ドラフト野手の目玉、宗山塁の将来像は? 比較される鳥谷を超えるために求められる要素

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守備への評価が高い宗山。プロの舞台ではタフさも求められそうだ(C)産経新聞社

 今年のドラフト会議で投手の最注目選手が金丸夢斗(関西大)なら、野手の目玉はやはり宗山塁(明治大)になるだろう。

 今年春のリーグ戦こそ怪我で不本意な成績に終わったが、秋のリーグ戦では見事に復活。9月28日の慶応大戦ではリーグ戦通算100安打を達成し、9月30日終了時点での通算成績は80試合に出場して打率.334、10本塁打、55打点という数字となっている。

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 これは過去10年に東京六大学からドラフト1位でプロ入りした中村奨吾(早稲田大→2014年ロッテ1位・通算94安打、11本塁打、46打点、打率.293)、高山俊(明治大→2015年阪神1位・通算131安打、8本塁打、45打点、打率.324)、蛭間拓哉(早稲田大→2022年西武1位・通算59安打、13本塁打、38打点、打率.267)、上田希由翔(明治大→2023年ロッテ1位・通算96安打、10本塁打、74打点、打率.312)の4人と比べても多くの部分で上回っていることがよく分かるだろう。

 特筆すべきはリードオフマンタイプでありながら、10本塁打を放っているという点だ。高校時代からミート力の高さは際立っていたが、大学に入ってから力強さは年々増しており、甘いボールはしっかりとスタンドまで運ぶ力も備えている。これだけ打てるショートというのはなかなかいるものではない。

 先に打撃について紹介したが、それ以上に高い評価を得ているのが守備だ。難しいバウンドも難なくさばくハンドリング、素早く動いてバウンドを合わせられるフットワーク、深い位置からでも強いボールを投げられるスローイング、その全てが大学生とは思えないレベルにあり、守備で観客がどよめくということも珍しくない。リーグ戦通算80試合で失策は10。プロの1シーズン143試合に換算すると約18個と、少し多く感じるかもしれないが、球界一の名手と言われる源田壮亮(西武)でもルーキーイヤーは143試合に出場して21失策を記録しており、宗山がまだまだレベルアップしていく可能性も高い。1年目から1軍の戦力となることも十分に期待できるだろう。

 そんな宗山の引き合いとしてよく名前が挙がるのが鳥谷敬(元阪神、ロッテ)だ。右投左打のショートで同じ東京六大学のスターということもあって、“鳥谷以来の大物ショート”として紹介されることも多い。ちなみに鳥谷の大学時代の通算成績を見てみると、96試合に出場して通算115安打、打率.333、11本塁打、71打点という数字が残っており、宗山の数字と比べてもほぼ同程度となっている。その点からも、宗山のベンチマークとする対象が鳥谷というのに違和感はない。

 ただもちろん2人は別の選手であり、それぞれ異なった特長を持っていることも確かだ。

 大学時代の鳥谷と比べて宗山が上回っていると感じるのはやはり守備だ。鳥谷ももちろん高い守備力のある選手だったが、見ている観客が沸くようなプレーは明らかに宗山の方が多く、安定感も勝っているように見える。阪神でともに鳥谷とプレーした赤星憲広も、プロ入り当時の鳥谷の守備はあらゆる面で課題が多く、年々レベルアップしていった印象だったと話していた。

 一方で宗山が鳥谷と比べて少し物足りないのが走塁面だ。単純な脚力以上に鳥谷が素晴らしかったのがその意識で、常に一塁まで全力疾走を怠らず、次の塁を狙う姿勢も目立っていた。鳥谷が在籍していた当時の早稲田大は3年春から4年秋までリーグ4連覇を達成する常勝チームであり、意識の高い選手が揃っていたという点もありそうだが、プロ入り後も年々盗塁数を増やして通算6度のシーズン二桁盗塁もマークしている。宗山も脚力アップに取り組んでおり、下級生の頃よりもスピードも増しているが、そこまで走塁で目立つシーンは多くない印象だ。

 そして宗山が鳥谷に近づき、超えるために必要なのはやはり身体の強さではないだろうか。鳥谷は現役時代に歴代2位となる1939試合連続出場を記録するなど、常に試合に出続けてレベルアップしてきた選手だった。そんな球史に残る選手と比較されるのはもちろん大変なことだが、肩を並べて超えていくにはその部分は避けては通れないところである。

 この春は怪我に苦しんだだけに、その経験をどう生かしていくのか。プロ野球選手としての宗山にとって、大きなテーマとなりそうだ。

[文:西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。