困窮する国民をよそに”贅沢三昧”の汚職役人を引きずり下ろす!?...プーチンが恐れた男・ナワリヌイ氏が取った「冴えたやり方」

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真のロシア愛国者「アレクセイ・ナワリヌイ」がプーチン独裁政治の闇を暴く『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』が、全世界で緊急同時出版された。1976年にモスクワ近郊で生まれたナワリヌイが目にしたのは、チェルノブイリ原発、アフガン侵攻、ソ連崩壊、上層部の汚職、そして「ウクライナ侵攻」だった。政治とカネ問題、超富裕層の富の独占、腐った老いぼれに国を支配される屈辱と憤怒。独裁政治の闇をメディアに発信し、大統領選にも出馬した彼は、やがて「プーチンが最も恐れる男」と評されるようになる。そして今年2月、彼を恐れた当局により獄中死を遂げた。

そんなナワリヌイが死の間際に獄中で綴った世界的な話題作『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』より「本物のロシア愛国者の声」を一部抜粋、再編集してお届けする。

『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』連載第4回

「自分たちは無力、何も変えられない」...ロシア当局に骨抜きにされた“無気力な有権者たち”を投票所へ連れ出すために必要な「意外な戦略」より続く

ロシアの汚職をテーマに動画を配信

過去数年、私は同志とともに、ロシアの汚職をテーマにした終わりなき連続ドラマを制作していた。最近はYouTubeでほぼ毎回300万〜500万再生を誇っていた。

この国の報道ときたら煮え切らないものばかりで、何を伝えるにしても「疑いがある」とか「可能性がある」とか「〜との声もある」など、いかにも法律顧問に好まれそうな言葉遣いのオンパレードだ。そんなロシアの現実を踏まえ、私たちは最初からそういう報道姿勢に背を向けてきた。泥棒は泥棒、汚職は汚職と断じてきた。

広大な不動産を持つ人物がいれば、私たちはドローンで撮影し、いかに壮大な物件かをあらゆる面から伝えていた。その価値を突き止め、物件所有者が官僚であり、本人が公表しているささやかな所得額と物件の価値を並べて世に問うたこともある。

官僚のシャツの袖から高級腕時計

汚職に関してはどんなことでも理詰めで攻めていく手もあるが、私としてはもっと直接的な方法を好んで使った。例えば、大統領報道官が自身の結婚式で新婦にキスしている写真をよく見てみたら、シャツの袖から高級腕時計がのぞいていた。スイスのメーカーに問い合わせたところ、価格は62万ドル。5人に1人が貧困ラインである月収160ドルに満たないロシア国民の前に、この事実をさらした。月収160ドル未満はもっと正確に言えば「極貧」ラインである。こういう堕落した役人の厚かましさを目の当たりにした視聴者は激しい憤りを覚える。そこで、次の選挙で投票すべき地元候補を紹介するウェブサイトに呼び込む。役人の贅沢三昧を支援したくなければ、「こちらの候補に一票を」と呼びかけるのだ。

狙いどおりの展開となった。私たちは、「国を治める謙虚な愛国者たち」の暮らしぶりを暴くことで、ドラマとしての娯楽性も維持しつつ、視聴者の怒りに火をつけ、汚職の構造を解き明かしてプーチン体制にできる限りのダメージを与える行動を呼びかけた。ネタが尽きることはなかった。

映像素材はたっぷりある。シベリア地域のさまざまな都市の汚職について動画2〜3本はYouTubeに上げられそうだ。私は、飛行機の窓の外を眺めながら、そんな思いを巡らせていた。動画を公開すれば数百万人が視聴する。そのうち数十万人はノボシビルスク州とトムスク州の住民だ。視聴者は動画を見て終わりではない。怒りに震える視聴者は、我々の呼びかけに応えて投票所に出向き、親プーチン派候補への反対票となる投票行動を取るはずだ。

「この国では“運悪く”窓から転落することも珍しくない」…『プーチン体制』と戦い続けたナワリヌイ氏が明かした「災難だらけの日常」』へ続く

「この国では“運悪く”窓から転落することも珍しくない」…『プーチン体制』と戦い続けたナワリヌイ氏が明かした「災難だらけの日常」