父は脚が悪く、母の介助なしでは外出できません。それなのに介護サービスは嫌がります……。どのように説得すべきでしょうか?

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Aさんの両親はともに70代。父親は脚が悪く、母親の介助がないと外出もままならない状況なので、2人で家にこもりがちになっています。「今後、父にさらなる介護が必要になれば母はもっと大変になり、いずれ限界がくる。介護サービスを受けてほしいのに『大丈夫、問題ない』と言うばかりで聞き入れてもらえない」と悩むAさん。両親をどのように説得したらいいでしょうか? 順を追って考えてみましょう。

老親が介護サービスを受け入れない理由は?

老いて不自由な両親を何とかしてあげたいと心配するAさん、早急に介護サービスを利用してほしいと気が気ではないでしょう。
しかし、両親にはそれまでの長い人生で培った独自の考え方やさまざまな思い、またそれにまつわる生活習慣があるでしょう。親子であっても、すべての考えをお互いに受け入れるのは難しいこともあります。
親がなぜ介護サービスに前向きにならないのか、まずその理由をいくつか考えてみましょう。

・夫婦2人の絆に自信あり
・「夫を自らが支えなくてはいけない」という妻の責任感
・介護サービスであっても「他人を自宅に入れたくない」という考え
・「年寄り扱いされたくない」という親のプライド
・「まだ自分たちで何とかできるのに他人の手を借りるのは悪い」との遠慮
・「介護サービスの申し込みで子どもの手をわずらわせたくない」との遠慮
・「親の面倒はすべて子とその配偶者など家族が見るべき」という思い込み

上記はいずれも例なので、真相はご自身で本人に聞いて確かめましょう。
 

それぞれの理由への対応策

介護サービスの利用を子どもが願っても、親がまだ理性的でいられるうちはそう簡単に応じないかもしれません。
まずは理由を探って対応を考えましょう。例えば表1のようになります。
【表1】


表1の1~4など、親の価値観によるものは、議論しても平行線なのでいくら介護サービスの良さを説いても、おそらく応じてはもらえないでしょう。もどかしい思いは脇に置き、困った時に助けられる準備だけして静観するのも一策です。
5のように遠慮しているならば、遠慮は不要ということを説明しましょう。理解してもらえれば、介護サービスの申し込みにこぎつけられるかもしれません。
親も1人の人間で立派な大人です。個人の意思をまずは尊重することも大切です。親を「説得する」のは、ある意味難しいことです。介護サービスの存在を「わかりやすく話しておく」にとどめてもよいでしょう。
また、6.のように「子が親の面倒を見るのが当然」と思う親に介護サービスを利用してほしい場合は、「本当は自分が面倒を見たいが、今は状況(遠隔地在住、仕事繁忙など)が許さないため、状況が変わるまでの間だけ介護サービスを利用させて」とお願いしてみてはいかがでしょうか。
 

限界は親が決める

親も本人なりに加齢とともに自由がきかなくなっていることは、他人よりも敏感に気づいているはずです。自分の体は自分が一番よく知っているからです。
それまで介護サービスの利用に否定的であっても、本当に自分の限界だと悟った時には、行政、医者、子などに助けを求めて来るでしょう。行政地域によっては公的介護保険の要介護の認定基準が厳しく、相当具合が悪くならないと認定されないこともあります。
そのため、本人が必要に迫られた時なら、要介護認定もされやすく、本人も納得して介護サービスを利用するでしょう。
ただし、認知症の親は自分の限界を認識できないので例外です。子が必要と判断したら、上手に介護サービスへと誘導しましょう。
 

まとめ

限界を決めるのは親本人ではあるものの、子どもがそれまでにできることもあります。
例えば、親が普段通院している病院、医師、飲んでいる薬などの名前や、病歴、アレルギー等、健康状態にまつわる情報を把握しておくと、いざというときにすぐに必要な介護サービスを手配するのに役立ちます。
公的介護保険は申請してから利用まで時間がかかるので、民間の介護サービスの情報も集めておくとよいでしょう。
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士