オワコン「札幌ドーム」最終年より観客動員数が爆増中!日ハム「エスコンフィールド」なぜこんなに差が…試合がなくても稼げる「驚きの理由」
北海道日本ハムファイターズの新球場・エスコンフィールド北海道の観客動員数が好調だ。その一方で、かつての日ハムの本拠地・札幌ドームの経営状況は苦しいままだ。なぜこうなってしまったのか。札幌事情に詳しいライターの小林英介氏が解説するーー。
24年シーズンは観客数約207万人
10月14日、クライマックスシリーズファーストステージが開かれた北海道北広島市のエスコンフィールド北海道。2024年リーグ2位の北海道日本ハムファイターズは、同3位の千葉ロッテマリーンズを5‐2の逆転勝利で下し、1勝1敗となり一戦も落とせない状況からクライマックスシリーズファイナルステージへと駒を進めた。
エスコンフィールド北海道の2024年シーズンの観客動員数は、207万5734人。日本野球機構(NPB)が公開した2023年度の観客数188万2573人を約19万人ほど上回る数字だ。
単純な比較はできないかもしれないが、札幌ドーム(現・大和ハウスプレミストドーム)を本拠地として戦っていた2022年シーズンの観客動員数は118万247人で、約89万人ほどの開きがあるのだ。
豊富なバリエーション誇るエスコン、札幌ドームは見劣り
エスコンフィールド北海道が好調な原因の一つとしてよく挙げられるのは、「試合がない日も球場内に入ることができる」という点だ。
球場を含めた「Fビレッジ」には子供たちが遊ぶ場所のほか、シミュレーターを備えた乗馬クラブ、ワーケーションできるブース、そしてホテルやサウナもある。飲食ブースも充実している。寿司屋や焼き鳥、ラーメンはもちろん、クラフトビールを味わえる店舗もある。
札幌ドームに行ったことがある筆者も実際に現地で飲食したことがあるが、「これは良い」との認識だった。札幌ドームでは試合や催し物がある日に飲食店がオープンする。ハンバーガーやビアバー、クレープ、カレー、ジンギスカンなどはあるものの、どうしてもエスコンフィールド北海道よりは見劣りしてしまう。
北広島は「新駅」設置でまちづくり進む?
一方、球場までのアクセスはどうか。札幌ドームのホームページによると、札幌ドームは札幌市営地下鉄東豊線福住駅から徒歩10分ほど。地下鉄さっぽろ駅から福住駅までは約13分との案内があるため、合わせて23分。ただ、地下鉄東豊線さっぽろ駅はJR札幌駅から少し離れた場所にあるため、時間に余裕を持って行動する必要がある。すると時間としては30分前後見た方が良いと考えられる。
エスコンフィールド北海道はJR北広島駅からシャトルバスを使うと5分で到着する。JR札幌駅からは約18分前後かかるため、合わせて23分ほど。札幌ドームとはあまり変わらないのだ。歩けば19分かかるJR北広島駅ーエスコンフィールド北海道間だが、今後、アクセスが良くなる可能性もある。それはなぜか。JR北海道が計画している「ベースボールパーク新駅」があるからだ。
JR北海道と北広島市は今年7月11日、連名でプレスリリースを出し、新駅の設置工事に着手したと発表した。新駅を設置するのは、JR上野幌駅とJR北広島駅の間で、エスコンフィールド北海道まで徒歩4分の位置にある。総工費は約90億円で2028年度夏ごろの開業を予定する。新駅が完成すれば、確実に「新球場への入口」としての機能を果たす。将来には、北海道医療大学が北広島に移転することなどもあり、北広島市のまちづくりはさらに進むことになりそうだ。
Bクラス低迷に暴力事件、人種差別騒動も…イザコザ続きだった日本ハム
日本ハムの本拠地移転構想が浮上した2016年から約8年。Bクラスに低迷していたチームは、新球場と共に輝きを取り戻しつつある。8年の間に、チームをめぐる状況は大きく変わった。2012年から指揮を執っていた栗山英樹監督が成績不振の責任を取って2021年に退任することとなった。同10月16日に栗山監督の退任を発表した球団は、ホームページで「チームを5度のAクラスに導き、2012年にリーグ優勝。2016年は球団新記録となる15連勝を経て、最大11.5ゲーム差を逆転してのリーグ優勝と、日本一を達成しました。球団の監督としては歴代最多となる勝利数をチームにもたらしました」と功績を讃えた。
それと前後して、チーム内ではイザコザが相次いでいた。栗山監督の退任が発表される約2か月前の2021年8月、中田翔内野手がチームの同僚選手1人に暴力をふるったとして無期限出場停止処分を受けた。試合は1・2軍の全試合で、激震が走った。中田は8月20日、読売ジャイアンツにトレード移籍(現・中日ドラゴンズ)。球団を通じて「なぜ自分を律することができなかったのか、後悔とともに相手選手はもちろんのこと球団関係者、家族、そしてファンの皆様に対していくらお詫びしても足りないと深く反省しています」「心を入れ替えて一から精進します」などとコメントを発表した。そのほかにも、球団の公式SNSに掲載された動画内で、とある選手をやゆする言動が残されており「人種差別だ」などと批判の嵐となったことも記憶に新しい。
栗山政権が終わりに近づいているとき、「栗山監督退任時のチーム状態は崩壊している」などの声が多かったのは事実だろう。しかし、翌年から就任するとある人物の影響もあり、チームが大きく変わるきっかけが生まれることとなる。
BIGBOSS就任、3年かけてエスコンでCS開催
2021年10月末、球団は阪神タイガースやMLBでもプレー経験がある新庄剛志氏が新しい監督に就任することを発表。11月4日には本人が出席して就任会見を開いた。開口一番「今日は集まってもらってありがとうございます。22代目の監督として選ばれたことが非常に嬉しい。優勝なんか目指しません」などと話した。そのうえで自身を「BIGBOSS(ビッグボス)と呼んでほしい」と話し、実際の登録名も同じになった。
2021年オフには、ベテランの西川遥輝外野手(東京ヤクルトスワローズ)、秋吉亮投手(引退)大田泰示外野手(今オフ横浜DeNAベイスターズを戦力外)との契約を提示せず、保留手続きを行わない(ノンテンダー)ことを決定。そのまま退団となった。
2022年シーズンは、開幕投手に北山亘基投手(ドラフト8位新人)を指名し、周囲を驚かせた。ただ、シーズンは戦力不足が否めずに最下位で終わった。翌年は監督の登録名を「新庄剛志」へと変更して「心機一転」と行きたかったが、7月には7試合連続1点差負けを喫するというプロ野球ワースト記録を更新してしまうなど、この年も最下位に終わった。ただ、万波中正外野手の成長が垣間見えるなど、少しずつではあるが選手のプレーにも磨きがかかり始める。
「今年もダメか」
そうささやかれた日本ハムだったが、2024年シーズンは2位で終わり、エスコンフィールド北海道で初めてのクライマックスシリーズ開催となり、ファイナルステージへも進出した。
イベント開催で札幌市が後押しも…ドーム活用に四苦八苦
札幌ドームは、今年8月1日から「大和ハウスプレミストドーム」へと名称を変更した。札幌ドームが募集していたネーミングライツ(命名権)を大和ハウスが購入し、何とか帰着した形だ。
札幌ドームの2024年3月期決算のうち純損益は、約5億円になったとマスコミ各紙が報道。約10億円を投入した「新モード」が不発に終わり、収益性をどう確保するかが課題とされている。そのような中、大和ハウス工業が助け舟を出したわけだが、先行きは不透明といわざるを得ない。札幌ドームの今後のイベント予定を見ると、1週間に最低1つ程度は何らかのイベントが開催される見通しではあるものの、そのほかは「ガラガラ」の状態。札幌市もいくつかの催し物を開いて後押ししている状態で、札幌ドームの活用に四苦八苦している様子だ。
球団は10月16日からリーグ1位の福岡ソフトバンクホークスとクライマックスシリーズファイナルステージ(福岡Paypayドーム)を戦った。もし日本ハムが勝てば、エスコンフィールド北海道で初めての日本シリーズ開催となるはずであったが、惜しくも敗退。今シーズンを終えた。
最近も、JR北広島駅前に2025年に開業する新しいホテルの名前が発表されたばかり。札幌ドームは影が薄くなるばかりだが、果たして今後はどうなってしまうのだろうか。