新しいスマートフォンの形として、注目を集めるフォルダブル。なかでも世代を重ねるごとに、着実に進化を続けているのがサムスンの「Galaxy Z Fold6」だ。発売から少し時間が空いてしまったが、筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。

サムスン/NTTドコモ/au「Galaxy Z Flip6」、開いた状態:約153.5mm(高さ)×132.6mm(幅)×5.6mm(厚さ)、閉じた状態:約153.5mm(高さ)×68.1mm(幅)×12.1mm(厚さ)、約239g(重さ)、シルバーシャドウ(写真)、ネイビー、クラフテッド ブラック(Samsung.com限定)、ホワイト(Samsung.com限定)をラインアップ

進化のキーワードは「フォルダブル」と「AI」

 スレート状のボディがほとんどを占める現在のスマートフォン。かつては「BlackBerry」のようなキーボード搭載モデルをはじめ、本体をスライドさせて、キーボードを引き出すモデルなど、個性的なモデルも数多く存在したが、今やほとんどが市場から消えてしまった。

 そんな中、ここ数年、新しいスマートフォンのフォームファクターとして注目を集めているのが「フォルダブル」だ。折り曲げられるという有機ELパネルの特性を活かし、大画面ディスプレイを搭載しながら、コンパクトなボディにまとめ、新しいユーザビリティを実現している。

 2019年にサムスンとファーウェイがグローバル向けに発表した当時は、筆者自身も含め、まだ頑丈さや耐久性を疑問視する向きも多かったが、ヒンジやケースの構造の改良が続けられ、防水などの耐環境性能にも対応することで、着実に信頼性を高め、市場での認知度も向上してきた。

 グローバル市場ではシャオミやOPPO、ファーウェイ、モトローラなども相次いでフォルダブルスマートフォンを投入し、昨年からはGoogleが「Pixel Fold」を発売し、今年は「Pixel 9 Pro Fold」へと進化させている。

 グローバルでは着実に浸透しつつあるフォルダブルだが、国内ではまだ十分に浸透してないという見方もある。先般、モトローラの「motorola razr 50」の発表会に登壇したソフトバンクのコンシューマ事業推進統括 モバイル事業推進本部 本部長の郷司雅通氏は、日本におけるフリップ/フォールドタイプのスマートフォンのシェアは、米国の1/4程度しかなく、国内市場はまだまだフォルダブルスマートフォンに拡大の余地がある旨をアピールしていた。

 フォルダブルのフォームファクターには、大きく分けて、2種類がある。ひとつはかつての折りたたみケータイのように、端末を縦方向に開くタイプで、「Galaxy Z Flip」シリーズや「moto razr」シリーズなどがこれに該当する。もうひとつが文庫本のように、端末を横方向に開くタイプで、今回、取り上げる「Galaxy Z Fold」シリーズやGoogleの「Pixel Fold」などが挙げられる。

 縦開きタイプのフォルダブルは、開いた状態なら、一般的なスレート状のスマートフォンと変わらない使い勝手で、閉じた状態では手のひらに収まる程度のコンパクトさが魅力だ。「Galaxy Z Flip」シリーズのテレビCMでもアピールされているが、端末をL字に開き、机などに置いた状態でグループでのセルフィーを楽しんだり、閉じた状態の端末を片手で持ち、メインカメラで自撮りをするといった使い方ができる。

 これに対し、横開きタイプのフォルダブルは、端末を閉じた状態の外側のディスプレイで使いつつ、動画や地図など、より大きな画面で表示したいときは、端末を開いて利用するといった使い方に適している。電子書籍や電子コミックなどを楽しむときも同様だ。筆者も「Galaxy Z Fold4」から本格的にメイン端末として利用しているが、当初は「あまり開かないかも……」としていたものの、世代を追うごとに開閉動作がスムーズになり、最近は端末を開いた状態で利用することが増えている。

 今回取り上げる「Galaxy Z Fold6」は、そのネーミング通り、横開きのフォルダブルとして、6代目のモデルになる。初代モデルから試用する機会を得ているが、世代を追うごとに着実に改良が加えられ、今回も昨年の「Galaxy Z Fold5」に比べ、ディスプレイの形状やヒンジなど、細かい部分に至るまで、改良されている。詳しくは後述するが、パッと見の外観こそ、共通しているものの、ハードウェアとしての扱いやすさは確実に前モデルよりも進化している。

 もうひとつの進化点は、やはり、「Galaxy AI」だろう。今年3月に発表された「Galaxy S24」シリーズからスタートしたGalaxy AIは、撮影した写真の編集や加工だけでなく、翻訳や文字起こし、テキストの要約、音声通話での通訳など、多彩な機能を実現しており、スマートフォンの進化の新しい方向に「AI」があることを明確に認識させてくれる。

 今回の「Galaxy Z Fold6」は、これまで通りのNTTドコモとauに加え、Samsung.com公式ストアにおいて、当初からSIMフリー版が販売されており、8月30日からはAmazon.co.jpでもSIMフリー版の販売が開始されている。Samsung.com公式ストアでは標準の2色加え、限定カラーのクラフテッドブラック/ホワイトが販売されている。

 価格はNTTドコモやauが約27万円前後、Samsung.com公式ストアでも約25万円からと、一般的なスマートフォンに比べると、かなり高い印象は否めないが、NTTドコモの「いつでもカエドキプログラム」、auの「スマホトクするプログラム」を利用すれば、月々7000円を切る支払いで購入することが可能だ。

開閉しやすくなった折りたたみボディ

 まず、外観からからチェックしてみよう。ボディの基本的な構造は昨年の「Galaxy Z fold5」を継承しているものの、ボディの幅が閉じた状態で約1mm増、開いた状態で2.7mm増とわずかに増えているのに対し、厚さは閉じた状態で1.3mm減、開いた状態で0.5mm減、重量で約14gの軽量化を実現しており、全体的にスリムに仕上げられている。フォルダブルは複雑な構造のため、どうしても重量が増える印象があるが、「Galaxy Z Fold6」は着実に「ダイエット」を実践し、ユーザーが扱いやすい環境を実現している。

本体を閉じた状態の前面にはカバーディスプレイを備える。ボディは幅68.1mm、高さ(長さ)153.5mmのスリム&トールデザインで、片手で握るように持ちやすい

本体の背面はおサイフケータイや各携帯電話会社のロゴなどもなく、非常にスッキリしたデザイン。写真はシルバーシャドウだが、筆者が購入したクラフテッド ブラックはカーボン調の背面仕上げ

本体を閉じた状態の左側面はヒンジ部分のカバーするパーツ。「SAMSUNG」のロゴがあしらわれている

本体を閉じた状態の上部。カメラ部の突起は約3.4mm(実測値)

「Galaxy Z Fold6」(左)と「Galaxy Z Fold5」(右)の閉じた状態の前面。筐体の右側面の角の仕上げが変更されたことで、よりスクエアな印象に仕上がった

「Galaxy Z Fold6」(左)と「Galaxy Z Fold5」(右)の背面。カメラ部のデザインが変更されているだけでなく、筐体の側面側(左側)のデザインも変更されている

「Galaxy Z Fold6」(左)と「Galaxy Z Fold5」(右)の開いた状態の背面。筐体やカメラ部だけでなく、カバーディスプレイの角の仕上げやおサイフケータイのロゴの有無なども異なる

「Galaxy Z Fold6」(上)と「Galaxy Z Fold5」(下)を閉じた状態の角の形状。丸みを帯びた形状から角張った形状に変更された。ケースを装着すれば、それほど大きな差は感じないが、よりスクエアな印象に仕上げられている

 今回の「Galaxy Z Fold6」を手にして、もうひとつ感じたのは、本体の開閉のしやすさだ。ヒンジの改良については明確にアナウンスされていないが、「Galaxy Z fold5」と比べ、確実にヒンジ部分の動きがスムーズな印象だ。

本体を開いた状態の背面。ほぼフラットに開く。ヒンジ部分は左右筐体の合わせ部分の内側に隠れる構造。開閉もスムーズ

本体を開いた状態の下部。メインディスプレイはほぼフラットに開くが、右筐体にはカメラ部が搭載されているため、机などに置くと、どうしても傾きができてしまう

 フォルダブルのボディについては、実用面では落下時などのリスクを考えると、ケースを装着して利用したいところだ。筆者の周囲には数人、「Galaxy Z Fold」シリーズのユーザーが居るが、そのほとんどがケースを装着している。なかには本体のまま、持ち歩く人もいるが、価格が高いこともあり、一般的なスマートフォンよりは取り扱いに注意が必要だ。

 落下などによる破損の対策としては、NTTドコモの「smartあんしん補償」(月額1100円)、auの「故障紛失サポート ワイド with Cloud」(月額1590円)といった補償サービスでカバーできるほか、サムスンが提供する「Galaxy Care」(月額1197円~)も利用できる。

 ボディ側面のボタン類や端子類のレイアウトは、基本的に変わらない。右側面に電源ボタンと音量キー、本体下部(右筐体)にUSB Type-C外部接続端子などを備える。

本体を閉じた状態の右側面。左筐体(下側)にはSIMカードトレイ、右筐体(上側)にはシーソー式音量キー、指紋センサーを内蔵した電源キーを備える。電源キーの左側の楕円状のパーツはミリ波対応のアンテナが内蔵されていると推察される

本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。充電はUSB以外に、Qi規格準拠のワイヤレス充電にも対応する

 生体認証については指紋センサーが電源ボタンに内蔵されており、端末を閉じた状態でも開いた状態でも右側面をタッチすれば、画面ロックを解除できる。端末の持ち方にもよるが、親指や人さし指などの指紋を登録しておけば、操作しやすいだろう。指紋認証は認証アプリ[Samsung Pass]を使うことで、dアカウントやau IDといった各携帯電話会社のアカウントをはじめ、アプリやWebサイトへのログインなどに利用できる。

 顔認証については、カバーディスプレイ側のカメラ(カバーカメラ)とメインディスプレイのサブカメラの両方で画面ロック解除ができるが、マスク装着時の画面ロック解除には対応しない。

 バッテリーは前モデルに引き続き、4400mAhの大容量バッテリーを搭載する。充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子のほか、Qi規格準拠のワイヤレス充電にも対応する。バッテリー駆動時間は前モデルと比較して、動画再生で約10%、音楽再生で5%の延長を実現しているほか、連続待受時間や連続通話時間なども数%程度、延びている。新しいチップセット採用で電力消費が多少は増えているはずだが、わずかでもロングライフが実現できているのは評価できるポイントだ。

同じ対角サイズながら、形状を変更したディスプレイ

 「Galaxy Z Fold6」には本体を開いたときのメインディスプレイ、本体の閉じたときに利用するカバーディスプレイの2つのディスプレイが搭載される。メインディスプレイは7.6インチのQXGA+(2160×1856ドット表示)対応のDynamic AMOLED 2Xを搭載する。リフレッシュレートは従来モデル同様、1~120Hzの可変で、省電力となめらか表示を両立させているが、[設定]アプリの[ディスプレイ]-[動きの滑らかさ]を[標準]に設定すれば、リフレッシュレートを最大60Hzに抑え、電力消費を抑えることもできる。

 ディスプレイの対角サイズは従来モデルと変わらず、解像度がわずかに増えている。従来モデルはメインディスプレイの四隅の角が丸みを帯びた形状なのに対し、「Galaxy Z Fold6」では四隅がほぼ直角の形状に仕上げられている。実用面では大きな違いはないが、いくつかのライバル製品がディスプレイの四隅の角を丸く仕上げているのに対し、Galaxyは少し異なる方向性でデザインされているようだ。

「Galaxy Z Fold6」(上)のディスプレイの角は、「Galaxy Z Fold5」(下)の丸みを帯びた形状から、角張ったスクエアな仕上げに変更された

 メインディスプレイは従来モデルに比べ、明るさが大きく進化し、ピーク輝度が1750nitsから2600nitsに大幅に向上している。実際に使っていてもかなり明るく、Impress Watch Video「法林岳之のケータイしようぜ!!」で取り上げた際もディスプレイの明るさを抑えないと、人物などの周囲と露出のバランスが崩れてしまうほどだった。これだけの明るさなので、太陽光の下でも不満なく、利用できている。

本体をL字に開いたフレックスモードでは、動画再生時に下側にコントロール画面が表示される。映像はImpress Watch Video「法林岳之のケータイしようぜ!! #778」を再生したもので、映像内の「Galaxy Z Fold6」はカメラ起動時に「カバー画面プレビュー」をオンに切り替えた状態を説明してる

 フォルダブルで気にされることが多い中央部分の折り目(曲がり目)は、従来モデルとそれほど大きく変わらず、画面が点灯して、明るいコンテンツを表示しているときは、ほとんど気にならない。

 本体を閉じたときに利用するカバーディスプレイは、6.3インチのHD+対応(2376×968ドット表示)対応のDynamic AMOLED 2Xを搭載する。スペック表では「HD+」と表記されているものの、縦方向(長辺)はフルHDよりも解像度が高く、横方向(短辺)もフルHDの1080ドットよりもわずか100ドットほど、低いだけなので、実質的にはフルHDとほぼ同等の解像度になる。リフレッシュレートは従来モデルの48Hz~120Hzの可変に対し、1~120Hzの可変リフレッシュレートに変更され、省電力性能を高めている。

 ディスプレイの保護については、これまでの「Galaxy Z Fold」シリーズ同様、メインディスプレイは専用の保護フィルムが貼られており、基本的にはユーザー自身で貼り替えない仕様となっている。筐体の合わせなどを考えてもメインディスプレイには、追加の保護フィルムや保護ガラスを貼らない方がいいだろう。

 出荷時に貼られている保護フィルムは使い方にもよるが、筆者の場合、「Galaxy Z Fold 4」のときは使いはじめて一年後、出版用語で言うところの「ノド」(曲がり目)の部分に浮きができたものの、「Galaxy Z Fold5」では最後まで浮きができるようなことはなかった。おそらく、サムスンでも世代を追うごとに、ヒンジや保護フィルムなどに改良が加えられているのだろう。

 万が一、メインディスプレイの保護フィルムに浮きができたり、剥がれかけたときは、東京・原宿のGalaxy Harajukuで無料で貼り替えてくれるサービスを受けられる。欲を言えば、こうしたサービスを期間限定などの形でも構わないので、各キャリアショップで提供するなど、全国で利用できる環境をサムスンと各携帯電話会社で整えて欲しいところだ。

 また、ディスプレイに関わるところでは、「Galaxy Note」シリーズを継承した「Sペン」にも対応する。ノートアプリの[Samsung Notes]をはじめ、さまざまなアプリで手書き入力をしたり、メモを取ったり、絵を描いたりできる。特に、「Galaxy Z Fold6」では搭載された「Galaxy AI」を使い、ラフに描いた絵をイラスト風に仕上げるといった使い方が手軽にできるため、今まで以上にSペンを活用するシーンは増えそうだ。ただし、Sペンが利用できるのはメインディスプレイのみで、カバーディスプレイでは使えない。

 Sペンに関連して、ひとつ気になるのは、利用できるSペンが「Galaxy Z Fold」シリーズに対応するものに限られている点だ。たとえば、「Galaxy S24 Ultra」や「Galaxy Note」シリーズ付属のSペンをメインディスプレイに近づけると、「Galaxy Fold用に設計されたSペンのみを使用してください」と警告が表示されてしまう。ところが、国内で購入できるGalaxy Fold用Sペンは、Galaxy Z Fold6専用ケースの「S Pen Case」に付属するものしかないため、Sペンを利用するには純正ケースを買う必要がある。

メインディスプレイで利用するSペンは、Galaxy Fold用に設計されたSペンが必要になる。他製品のSペンを近づけると、こうしたアラートが表示されるが、国内向けにはGalaxy Z Fold6用ケースに付属のものしかなく、単品でSペンが販売されていない

 海外では純正品として、「Galaxy Z Fold5/Fold6 S Pen Fold Edition」が販売されているが、国内向けに販売されていない。純正ケースを購入しないときは、並行輸入品やサードパーティ品などを購入するか、従来機種の「S Pen Case」の中古品を探すしかないが、「Galaxy AI」でSペンを利用するシーンが増えそうな状況だけに、アクセサリーのラインアップも拡充して欲しいところだ。

Snapdragon 8 Gen3 for Galaxyを搭載

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen3 for Galaxyを採用する。国内でSnapdragon 8 Gen3を採用するモデルは限られているが、「Galaxy Z Fold6」に搭載されるものは、「Galaxy S24」シリーズに引き続き、Galaxy向けに厳選されたロットが選ばれているとのことだ。性能については申し分なく、ゲームなども快適にプレイすることができる。

 ただ、ゲームに関して言えば、メインディスプレイが7.6インチと大きいものの、貼られているフィルムや内側のガラスなどの構造が一般的なスレート状のスマートフォンと違うため、激しいタッチ操作を伴うゲームなどでプレイするときは、少し注意が必要だ。対角サイズはひと回り小さくなるが、端末を閉じ、カバーディスプレイでもプレイすることも可能なので、ゲームによって、使い分けた方がベターかもしれない。

 メモリーとストレージは12GBのメモリーを搭載し、ストレージは256GB/512GB/1TBという3つのSKU(モデル)が用意されるが、NTTドコモでは1TB版が扱われないため、1TB版を選ぶには、auか、Samsung.com公式ストアで購入する必要がある。外部メモリーカードには対応していない。

 ちなみに、後述するGalaxy AIの通訳及び翻訳では、扱う言語に対応した「言語パック」をインストールする必要があり、その容量がひとつの言語辺り500MB前後と大きい。そのため、より多くの言語パックをインストールするのであれば、512GB版や1TB版を選ぶことを検討した方が良さそうだ。

 ネットワークは国内の5G/4G、海外の5G NR/4G LTE(TDDE/FDD)/3G W-CDMA/2G GSMに対応する。5GについてはSub6に加え、ミリ波にも対応する。今のところ、ミリ波を利用できる場所は限られているが、今後、各社のミリ波を活用したサービスが拡充されれば、役立つシーンが増えてきそうだ。

 SIMカードはnanoSIM/eSIMのデュアルSIM対応だが、eSIMについてもデュアルeSIM対応のため、メイン回線もサブ回線(副回線)もeSIMといった使い方ができる。

本体左筐体の上部側にピンで取出すタイプのSIMカードトレイを備える。nanoSIMカードを1枚のみ装着可能。eSIMにも対応し、デュアルeSIMでの運用も可能

Flexスタイルでも撮影を楽しめるトリプルカメラ

 カメラは背面にトリプルカメラ、カバーディスプレイのパンチホール内にカバーカメラ、メインディスプレイの右筐体のパンチホール内にインカメラを内蔵しており、合計5つのカメラを内蔵する。基本的なカメラの仕様は従来の「Galaxy Z Fold5」から変更されていないものの、画像処理エンジンなどはチップセットが変わっていることもあり、チューニングが進んでいる印象だ。

 背面のトリプルカメラは、上から順に、1200万画素イメージセンサー/F2.2の超広角カメラ(12mm)、5000万画素イメージセンサー/F1.8の広角カメラ(23mm)、1000万画素イメージセンサー/F2.4の望遠カメラ(66mm)という構成で、広角カメラと望遠カメラは光学手ぶれ補正に対応する。望遠カメラはメインの広角カメラの光学3倍相当で、[カメラ]アプリ起動時に[3x]を選択すれば、望遠カメラに切り替わる。

背面に備えられたトリプルカメラ。従来モデルに比べ、カメラのリング部分が少し太くなり、やや強調された印象

カメラの設定画面。[透かし]の有無や[位置情報タグ]のオン/オフなどを設定できる

 カバーディスプレイ内のカバーカメラは1000万画素イメージセンサー/F2.2で、焦点距離が24mmの広角となっており、設定を切り替えれば、画角を拡げたワイドな撮影も可能だ。メインディスプレイ内のインカメラは、400万画素イメージセンサー/F2.0(26mm)という仕様で、従来モデルに引き続き、カメラ利用時以外はディスプレイが点灯するアンダーディスプレイカメラとなっている。

カバーディスプレイでのカメラのファインダー画面。[ポートレート]では人物の顔にピントが合わせられる。中段右側の丸いアイコンをタップすると、ぼかしなどの効果を調整可能

 カバーカメラとインカメラは顔認証や自撮りに利用できるが、自撮りについてはフォルダブルの特長を活かした撮り方の方が有用だろう。具体的には、本体を開いた状態で[カメラ]アプリを起動し、ファインダー内右上の[カバー画面プレビュー]ボタンをタップすると、カバーディスプレイにもプレビューが表示されるので、その状態からGalaxyシリーズでおなじみの「手のひらシャッター」で自撮りをするわけだ。撮影時に端末の持ち方には十分に注意する必要があるが、高品質なメインカメラで自撮りができるのは、「Galaxy Z Flip6」同様、大きなアドバンテージと言えそうだ。

 撮影モードは「ポートレート」「写真」「動画」の3つが標準で用意されていて、「その他」を選ぶと、「EXPERT RAW」「プロ」「プロ動画」「ナイト」「食事」「スローモーション」などが選べる。通常は標準の3つの撮影モードで撮影すれば、それぞれのシーンをAIが自動認識するが、よりシーンに合った設定で撮影をしたいときは、「その他」から選ぶ。

 「その他」の項目のうち、「EXPERT RAW」はJPEG形式に加え、RAWデータ形式で記録できるもので、イメージセンサーから読み出した画像情報を非圧縮で保存できる。天体写真や多重露出撮影にも対応でき、サムスンのWebページ「Galaxy Expert RAWアプリを使用してプロ顔負けの写真撮影」でも解説されているので、試してみることをおすすめしたい。

撮影モードで[その他]を選ぶと、さまざまな撮影モードを選べる。[EXPERT RAW]はアプリをダウンロードする必要があるが、より細かな設定で撮影が可能

ポートレートで撮影。背景も自然にボケている。モデル:望月ゆうり(X(旧Twitter):@Tiara00107、Instagram:@mochi.yuri_、所属:ボンボンファミン・プロダクション

インカメラで撮影。残暑でかなり陽射しの強い日だったため、日陰に退避しての撮影だったが、青空もきれいに再現されている

広角カメラで撮影。曇天だったが、空や建物、樹木なども明るく撮影できている

光学3倍の望遠カメラで撮影。樹木の葉は粗さが残るが、左奥の建物は歪みもなく、きれいに撮影できている

30倍デジタルズームで撮影。大画面で表示すると、さすがにノイズが気になるが、スマートフォンの画面で見る限りは一定のレベルに達している印象

超広角カメラで撮影。周囲の歪みも少なく、自然で拡がりのある写真が撮影できている

 撮影した写真や動画は、Galaxyシリーズ独自の[ギャラリー]アプリで閲覧できる。Googleフォトと連携した[フォト]アプリもインストールされているが、[ギャラリー]アプリでは「Galaxy AI」を利用した編集機能や生成が利用できる。写真編集でよく利用する背景ぼかしの調整や効果の追加なども[ギャラリー]アプリの方がより細かく操作できるので、利用目的や好みに応じて、使い分けるといいだろう。

「One UI 6.1」と「Galaxy AI」

 プラットフォームはAndroid 14を搭載し、サムスンのユーザーインターフェイス「One UI 6.1.1」がインストールされる。OSとセキュリティのアップデートは発売から7年間が保証されており、OSはAndroid 21まで、セキュリティアップデートは2031年までとなっている。実際に7年間、使えるかどうかは別の問題だが、十分な期間のアップデートが保証されていることはユーザーとしても安心感が大きい。

 ユーザーインターフェイスのOne UIは、基本的にAndroidプラットフォーム標準に準拠しており、ホーム画面は左方向にスワイプすると次のページが表示され、下方向にスワイプすると「クイック設定パネル」、上方向にスワイプするとアプリ一覧が表示される。アプリ一覧はひとつの画面に収まるように表示され、左方向にスワイプすると、次ページが表示される。アプリ一覧画面内ではアプリをフォルダーにまとめたり、並べ方やグリッド数を変更するなど、実用性を考えたカスタマイズも可能だ。

カバーディスプレイでのホーム画面。試用した端末はNTTドコモ版のため、最下段のDockにドコモメールのアイコンが表示されている。左にスワイプすれば、ホーム画面の続きが表示される

メインディスプレイでのホーム画面。基本的な配置はカバーディスプレイと同様だが、それぞれは連動していない。カバーディスプレイ同様、最下段にドコモメールのアイコンが表示されるが、自由にカスタマイズすることが可能

カバーディスプレイで下方向にスワイプしたときに表示されるクイック設定パネル。それぞれのアイコンにキャプションが表示され、よく使いそうな項目が標準で1ページ目に登録されている。[通訳]は左にスワイプした2ページ目に登録されている

メインディスプレイで下方向にスワイプしたときに表示されるクイック設定パネル。カバーディスプレイのクイック設定パネルから、右側に一列、項目が追加され、15項目が表示される。カスタマイズも可能

カバーディスプレイのホーム画面を上方向にスワイプすると表示されるアプリ一覧画面。縦方向にはスクロールせず、左にスワイプすると、次のページが表示される。アプリ一覧画面内で、フォルダを作成し、アプリアイコンをまとめることも可能

メインディスプレイのホーム画面を上方向にスワイプすると表示されるアプリ一覧画面。カバーディスプレイの「4×6」のレイアウトに対し、メインディスプレイは「6×6」のレイアウト。一画面に収まっているが、アプリを増えれば、左にスワイプした次ページに表示される

 日本語入力はサムスン独自の「Samsungキーボード」が搭載される。今やほとんどのAndroidスマートフォンがAndroidプラットフォーム標準の「Gboard」を搭載するが、サムスンは従来からオムロンソフトウェアの「Wnn」(うんぬ)をベースにした独自のSamsungキーボードを継続しており、日本語入力に対するこだわりをうかがわせる。

 使い勝手は人それぞれの好みがあるが、Samsungキーボードはカスタマイズ性にも優れており、[設定]アプリの[一般管理]-[Samsungキーボード設定]で、いろいろな設定項目をチェックすることをおすすめしたい。こうした文字入力は一般的にメールやメッセージなどのためのものと考えられがちだが、パスワード管理アプリの「Samsung Pass」に加え、生成AIを利用した文章の生成や文字起こしなどにも影響するため、「Galaxy AI」を推し進めるサムスンとしてはSamsungキーボードを重要視しているのだろう。

 さて、今回の「Galaxy Z Fold6」には、「Galaxy S24」シリーズや同時発表の「Galaxy Z Flip6」と同様に、サムスン独自の「Galaxy AI」が搭載される。基本的な内容は「Galaxy Z Flip6」と同じなので、「Galaxy Z Flip6」のレビュー記事も参照していただきたいが、音声通話での「翻訳」をはじめ、対面での「リアルタイム通訳」、[ボイスレコーダー]アプリでの文字起こしと要約、[メッセージ]アプリでの「チャットの翻訳」など、多彩な機能が用意されている。「チャットの翻訳」は[+メッセージ]や[LINE]、[Instagram]などのメッセージでも利用できる。

[設定]アプリの[Galaxy AI]には、Galaxy AIで利用できる機能がまとめられている。単に「AI搭載」というだけでなく、具体的に活用できる機能が説明を含めて、まとめられているため、はじめてのユーザーでも使いやすい

 「Galaxy Z Fold6」の特長を活かした機能としては、対面での「リアルタイム通訳」が挙げられる。これは「Galaxy Z Flip6」のレビューでも触れ、テレビCMなどでもアピールされているが、端末を開いた状態でクイック設定パネルから[通訳]を起動し、メインディスプレイで翻訳したい言葉を音声で入力しながら、対面の相手にはカバーディスプレイで翻訳した言語を表示するという使い方ができる。海外旅行などで役に立ちそうな機能だが、訪日外国人との対応が多い接客業でも有用な機能だろう。

本体をL字に開いたフレックスモードで[通訳]アプリを利用すると、相手側には翻訳した言語が表示される

[通訳]アプリでは自分が音声で入力した言語と翻訳した言語が表示される

 ちなみに、前述のように、Galaxy AIで翻訳を使う場合、翻訳する言語に対応した「言語パック」をインストールする必要があり、言語パックのファイルサイズは約500MB前後と大きいので、実際に使う言語を選んで、インストールした方がいいだろう。

 「Galaxy AI」ではGalaxyシリーズに標準で搭載されている「Samsung Notes」を使い、Sペンでメモした内容をテキストに起こしたり、録音データを文字起こしして、それらの内容をGalaxy AIで要約することができる。会議の議事録をまとめたり、セミナーなどの講義をまとめるときにも便利な機能と言えそうだ。

 Webサイトや街中で見かけたものを調べる「かこって検索」は、Androidプラットフォーム標準の機能になったが、大きなメインディスプレイからの操作は、結果も見やすく、Sペンで操作できるのも便利だ。

 また、グラフィック関連では撮影したポートレート写真から「コミック」「3Dアニメ」「水彩画」「スケッチ」といった作風でグラフィックを生成できる「ポートレートスタジオ」、Sペンで簡単な絵を描いて、それをイラストに変換する「AIスケッチ」なども利用でき、カメラとSペンというGalaxyの強みを活かしたGalaxy AIの機能も用意される。いずれもかなり楽しめる機能として、おすすめできる。

[ギャラリー]アプリの[編集]で[Galaxy AI](星のアイコン)をタップし、[ポートレートスタジオ]を選ぶと、人物の顔を選んで、「コミック」や「3Dアニメ」などでイラストを生成できる

「水彩画」を生成してみた。全体的に見て、「水彩画」や「スケッチ」は似ているが、「3Dアニメ」などはかなりデフォルメされる印象。人が集まったとき、「似てる」「似てない」と言い合いながら楽しめる

[Samsung Notes]アプリにSペンでちょっと落書きをして、中央上のツールバーの[Galaxy AI]アイコン(星のアイコン)をタップすると……

ちょっとした落書きから、ちょっとアートな(?)水彩画調の絵が生成された。絵心のあるユーザーなら、いろいろと楽しめそうだ

 これらの機能の一部は、Impress Watch Video「法林岳之のケータイしようぜ!! #778」でもデモをしているので、ご覧いただきたい。

「フォルダブル」と「AI」で開く新しいスマートフォンの世界

 ここ数年、スマートフォンの進化はカメラ性能が高い関心を集めてきたが、ここに来て、スマートフォンの次なるトレンドとして、「AI」の存在が注目を集めている。確かに、IT業界全体を見ても「AI」がこれからの社会を大きく変えることになりそうだが、自分たちのスマートフォンにはどのようにAIが実装され、何が変わっていくのかが気になるところだ。

 端末メーカー各社はAIに対する取り組みをいろいろな形でアピールしているが、サムスンが「Galaxy」シリーズで展開する「Galaxy AI」は、通訳や翻訳、イラスト生成、文字入力、グラフィックなど、より具体的な機能や使い方を実装しており、それを広く伝えようとしている。いずれの機能も利用シーンがマッチすれば、実用的に役立つものが多く、よりユーザーの利用環境を考えた機能実装に取り組んでいると言えるだろう。

 しかも「Galaxy AI」は最新機種だけでなく、ここ数年の「Galaxy」シリーズの多くの端末で利用できる環境が整えられており、なおかつ日本語環境についてもしっかりとサポートされていることも高く評価できる。特に、「Galaxy Z Fold6」ではフォルダブルやSペンという特長を活かした機能も数多く用意され、今、もっともAIを楽しめるスマートフォンのひとつと言えるだろう。国が求める仕様やAIの日本語対応を来年以降の後回しにしているような「どこかのメーカー」とは、取り組む姿勢に根本的な違いが感じられる。

 「Galaxy Z Fold6」の購入を考えるうえで、ひとつのネックになるのは一般的なスマートフォンに比べ、販売価格が高いことが挙げられる。ただ、各携帯電話会社の端末購入サポートプログラムを利用することで、実質負担額を少しは抑えられるうえ、今回はすぐに販売が開始されたSamsung.com公式ストアでのSIMフリー版であれば、各携帯電話会社が販売するモデルよりは少し割安に購入できる。

 筆者はSIMフリー版を購入し、au回線のメイン端末として利用しているが、今のところ、従来と変わりなく利用できている。「フォルダブル」と「AI」によって、新しいスマートフォンの世界を楽しめる一台として、「Galaxy Z Fold6」をぜひ一度、体験していただきたい。