事業の再生に注力し、V字回復を目指している。

 2024年9月からは公式アプリの会員ランク制度である「肉マイレージ」に、最上位ランク「ロイヤル・ダイヤモンド」を新設し、上位得意客の優遇に力を注ぎ、安定的な顧客基盤を再構築している。また、インドネシア現地法人との間で、フランチャイズ契約を締結し、海外展開も拡充するようだ。

◆新業態の展開でV字回復を目指す

 再生を加速するための新たな業態も開発している。店舗の統廃合で縮小した中核ブランドであるいきなり!ステーキを補完するため、増えている孤食に対応した「ひとりすき焼き」がコンセプトの店舗を11月下旬にオープンする予定だ。最近は1人焼肉や1人鍋を提供する店も増えており、それらも追い風となるか。

 メニューは和牛を中心に、ブランド牛などを使用した定食形式だという。すき焼きは牛肉料理の中でも豪華な定番メニューであり、お祝い事や何かのご褒美にとよく食べられる国民食の一つだ。そのすき焼きを、離れの茶室のように、落ち着きのある雰囲気の中で、カウンターを主体とした席で提供する。

 牛肉、卵、米も国産にこだわり、自社で独自開発した割下を使用する。今、A5ランクの肉が値崩れを起こしているが、店員がお客さんの目の前で肉を焼き、カウンター席の一人ひとりに提供するサービスで顧客提供価値を高め、価格競争に埋没しない。急伸するインバウンド需要も吸引し、将来的には30店舗ほどの展開を目指すそうだ。

◆家族連れに人気の「ステーキファミレス店」

 そういった厳しい環境の中で奮闘するステーキハンバーグをメインにする「ブロンコビリー」。コスパが高いステーキチェーンとして人気で、東海地方を中心に、全店直営の郊外型店舗で139店舗(2024年4月1日現在)を展開している。

 直近の業績(2024年1月〜9月)を前年と比較すると、

【ブロンコビリーの業績(2023年→2024年)】  
売上:175億25百万円→199億52百万円 
営業利益:11億90百万円→20億15百万円
営業利益率:6.8%→10.1%
原価率:34.9 %→32.6%