古舘伊知郎 今年もトーキングブルース 「今や僕の真ん真ん中にある」
【牧 元一の孤人焦点】フリーアナウンサーの古舘伊知郎(69)が12月5、6、7の3日間、東京・EXシアター六本木で、恒例のトークライブ「トーキングブルース」を開催する。
トーキングブルースは1988年にスタート。「報道ステーション」キャスター時代の休止(2004年〜13年)を挟み、36年にわたって続けて来た。
古舘は「88年当時、既存のメディアで働く中で『しゃべりの1本柱』を立てておこうと思って始めた。それがだんだんウエートを占めるようになり、ついに今や僕の真ん真ん中にある。これがなかったら、自分の気持ちの中で『古くさい司会者』だけになってしまう」と語る。
現在は本番に向けて準備を進める日々。
「1人でトーキングブルースのことを考えと等身大の自分が見えてくる。いちばん等身大の自分が出てきて滅入ってしまう」
今回のテーマは「SINCE 1977」。1977年にテレビ朝日にアナウンサーとして入社して以来、47年間にわたって磨いてきた「しゃべり」について語る。
「クロニクル。『古舘一代記』。しゃべりは時代につれて変化する。47年の『自分のしゃべり』と『他人のしゃべり』、そして『時代としゃべり』。自分を中心とした、しゃべりの変遷をやろうと思う。僕の過剰なしゃべりが受けた時代もあったし、受けなかった時代もある。こんな時代にこんなしゃべりがはまり、こんな時代に僕のしゃべりがずれていったというような分析をしたい」
他人のしゃべりとしては、先輩のフリーアナウンサーの徳光和夫(84)やTBSの安住紳一郎アナウンサー(51)らの話を盛り込む意向。
「先輩と後輩4人くらい分析したい。実は徳さんの厳しい言葉が『報道ステーション』をやろうとした一因になったという思い出もある。アナウンサーなのに役員待遇にまで上り詰めた安住のどこが凄いのか…?そのほか、アナウンサー以外の『今どきのしゃべり』なども取りあげようと思っている。なぜ人は対面でしゃべることが楽しいのかということも分析したい」
開催最終日の12月7日に70歳の誕生日を迎える。
「しゃべり手としての寿命は、あと6年くらいかな。しゃべることにも運動機能が大事。滑舌もだいぶ衰えている。今は自分のケツをたたいている。でも、できれば、しゃべり死にたい。80歳くらいでトーキングブルースの舞台上でしゃべりながら死んでいくのが理想。そして、樹木葬で葬られたい」
落語家の名人が晩年に名演を見せるように今がしゃべり手として円熟期とも言える。
「しゃべりには『肌理(きめ)』というものがある。滑舌万能感でしゃべっていた時代と比べれば味は出ている、肌理が出ているんじゃないか。そうじゃないと困る」
この冬、見逃せないライブだ。
◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。