石破茂総理が就任して以降、即座に衆議院の解散を宣言したことで、「手のひら返し」との批判が相次いでいる。そんな石破氏の変節について政治ジャーナリストの青山和弘氏が分析した。

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 閣僚人事を「納得と共感内閣」と評した石破氏は、総理就任の直前に、10月9日に衆議院を解散し、27日に総選挙を行うと発表した。それまで「国民に判断材料を与えるのは、政府・与党の責任」として、予算委員会の前に「すぐ解散しますという言い方はしない」と明言していたが、国会召集から解散まで9日という、戦後最短の事態になりつつある。

 法政大学大学院の白鳥浩教授は「支持率が高い時に解散を打つ。それによって政権を延命させていく装置だ」と指摘する。教育無償化を実現する会の前原誠司代表から「石破カラーをちゃんと出して頑張って」と言われた際には、「出したらぶったたかれるから。(本音を)出すと国民は喜ぶ、党内は怒る」と返答。なお過去の取材には「言うべきことを言わないなら、政治家やらない方がいい」と答えていた。

 所信表明演説では「約束守れ」「うそつき」のヤジが相次ぐなか、石破総理は「ルールを守る、日本を守る、国民を守る、地方を守る、若者・女性の機会を守る」による「5つの守る」を打ち出す。そして、最低賃金の全国平均を2020年代に1500円まで引き上げることや、防災庁の設置、地方創生交付金の倍増を掲げた。一方で、アジア版NATOや日米地位協定、選択的夫婦別姓については、演説で触れなかった。

 青山氏は「中身だけ見たら、石破氏とはわからない内容。経済政策も岸田前総理と同じような事を言っていて、石破氏らしさはどこに行ったのか」と苦言を呈する。

 この演説を、連立与党の公明党・石井啓一代表は「自分の言葉で思いがしっかり込められた所信表明だった」と評する一方、立憲民主党の野田佳彦代表は「近代まれに見るスカスカの所信表明」とバッサリ。日本維新の会の馬場伸幸代表も「薄っぺらく、具体的な言及やパッションがない」と断じた。

共産党の田村智子委員長は「あまりの中身のなさに驚いた」、国民民主党の玉木雄一郎代表は「石破カラーが全くなく、キレイに脱色された」、れいわ新選組の山本太郎代表は「総理大臣になりたい人が、総理大臣になっただけの話」、社民党の福島みずほ党首は「抽象的なことしか言っておらず踏み込んでいない」、参政党の神谷宗幣代表は「目新しさは全く感じなかった」と、各党ともに手厳しい。

 こうした状況に、青山氏も「総裁選で主張してきたことが、ほとんど消えた」と評し、「これだけ変わると、なぜ石破氏にしないといけなかったのかが、わからなくなる。これまでインタビューで聞いてきたのが無駄だったんじゃないか。これこそ政治不信の原因となり、政治家を信じる必要がなくなる、根本に関わる問題だ」と指摘する。

 石破氏はかねてから「ブレやすい」との風評はあったが、「総理になったら頑張ると期待をしていた」と、青山氏は説明する。「事情はあったにせよ、封印してしまえば意味がない。国民を愚弄していると言ってもおかしくない」。

 今回、幹事長には森山裕氏を任命したが、石破氏は森山氏と一番相談したと、青山氏は語る。「党も重鎮の森山氏に頼るしかない。森山氏は小泉進次郎氏に『解散しろ』と言い続けていて、石破氏もそれに従わざるを得ない。予算委員会で論戦して解散すると言っていたが、森山氏らに言われ、ひっくり返ってしまった。周囲には『解散が遅れてもよかった』と言っているが、それは負け惜しみでしかない」と説明しつつ、「周辺は『選挙に勝ったら石破カラーを出す』と言っているが、石破カラーなくして選挙には勝てない。予算委員会を開くという前言を撤回して、良さを殺した所信表明と選挙の判断は残念だ」と一刀両断。

 青山氏は、石破総理は「裏金議員の公認問題」をカードとして持っていると語る。「比例重複をさせないなど、何らかを示さないと、このまま突っ込んでいくと、自民党にとって逆風の選挙になる。最後の意地の見せ所ではないか」との見方を示した。

(『ABEMA的ニュースショー』より)