猫が死の間際に「姿を隠す」理由とは

猫は寿命が近づくと、「姿を隠す」といわれています。いつもとは違う猫の様子に不安を感じますが、猫の心身への影響を考えて十分に配慮する必要があります。

そこで今回は、猫が死の間際に「姿を隠す」理由について解説します。飼い主として出来ることを今のうちに確認しておきましょう。

1.本能的な安全確保

猫は弱ったり死に近づいたりしたとき、危険を避けるために静かな場所に隠れようと本能的に動くことがあります。

自分を守るための本能は、安全な室内で暮している猫も同じで、信頼を寄せる家族が近くにいても外猫と同じような行動をとることがあります。

たとえば、家具の下や狭い隙間などの飼い主さんから見つけにくい場所を選ぶことが多いです。

2.安心感を求めている

病気や老いによって体が弱くなると、猫は安心感を求めるようになります。いつも飼い主さんの傍にいたがる猫も、この時は普段行かないような静かで目につきにくい場所に行くことでしょう。

隠れることで外部の刺激から自分を遠ざけることができ、心の平穏を保ちやすくなります。

猫の死の間際は、ストレスを感じないように過ごすことで、少しでも安心しようとしているのかもしれません。誰にも邪魔されずに、静かな場所で回復を目指したいと思う感覚にも近いでしょう。

3.痛みや苦痛を感じている

体に大きな痛みや苦痛を感じている場合も、猫が姿を隠す理由の一つです。

動物は自分の弱さを他者に「見せたくない」「知られたくない」という本能を持っているため、体の不調を感じると姿を隠そうとします。そのため、ひとり静かに隠れて苦しんでいることもあります。

猫が姿を隠すことによって周囲への警戒心が和らぐため、余計にエネルギーを使わず、精神的な苦痛を軽減することができます。

飼い主さんが愛猫にできること

猫が姿を隠すことが増えたら、まずは焦らずに優しく見守ることが大切です。

無理に引っ張り出すようなことは、猫の心身に負担がかかることもあるため、十分に気をつける必要があります。代わりに、ときどき猫の様子を覗いたり優しく話しかけたりして、猫が落ち着くように見守りましょう。

毎日のお世話は、「飲み水を猫の近くに置く」「トイレをいつも通り清潔に保つ」など、猫に配慮しながらも変わらないお世話をしてあげることが大切です。

猫が苦痛を伴っている場合は、動物病院で適切な処置を受けることも必要ですが、判断が難しいときは、かかりつけの獣医師に報告して猫にとって最善のケアについてアドバイスをもらいましょう。

まとめ

猫が死の間際に姿を隠す理由は、「本能的な安全確保」「安心感の追求」そして「苦痛に耐えている」ことが考えられます。

飼い主としてできることは、猫の「姿を隠す」という行動を理解し、そっと見守りつつも必要に応じて専門的なケアを行うようにしましょう。

飼い主さんの心情としては、隠れる愛猫の様子が心配で気になって仕方がないかもしれません。「猫にとって何が一番最適な行動なのか?」判断が本当に難しいこともあります。しかし愛猫のことをよく知り、大切にしてきた飼い主さんの判断や思いこそが、猫にとって最善のケアであると思います。

愛猫がストレスを極力感じずに穏やかな最期を迎えられるよう、愛情に満ちたお世話をしてあげたいですね。


(獣医師監修:加藤桂子)