【御田寺 圭】大惨敗の石破首相、たった1ヵ月で「退陣危機」へ…あの「腹出し集合写真」が予言していた「絶望的な人望のなさ」が命取りになった

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総選挙で石破自民党が喫した、歴史的大敗――その原因が「石破失脚をねらった陰謀・クーデター」の類いではないとしたら、自民党内の「石破首相のために」という“熱量”が小さかったからではないか。

前編記事【石破自民が無惨なボロ負け、「誰も気付かなかった本当の原因」とは…麻生太郎の陰謀でも、高市早苗のクーデターでもなかった】に続いて考察してゆく。

だれも「まずいですよ」と言ってくれない

いま思えば、石破氏が総理に就任したときに撮影したあの集合写真の騒動も、人望のなさとそれに起因する周囲の熱量の小ささによって重大なインシデントが起こることを暗示する、ある種の「伏線」だったように見える。

皆さんも覚えているはずだ、内閣発足時に撮られた写真の騒動を。石破氏はサイズ感が合ってないダボダボのモーニングを着用し、お腹はシャツがはみ出して「地肌が露出しているのではないか」と大騒ぎになり、さらに新品のメガネには使用時に剥がすべきロゴシールが貼られたままだった。

モーニングのサイズ感は急な総理就任で誂えが間に合わなかったという理由もあるかもしれないが(それだって総理大臣ともなると高級百貨店が特注を受けてくれるのだから、対処できないことはないはずだ)、さすがに腹が出ていたりメガネのシールがそのままだったりするのは、「だれかが指摘すればすぐに直せる」たぐいのものだ。しかし、石破首相はだれからの指摘も受けることなく、そのままパシャリと写真に納まってしまった。

これも結局のところ「ククク……石破のヤツに出鼻から恥をかかせてやろう」と反石破系のだれかが邪な企てを行ったのではなく、「石破首相に恥をかかせるわけにはいかない!!」と誰も本気では考えない程度に、みんなの“熱量”が小さかったせいで生じたハプニングだったのではないだろうか。

「あっ……、もしかして石破さん腹出てね?」とうっすら気づいた人は複数人いても、そこから踏み込んで【じっくり見て確認して本人に直接指摘する】ところまで、本気で石破首相のために動く気になった人はいなかった。本当に些細な熱量の違いでうまれた小さな行動の違いかもしれないが、それが後になって大きな「綻び」として露呈してしまったのだ。

「大事な集合写真でお腹露出」と「選挙終盤で2000万円の地雷が爆発」は無関係ではなく、党内の「石破首相のために!!!」というエモーションの小ささが招いた、同じ延長線上のアクシデントだったのではないかと思わずにはいられない。

「人望のなさ」が致命傷になった

自民党というのはよくもわるくも「伝統的日本組織」である。大企業的というか体育会的というか自治会的というか、ロジックを軽視するわけではないにしても、究極的には理屈ではなく「気持ち」で連帯を強める共同体主義的な部分が大きい。

理屈を超えた「気持ち」で結束を強める組織なので、リーダーを務める者の求心力や日頃の行いや人望がそのまま「組織のパフォーマンス」に大きく反映される。強い求心力を持つリーダーのもとだと、どの政党よりも一丸となって行動する結束力と実行力を発揮できるが、そうでないリーダーだとすぐにみんなバラバラになるし、細部の詰めが甘くなり、思わぬ失態を招く。

逆に、自民党のような「気持ち」ではなく、「ロジック」を重んじる政党(たとえば立憲民主党や日本共産党がその典型だ)は、自民党ほどの強烈な最大瞬間風速は出せないが、かといって「人望薄めのリーダー」が出てきてもそこまで総崩れにならない。よくもわるくも「この人のためになら俺はすべてを賭ける!!!」という浪花節で仕事をしている人が乏しいからだ。

石破茂という政治家がとくべつ無能とは思わない。だてに12期も代議士を務めているわけではない。しかし自由民主党という政党のリーダーになるには不向きだったと言わざるを得ない。立憲民主党や共産党のリーダーとしてなら適性がマッチするタイプの人だっただろうと思う。自民党では「人望のなさ(≒本気になってくれる人の少なさ)」はかなり重大なアキレス腱だ。情熱と忠誠をもって細部までしっかり詰めてくれる献身的な仲間の不在は、自民党のような「清濁併せ呑む」タイプの政治家が集まる組織では命取りになるのだ。

自民党が議席数200を割り込む大敗を喫したいま、石破首相の責任問題に発展することは避けられない。わずか1ヵ月あまりでの総理総裁の交代も視野に入るだろう。自民党関係者から聞くところによると、「総裁選なしで急遽代替わりするなら、直前に行われた総裁選の順位に基づくのが道理というものだ」といった声があがっているようで、本当にその方向性で自民党がまとまるなら、日本初の女性総理誕生も現実的な可能性として出てきたといえる。

空中分解状態となった自民党は、はたして結束を取り戻せるだろうか。

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