「中央区・港区・江東区・品川区・大田区・江戸川区」で「最大3mの津波高」…「南海トラフ巨大地震」発生時の意外な想定

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東京区部に「津波警報」、島しょ部に「大津波警報」

南海トラフ巨大地震発生時、東京都を襲う最大津波高(満潮時)は、島しょ部(新島村)で最悪の場合最大31m、東京湾に面した区部(中央区、港区、江東区、品川区、大田区、江戸川区)では最大3mの津波高と推計されている。想定通りであれば、島しょ部には「大津波警報」、最大3mの津波対象区部には「津波警報」が発表される。気象庁は「津波警報」発表時の被害と取るべき行動について、「標高の低いところでは津波が襲い、浸水被害が発生します。人は津波による流れに巻き込まれます。沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください。」といっている。

5m以上の津波が想定される島しょ部には、「大津波警報」発表時の被害と取るべき行動について、「巨大な津波が襲い、木造家屋が全壊・流失し、人は津波による流れに巻き込まれます。沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください」と呼びかけている。04年インドネシア・スマトラ沖津波災害を基に、内閣府が12年にまとめた「浸水深別の想定上の死亡率」がある。それによると、1mの津波に巻き込まれた人の死亡率は100%、90cmで99.7%、80cmで95.2%、7cmで71.1%、60cmで28.9%、50cmで4.8%、40cmで0.3%、30cmで0.01%と想定されている。想定死亡率が低いからと油断はできない。30cmの津波でも歩けず足をすくわれる可能性があり、50cm以上で車が浮き人は車ごと流されるなど、自分の意志でコントロールできない状態に陥る。前述の「1mの津波最短到達時間」にとらわれず、「揺れが収まったら、すぐ避難」「持ち出すものは命だけ」「遠く避難所より近くの高台」「避難したら、警報解除まで戻らない」と覚えておくこと。

「津波の高さ」というのは、平常潮位(津波がない場合の潮位)から、津波によって引き起こされた海面上昇高さとの差をいう。気象庁が発表する津波情報の「予想される津波の高さ」の場所は、海岸線における数値。ただし、湾や海底形状によっては予想より高い津波が押し寄せることもあるので注意が必要。

前述したように、過去の津波高さと津波被害の関係を見ると、木造家屋では浸水1m程度から部分破壊が起こり始め、2m以上の浸水で全面破壊に至っている。また、浸水が0.5mであっても、流速によっては人が流される可能性があり、船舶や木材などの漂流物があれば、さらに被害が大きくなる場合もある。津波は単なる浸水や波が高くなる現象ではなく、粘性のある濁流が突然押し寄せてくる恐ろしい現象だ。巻き込まれると、自分の力で流れに逆らうことは難しい。だから、津波に巻き込まれないように、津波警報や大津波警報が出たら、津波の到達予想時刻などにとらわれず、一目散に「遠くの避難所より、近くのビル3階」へ避難することだ。

東日本大震災の時、津波が河川を溯上し河口から離れた市街地を襲い、家屋や車両が多数流されていく映像を見たが、東京湾に注ぐ運河や河川を津波は真っ先に遡ってくる。防潮堤、水門、陸閘門などで、一定の浸水制御効果はあるにしても絶対ではない。中小河川などを経て、市街地・地下街・地下鉄に津波は流れ込む可能性もある。海岸に近い低地のビルでは浸水孤立の危険性もある。東京に津波は来ないと思いこんでいる人もいるが、認識を改めその影響をもう一度再検証し行動マニュアルに反映すべきである。

例えば、地下鉄、地下街、地下コンコース、ビルの地下通路にいる時どうするか、通勤・通学途上における津波襲来時の実践的な行動マニュアルは策定済か。地下の電源設備や機械室の防水扉などの浸水対策は十分か、大揺れ・長周期地震動・津波に備えた実践的な対策が求められている。

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