相続手続きについて困ったら、相続案件への経験が豊富な専門家に相談するのがお勧めです(c)Getty Images

東京都江東区在住の人は、さまざまな相談窓口で相続に関する無料相談ができます。相続トラブルは放っておくと大きなトラブルにつながる可能性があるため、早めに相談や依頼をして、スムーズな解決を目指しましょう。本記事では、江東区民が利用できる、相続に関する無料相談窓口をご紹介します。

1. 江東区の相続に関する無料相談先9選

江東区にお住まいの方が利用できる主な無料相談窓口は、次の9つです。

【お勧め】江東区内にある相続の専門家事務所

江東区役所

東京三弁護士会による無料電話相談

東京司法書士会墨田・江東支部

東京税理士会江東西支部・東支部

東京都行政書士会江東支部

東京法務局墨田出張所

法テラス(日本司法支援センター)

江東東税務署・西税務署

1-1. 【お勧め】江東区内にある相続の専門家事務所

遺産相続について悩みがあれば、まずは相続の専門家事務所に相談するのがお勧めです。

弁護士に相談すれば、相続に関する手続きやトラブル全般について、幅広くアドバイスを受けられます。司法書士には主に不動産の相続登記、税理士には生前の相続税対策や相続税申告等に関する相談が可能です。

「とりあえず相談してみたい」というフランクな相談から、さまざまな事情が絡み合った複雑なトラブルの対処法まで、その人に合ったアドバイスを受けることができるのが、専門家事務所に相談するメリットです。

江東区内には、相続を取り扱っている弁護士事務所・司法書士事務所・税理士事務所が多くあります。各事務所のホームページを見たり、「相続会議」のようなポータルサイトを利用したりすることで、自分に合った専門家をスムーズに見つけることができます。

なお、初回は無料相談に対応している事務所もあります。ただし、2回目以降は相談料がかかるケースがほとんどです。無料相談を有効に活用するために、相談する前に事案の概要や質問事項をまとめておくとよいでしょう。

1-2. 江東区役所

江東区役所では、弁護士による法律相談やが実施されています。

相談時間は、弁護士が30分程度、司法書士が20分程度で、いずれも予約制です。江東区在住もしくは在勤の方であれば、無料で相続に関する相談ができます。ただし、必ずしも相談相手の専門家が相続に詳しいとは限りません。また、他の専門家の紹介やあっせん、書類作成などの依頼はできません。あくまでも問題解決の糸口となるアドバイスをもらえるだけなので、注意してください。

江東区では、ほかにも行政書士による法律相談や、女性のための法律相談などが行われています。いきなり専門家事務所に相談に行くことに抵抗がある人は、区役所の無料相談を活用してみてください。

1-3. 東京三弁護士会による無料電話相談

東京都内には、東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会という3つの弁護士会があります。東京三弁護士会が合同で運営する「法律相談センター」では、法律に関するを実施しています。電話をかければ15分程度、弁護士に相談できます。

また、有料ですが、東京三弁護士会が各地域に設置している法律相談センターでも、さまざまな法律相談を受け付けています。江東区の最寄りの相談窓口は「」で、相続や遺言に関する相談料は、30分2,200円です。相談は事前予約制となっており、電話予約のほかにも可能です。

1-4. 東京司法書士会墨田・江東支部

相続登記や紛争性のない相続手続きに関しての悩みであれば、司法書士に相談するのがよいでしょう。

では、東京法務局墨田出張所などで定期的に無料法律相談会を開催しています。相談会の開催日時などの詳細は、墨田・江東支部のウェブサイトから確認できます。

でも、WEBや面談による無料相談を受け付けています。相談時間は40分程度で、要予約です。

また、東京司法書士会では、電話で法律相談できる「」を設けており、スタッフが相談内容を10分程度ヒアリングし、司法書士を紹介してくれます。

1-5. 東京税理士会江東西支部・東支部

相続税の申告や相続税対策などの税務関係でお悩みであれば、税理士に相談するのがよいでしょう。

では、税に関する無料相談を受け付けています。対面相談のみで完全予約制、相談時間は30分程度です。

税金に関することであれば何でも相談できますが、相談に対する回答は一般的な範囲に限られており、複雑な相談や個別事案に関する相談はできません。

また、東京税理士会の「」では、税金に関する無料電話相談に応じています。

1-6. 東京都行政書士会江東支部

遺言書や遺産分割協議書の作成について相談したい場合には、行政書士に相談するのもよいでしょう。

では、定期的に無料相談会を実施しています。予約不要で、相談時間は1人あたり30分程度です。

窓口はいくつかあるため、相談する際には、東京都行政書士会江東支部もしくは東京都行政書士会のウェブサイトで、場所や時間をあらかじめ確認しておきましょう。

ただし、遺言書の内容をチェックするなどの個別の具体的な相談や、高度な法的助言を要する相談については、行政書士では対応できない点に注意が必要です。

1-7. 東京法務局墨田出張所

法務局は相続した不動産の名義変更(相続登記)を取り扱っています。相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局または地方法務局の本庁または出張所に申請して行います。

東京法務局では、予約制で対面・電話・WEBでのが可能です。江東区内の不動産は、(墨田区菊川1-17-13)の管轄となります。相談時間は1回20分以内で前日までの予約が必要です。登記申請書の書き方などについてアドバイスをもらえます。

ただし、申請書や添付書類は自分で作成・収集する必要があり、書類を作成してもらったり、書類に不備がないかを確認してもらうことはできない点に注意が必要です。

1-8. 法テラス(日本司法支援センター)

法テラス(日本司法支援センター)では、経済的にお困りの方を対象に無料法律相談を行っています。収入と資産がいずれも一定水準以下の方に限り、30分の無料法律相談を3回まで利用できるほか、弁護士費用を立替払いしてもらえます。相談には予約が必要です。

法テラスの事務所や各地域の相談場所のほか、法テラスと契約している弁護士・司法書士の事務所でも法律相談を行うことができます。東京都内には複数の法テラスが設置されていますが、江東区に住んでいる人は「」か「」が最寄りの相談窓口です。

なお、以下に該当する方で、既設相談場所への来所が困難な場合には、弁護士等が自宅や入院先等に出向いて法律相談を実施する「出張相談」を利用できる場合もあります。気になる人は電話で詳細を問い合わせてください。

65歳以上の高齢者

心身に重度又は中度の障害がある方

既設相談場所まで公共交通機関を利用して往復3時間以上を要する地域に居住する方

その他やむを得ない事情がある方

なお、法テラスを利用する場合は自分で弁護士や司法書士を選ぶことができません。ただし、法テラスと連携している弁護士や司法書士に先に相談することで、相談先を自分で決めてから、その弁護士や司法書士を通じて法テラスを利用できます。

1-9. 江東東税務署・西税務署

・では、相続税の計算や財産の評価などの相続税に関する基本的な質問や、相続税申告の手続きなどについて、電話もしくは対面での相談を受け付けています。電話相談は予約不要ですが、対面相談は予約が必要です。

ただし、相続税申告の手続きを代行してもらったり、節税対策に関するアドバイスをもらうことはできない点に注意してください。

また税務職員のアドバイスに従って税務申告を行った結果、申告が間違っていて追徴課税を受けたとしても、それに対して税務職員に責任をとってもらうことはできません。申告に不安がある場合は、あらかじめ税理士に相談することをお勧めします。

2. 江東区で相続の無料相談先を選ぶときのポイント

江東区在住の人が相続に関する無料相談先を選ぶ際は、以下のポイントを意識しましょう。

一般的な回答がほしいのか、個別具体的なアドバイスがほしいのか

相談したい内容と専門家の取扱業務は一致しているか

相談場所や相談時間が、自分の都合と合っているか

相談だけでいいのか、依頼も検討しているのか

2-1. 一般的な回答がほしいのか、個別具体的なアドバイスがほしいのか

相続に関する無料相談先を選ぶ際は、一般的な回答でいいのか、それとも個別具体的なアドバイスまでほしいのかを明確にしておきましょう。

相続に関する一般的な内容の相談がしたいのであれば、自治体や税務署などの無料相談窓口で十分かもしれません。一方で、それぞれの事情に合わせた個別具体的な内容の相談がしたいのであれば、はじめから弁護士・司法書士・税理士などの専門家事務所に相談する方がスムーズです。

たとえば、相続税申告に必要な書類を聞きたい場合は、税務署に相談することで解決できます。これに対して、相続税の節税について聞きたい場合や申告書の作成を依頼したい場合は、税理士に相談するのがよいでしょう。

また、区役所での専門家による相談でも、個別の事情が絡み合った複雑な案件や、トラブルの解決に具体的な依頼が必要なものについては、相談を受け付けてもらえないケースがあります。

より踏み込んだアドバイスがほしいのであれば、はじめから相続の経験が豊富な専門家事務所に相談することをお勧めします。

2-2. 相談したい内容と専門家の取扱業務は一致しているか

相談したい内容ごとに専門家を区別することも重要です。弁護士、司法書士、税理士が取り扱う相続業務は、以下のとおりです。

■弁護士:相続に関する業務全般
・相続人および相続財産の調査
・遺産分割協議・調停・審判
・遺留分侵害額請求
・遺言書の作成
・名義変更の手続き
・相続放棄の手続き代理

■司法書士:相続登記、紛争性がない相続手続き
・相続人および相続財産の調査
・相続放棄(書類作成のみ)
・遺産の名義変更手続きおよび不動産の登記手続き

■税理士:相続税に関する業務
・相続税の申告手続き
・生前の相続税対策

他士業と連携している専門家に相談すれば、ワンストップで悩みを解決できる場合もあるので、相談の際にどこまで対応してもらえるかを確認してみるとよいでしょう。

2-3. 相談場所や相談時間が、自分の都合と合っているか

相談場所や相談時間が自分のライフスタイルに合っているかどうかも、相談窓口を選択する重要なポイントの一つです。

平日仕事で忙しいのであれば、相談時間が平日日中に限られている行政機関の窓口に相談するのは現実的ではありません。仕事のあとに相談したいと考えているのであれば、勤務先から近く、夜間相談が可能な専門家事務所に相談するのがよいでしょう。

電話やWEBで相談できる窓口もあるので、自分のライフスタイルに合った時間に相談を受け付けてもらえるかどうか、まずは問い合わせをするところからはじめましょう。

2-4. 相談だけでいいのか、依頼も検討しているのか

相談だけで解決できるのであれば行政機関の窓口で十分なこともありますが、具体的な対応の依頼まで検討している場合には、はじめから専門家事務所に相談することをお勧めします。

ただし、相談は無料でも、実際に依頼する場合には費用がかかります。依頼費用がどうしても捻出できない場合は、法テラスの立替払い制度の利用を検討してください。収入と資産について、法テラスが定める一定の基準を満たしていれば、弁護士や司法書士への依頼費用を立て替えてもらえます。

なお、立て替えてもらえるのは弁護士および司法書士の依頼費用のみです。税理士の依頼費用は立て替えてもらえないことにご注意ください。

3. 江東区内の無料相談を有効活用するコツ

専門家および各種行政機関に無料相談をする場合、基本的にどの窓口でも相談時間が設定されています。限られた相談時間を最大限有効に使うためには、特に以下の3点に留意して相談に臨むことが重要です。

自分の希望を明確にし、質問を事前に準備しておく

相談内容に関連する書類を持参する

自分に不利な事実や状況も隠さずに伝える

3-1. 自分の希望を明確にし、質問を事前に準備しておく

相談する際には、あらかじめ事実関係を時系列順に整理しておき、自分の希望や質問事項を明確にしておきましょう。

あらかじめ要点を整理しておくことで、事案の概要を正確に専門家に伝えられるため、適切なアドバイスをもらいやすくなります。

また、質問事項をメモしておけば、相談したかった事を聞き漏らす心配がなくなります。整理した内容はメモに残しておき、相談の際に持参することをお勧めします。

3-2. 相談内容に関連する書類を持参する

要点をまとめたメモのほかに、相談内容に関する書類もできる限り持参しましょう。

たとえば、戸籍謄本や相続人関係図、遺言書や被相続人(以下、亡くなった人)の遺産の全容がわかる遺産目録などがあると、相談をスムーズに進められます。

ほかにも、亡くなった人の預金通帳の写しや不動産の登記事項証明書など、財産に関する資料を持参するとよいでしょう。必要かどうか迷うものがあれば、とりあえず持参することをお勧めします。

3-3. 自分にとって有利なことだけでなく、不利になることも正直に伝える

専門家に相談する際には、自分にとって不利になるようなことでも、すべて正確に報告することが大切です。

自分が不利益を被りたくないからといって、自分に都合の悪い情報を隠していると、相談先から適切なアドバイスがもらえません。

また、嘘をついたまま専門家に依頼した場合、その嘘が原因で手続きがスムーズに行かなくなってしまう恐れがあります。

専門家に相談する際には、嘘偽りなく全ての事情を正確に話すことを心がけてください。

4. 相続問題に強い専門家の探し方

相続問題に強い専門家を探す主な方法は、次の3つです。

知人の紹介

検索エンジンを利用して検索する

相続ポータルサイトを活用する

4-1. 知人の紹介

相続問題に強い専門家を探す方法の一つとして、知人からの紹介が挙げられます。

すでに専門家に相談している知人からの紹介であれば、あらかじめ相談の雰囲気や相談できる内容などについて知ることができるでしょう。ただし、知人から紹介してもらったとしても、その専門家が相続業務を取り扱っていない場合や、相談したい内容の経験が豊富ではない場合がある点に注意が必要です。

知人から専門家を紹介してもらった場合には、ホームページなどでその専門家事務所が相続に強い事務所かどうか、調べてみることをお勧めします。

4-2. 検索エンジンを利用して検索する

Googleなどの検索エンジンを利用して、相続に強い専門家を探す方法です。

検索方法はさまざまですが、たとえば「江東区 弁護士 相続」と検索すれば、江東区で相続に強い弁護士を検索できます。Web上での検索であれば、ホームページや口コミなどを確認できるため、その弁護士の評判や得意分野について、あらかじめ調べることができます。

ただし、江東区で無料相談できる専門家は多数存在するため、インターネットで無作為に検索するだけでは、結局どの専門家に依頼すべきなのかがわからないかもしれません。その場合は、相続ポータルサイトの利用などをご検討ください。

4-3. 相続ポータルサイトを活用する

「相続会議」などの相続ポータルサイトを使えば、江東区で相続に強い専門家をスムーズに検索することができます。

相続会議は、弁護士・司法書士・税理士など、相続に関する専門家の情報をまとめた専門家検索サービスです。

都道府県ごと、地域ごとに専門家を検索できるのはもちろん、相談内容やこだわり条件などで検索対象を絞り込めるので、自分に合った専門家を探すことができます。

インターネットで無作為に検索するよりも迅速に専門家を探せるので、江東区で相続に強い専門家を探したい場合は、相続ポータルサイトの活用をお勧めします。

5. 江東区の相続事情

江東区の人口は約53.9万人で、東京23区で第8位となっています。古くからの下町が多い地域でもありますが、タワマンも立ち並ぶ湾岸エリアも含まれており、利便性の高い区だと言えるでしょう。

2024年における江東区の住宅地の地価公示は、前年から5.6%上昇し、53万9400円となりました。江東区内の不動産価格は上昇傾向にあり、一般的なサラリーマン家庭でも区内に持ち家がある場合、不動産を相続した際に相続税の基礎控除を超える可能性があります。基礎控除額を超える遺産を相続した場合には、相続税の申告と納付を行わなければなりません。

また、亡くなった人が多額の財産を残している場合は、遺産分割トラブルにも注意が必要です。総務省の家計調査によると、令和5年における東京都区部における2人以上の世帯の平均収入は816万円で、平均貯蓄額は2,720万円です。裁判所による「」の62ページを見てみると、江東区を含む東京都を管轄する東京家庭裁判所において、2023年に取り扱った遺産分割事件(終局区分別)は1,768件となっており、全国の家庭裁判所で最も多い件数となっています。

こうした事情を踏まえると、特に遺産の中に不動産が含まれている場合は相続トラブルが生じる前から早めに対策を講じておく必要があります。弁護士や税理士に相談して、適切な相続対策を行いましょう。

また2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されている点にも注意が必要です。不動産を相続した場合には、法務局で相続登記の手続きも忘れずに行うようにしましょう。相続登記の手続きは、司法書士に依頼するとスムーズに行うことができます。

6. まとめ|相続問題は早めに専門家に相談を

江東区内には、相続問題に精通している専門家や自治体、その他公的機関の無料相談窓口が充実しています。

抱えている悩みにマッチする相談先を見つけ、早めに相談・解決へ進むことが大切です。紛争性のある相続トラブルなら弁護士、相続登記なら司法書士、相続税なら税理士に相談しましょう。

相続トラブルの深刻化を防ぐためには、相続に詳しい専門家をスムーズに見つけて、早めに相談することが大切です。

「相続会議」を活用して、効率よく専門家を探すことをお勧めします。初回相談無料の専門家も数多く登録されているので、ぜひご利用ください。

(記事は2024年9月1日時点の情報に基づいています)