老舗軍事誌の「まさか130ページ」で「ソ連海軍特集」が”異例の大ヒット”、その「ソ連海軍中将のヤバすぎる手記」の中身を大公開…!

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約50年前のソ連海軍の英雄提督が明かした"赤い原潜"作戦の全貌――。旧日本軍の戦闘機・艦艇などの特集を得意とする老舗軍事雑誌『丸』の11月号で130ページ以上にわたる異例の「ソ連海軍」を特集したところ、書店で入手困難となるなどまさかの大人気の様相を呈している。

その異例ヒットの最新号から、9月27日配信記事ではウクライナ戦争の解説で超人気の小泉悠・東大先端科学技術研究センター准教授によるソ連海軍の歴史を俯瞰する重厚な論文を、10月8日配信では約60年前に海上自衛隊幹部が記した「ソ連海軍がまともな空母を持たない理由」に関する名論文をそれぞれ紹介した。第3弾となる今回は、英雄と呼ばれたソ連海軍中将で潜水艦隊指揮官、A・I・ソローキンの知る人ぞ知る手記「ソ連海軍提督が語る世界一の原子力潜水艦の実力」(1972年掲載)を、一部抜粋・再構成してお届けする。普段はなかなかお目にかかれない“貴重すぎる内容”に驚かされる――。

原子物理学の嵐がもたらした「革命」

経験豊かな潜水艦乗組員と言われ、四半世紀以上もソ連の潜水艦隊を率いてきた私は、西側にとって今なお謎に包まれていると言うソ連の原子力艦隊、西側世界でその威力の程を広く喧伝されている我が原子力潜水艦隊について、幾つかの事をここで明らかにしたい。

1950年代初めの科学、技術の発展によって潜水艦は、限定された時間の潜航をくりかえす船から、高速航行で無制限に潜航を続ける、真の潜水艦になる動力を装備できる事になった。それをもたらしたのは、原子物理学の嵐のような発展である。

クジラとイルカの「形態」が最適

気づかれぬように敵に接近し、不意の攻撃を加える能力――これが潜水艦の主要な資質である。そのために、潜水艦発達の全史を通じて、設計者の注意はこの資質を完璧にする事に集中された。

原子力潜水艦の設計家の試みは、どこか飛行機設計家の作業に似ていた。クジラとイルカといった、自然の中に〈発見した〉形態が最適であった。時速55キロメートルも出すイルカの〈経験〉を、船体設計に考慮しないわけにはいかない。動力用原子炉と水中発射ミサイルの出現が、建造技術の発達に新しい一時代を画した。

一度も浮上せず地球一周する力

最新式潜水艦のエネルギー装備量は、戦前のそれに比較しておよそ10倍になったし、潜航深度は5倍以上になった。しかも、水中航行速度は3〜4倍になっている。ミサイル装備潜水艦は、数百キロ離れた艦船を撃沈したり、数千キロの向こうにある敵の戦略目標に、水中から打撃を加える事ができる。

今日の潜水艦は、これまでの潜水艦となんと違っている事であろう! ディーゼル機関、電動機に代わって、強力な原子力発動機。それは水上とおなじ速さで、水中を航行する道をひらいた。この強力な心臓を持つ潜水艦は、必要なら、一度も補給を受けず、海上に浮上する事もなく地球を一周する力を持っている。

軍事力の極限までの強化が侵略者の戦争熱を冷やす

動力用原子炉には、空気中の酸素は不要である。原子力の利用によって、潜水艦のための〈単一発動機〉の問題がこうして解決された。動力用原子炉によって潜水艦のエネルギー装備量の質的な飛躍が可能になり、その結果として、その走行性の大幅な向上が可能になっている。しかも、増大するのは水中最大速力ばかりでなく、航海全体を通じての平均速度も増大している。なぜなら、燃料の積載量は事実上、無限だからである。動力用原子炉の利用によって、航続距離は延び、潜水艦の自律性は増大した。いまや原子力潜水艦の潜航継続力は、主としてその乗組員の耐久力にかかっているのだ。

ソビエト人民は、我が偉大な祖国に繁栄をもたらす事業に全力、全精力を捧げる決意に満ちている。ソビエト人民は、国の防衛能力、我がソ連軍の強化にたえざる配慮を今後もしていくであろう。軍事力を極限にまで強化させていってこそ、初めて侵略者の戦争熱を冷やし、我が国を起こりうる偶発戦争から守りぬく事ができるのである。

さらに連載記事『軍事誌が“130ページの異例大特集”で話題、欧米を震撼させた「ソ連海軍」の“ヤバすぎる正体”…!』では、知られざるソ連海軍のさらなる実力についてレポートしよう。

軍事誌が“130ページの異例大特集”で話題、欧米を震撼させた「ソ連海軍」の“ヤバすぎる正体”…!