【全日本大学駅伝】東洋大は出雲駅伝11位からの″鉄紺の逆襲″を成し遂げられるか!?
学生最後の駅伝シーズンは全日本から始動となる梅崎(左)、石田のダブルエース photo by Murakami Shogo
11月3日に行なわれる全日本大学駅伝(名古屋・熱田神宮→三重県・伊勢神宮内宮宇治橋前 /8区間106.8km)。全国8地区の代表25校と日本学連選抜、東海学連選抜の計27チームによる日本一をかけた熱き戦いは、どのような展開となるのか?
「鉄紺」東洋大は、三大駅伝初戦の出雲駅伝では11位と結果だけ見れば完敗だが、ある程度想定内の結果だったとも言える。迎える全日本大学駅伝では、箱根駅伝に向かうチーム像が反映した戦いが見られるだろう。
10月14日に開催された出雲駅伝。國學院大、駒澤大、青山学院大、創価大が激しいトップ争いを繰り広げたなかで、今年の箱根駅伝で4位に入った東洋大は見せ場なくレースを終えた。2時間15分45秒で11位。関東勢最下位で、10位の大東文化大に1分48秒差をつけられた。結果だけを見れば"惨敗"といえるだろう。
しかし、9月中旬の猪苗代合宿時に酒井俊幸監督は、「出雲駅伝は今夏、頭角を現してきている選手たちを思いきって起用したいなと思っています。失敗しても経験になってくれればいいですから」と話していた。酒井監督が就任した2009年以降でワースト順位となったが、この結果は"想定内"だ。
出雲駅伝は、エントリーメンバーから大胆だった。4年生は昨季の三大駅伝すべてに出場している小林亮太と、前回の箱根駅伝9区2位の吉田周のみ。昨年アンカーを務めた主将の梅崎蓮、今春のトラックシーズンで活躍した石田洸介は外れた。一方で三大駅伝を経験していない選手を6人登録、そのうち4人も1年生を入れてきた。
そのうえ、実際のレースでは4年生の起用を見送り、1年生ふたりを含む三大駅伝未経験者4人のオーダーで臨んだのだ。
2年連続の1区を任された緒方澪那斗(3年)がトップと16秒差の7位で発進するも、三大駅伝初出場の2区・濱中尊(2年)は区間11位の走りで10位に転落。同じく駅伝デビューとなった3区・網本佳悟(3年)も区間13位と苦戦して、順位をふたつ下げた。4区・迎暖人(1年)は京産大を抜き去るも、区間順位は10位。5区・西村真周(3年)は区間12位、6区・宮崎優(1年)も区間11位と伸びず、順位を押し上げることができなかった。
果たして第2ラウンドとなる11月3日の全日本大学駅伝で、"鉄紺の逆襲"はあるのだろうか。
全日本のチームエントリー16人のメンバーには梅崎蓮と石田洸介が復帰。ほかの出雲駅伝不出場者では小林亮太、吉田周、前回の箱根駅伝10区区間賞の岸本遼太郎(3年)、昨年の全日本5区10位の薄根大河(2年)らが入った。
また1年生は、6月の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会1組でトップを飾った松井海斗が外れるも、内堀勇、宮崎優、迎暖人の3人が登録された。
【4年生トリオに3年生の奮起が上位へのカギ】
三大駅伝で安定した走りを見せ続けてきた小林 photo by AFLO
9月中旬、酒井監督は全日本大学駅伝の戦い方を、こうシミュレーションしていた。
「全日本は昨年、勝負に全く絡めず、シード権(8位以内)も逃しました。来年度のスケジュールを考えると最低限、シード権は獲らないといけませんし、箱根で勝負するためにも上を目指していきたい」
"上"を目指すうえでキーマンとなるのが5000mの元高校記録保持者・石田だろう。「彼の復活の走りが東洋の象徴のようなカタチになっています」と酒井監督も感じており、石田に"エース"の走りを期待している。
全日本は1年時に4区で区間賞。2年時は2区で区間9位も、14位から9位に順位を上げている。3年時は試練の一年を過ごしたが、今季はトラックシーズンで大活躍。関東インカレの1部10000mで28分08秒29の自己ベストで6位に食い込むと、全日本の関東選考会は3組でトップを奪った。結果だけでなく、石田の気迫あふれる走りがチームの士気を高めている。
「全日本はスピード区間とロング区間のバランスが非常に難しいんですけど、出雲で経験を積んだ選手と、集大成となる選手の両方を起用するつもりです。序盤のスピード区間で耐えて、中盤4〜6区で上げていければ、7区、8区の走りも変わってくるかなと思っています」(酒井監督)
猪苗代合宿では、「まずは自分の状態を万全にして、全日本からチームに貢献できるようにしたいと思っています」と話していた石田の区間で流れをつかむことができれば、鉄紺のタスキが誇らしく揺れるだろう。
前回2区で区間16位と苦戦した小林も関東インカレ1部10000mで7位(28分12秒77)に入るなど、今季は10000mでハイアベレージを残している。全日本に向けては、「昨年、順位を落とす悔しい走りになったので、そのリベンジとして区間賞争いをしたいです」と力強かった。
順当なら、石田と小林が前半のポイント区間を担うことになるだろう。そして終盤のロング区間には、頼れる主将が控えている。
梅崎は前回の箱根駅伝2区を1時間06分45秒の区間6位と好走。5月の関東インカレ1部ハーフマラソンで日本人トップ(2位)に輝くなど、力強い走りでチームを引っ張ってきた。8月は北海道マラソンで夏マラソンを経験。本人は、「何区を任されても区間賞を狙える走りをしたい」と意気込んでおり、全日本では"順位"を決める走りが期待できる。
出雲を欠場した4年生トリオに続いて、3年生の奮起も"鉄紺の覚醒"には欠かせない。
前回4区(14位)を担った緒方澪那斗が、「昨年は走るだけで終わってしまったので、今年は区間賞を狙っていきたい」と言えば、前回7区(18位)に抜擢された西村真周も「昨年はよくなかったので、自分がチームに勢いをつけられるようにしたいと思っています」と前回のリベンジに燃えている。
それから出雲駅伝(3区)で失速した網本は、「ひとりで淡々と走るのが得意」というタイプ。全日本の後半区間(5〜8区)なら日本インカレ10000m8位の実力を存分に発揮できるだろう。また岸本遼太郎は「スピードより距離に適性があるので、全日本は後半区間を走りたい」と箱根10区で見せた快走を伊勢路で再現するつもりだ。
そこに1年生パワーが加われば、さらに面白い戦いができる。
特に宮崎は昨年の全国高校駅伝1区を区間3位と好走している選手で、6月の全日本選考会は3組で4着に入った。腰を痛めた影響で夏合宿は出遅れていたが、出雲はアンカーの大役を務めた。全日本でもポイント区間を担う可能性がある。
前回は1区を11位でスタートすると、2区で14位に転落。その後はさほど浮上できず、過去ワーストの14位に終わった。今回は序盤で流れに乗って、狙い通りに「上位争い」を繰り広げることができるのか。"その1秒をけずりだす"鉄紺の継走を楽しみにしたい。