猫に絶対言ってはいけない5つの言葉

日頃から愛情を込めて世話をしていても、思わず口にしてしまう言葉で猫の心を傷つけることがあります。

日常に潜む、猫に対して言ってはいけない5つの言葉を見てみましょう。

1.「邪魔、どいて!」

家庭内の猫は、廊下の真ん中や階段の踊り場などで大の字になって寝ていることがあります。

また、急いで朝の支度をしているときに、足元に絡みついてくることもあるでしょう。

そんなときについ言ってしまいそうになるのが、「んもう!邪魔、どいて!」という言葉です。

猫社会の仕組みは「自分があり、他者が存在する」という距離感を重要視しています。つまり、リラックスしている自分や甘える自分があってこそ、はじめて良い関係が成立するのです。

ところが、突然飼い主からの「邪魔」という言葉は、猫にとって存在価値を否定されたように感じてしまいます。

人は、場所を空けてくださいという意味で「邪魔」と言いがちですが、無駄な争いを避ける猫社会では、相手が邪魔なら自分で避けるのがルールです。

そのため「邪魔!どいて!」という圧力は、猫にとって脅威のメッセージになってしまうのです。

2.「ちょっと触らないで!」

家族からの「触らないで!」は、人間でもちょっと傷つきますよね。

猫は特にお互いにグルーミングをするなど、身体の接触を通じてコミュニケーションで愛情を確認します。そんな猫に「触らないで!」と言うのは、猫にとっては不安を感じる言葉なのです。

自宅で何かに集中していると、愛猫がちょくちょく偵察に来ることもあるでしょう。調理中やパソコン作業中などに、思わず「触らないで」と言ってしまうことがあるかもしれません。

猫は飼い主の気持ちは判断できても、行動の意味や重要性までは理解できません。頭ごなしに触れることを禁ずるよりも、少しでも頭や背中を撫でてから、場所を移動させることが大切です。

このような拒絶の言葉は、猫の思考を混乱させ、ストレスの要因となるので絶対に言わないようにしましょう。

3.「あとで、あとで!」

猫のなかには、多少の挫折やハードルにも、絶対にあきらめないタイプの猫がいます。飼い主が忙しかろうが、寝ていようが、かまってほしいったらかまってほしいのです。

そんなときに言いがちな「あとで」という言葉。これは状況を猫に理解させるためだけなら、問題はありませんが、繰り返し続けることで猫からの信頼をなくす原因になりかねません。

猫は常に今を大切にしています。何度も「あとで」と言われ続けると、自分の存在が軽視されているという諦めを感じてしまうのです。

特に、猫が生きるために重要な食事や遊びの時間を「あとで、あとで」と後回しにするのはよくありません。まずは猫のお世話を優先して満足してもらい、できるだけ一緒にいる時間を大切にするようにしましょう。

4.「バカじゃないの?」

猫が食べ過ぎて吐いてしまったときや、ジャンプに失敗して落ちたときに、思わず「バカじゃないの?」と言ってしまうことがあるかもしれません。しかし、この言葉は猫のプライドを傷つける原因になります。

猫のように基本的に単独で生活する動物にとっては、自分の身体能力や適応力が自信の源になっています。そのため失敗に対して「バカじゃないの?」と嘲笑することは、猫のプライドを傷つけてしまうのです。

「バカじゃないの?」という言葉には、たいてい飼い主の不満や軽蔑などの感情が込められがちです。猫は、人の感情や言葉のトーンは理解できるため、否定的な言葉は避けましょう。自信を失った猫は、ストレスから問題行動を起こすことがわかっています。

5.「あなたが悪いんでしょ!」

トラブル後の猫は、まるで「知らん顔」をするかのようです。そのため、「あなたが悪いんでしょ!」という言葉を使う場面は、猫が何か問題行動を起こした後に多く見られます。

たとえば、大切な花瓶を倒してしまったとき、猫にとってはただ高い場所に登りたかっただけかもしれません。多頭飼いの家庭なら、先住猫のお気に入りベッドに、新入りが勝手に寝ていることでケンカをしかけたのかもしれません。

猫の立場に立ってみれば、彼らは単に本能や好奇心にしたがって行動しただけです。しかし、行動を起こしたあとで、飼い主からの叱責の言葉を聞いても彼らは何に対して何を言われているのか理解ができません。

結果として、ただ不安や恐怖を抱かせるだけの、呪いの言葉になってしまいます。

責める言葉を投げかける以前に、なぜその行動をしたのか理解する姿勢が大切です。そして、望ましくない行動を防ぐための環境づくりを心がけましょう。

こんな言い方なら大丈夫

猫とのコミュニケーションは、やさしさと配慮が大切です。言葉の意味がわからない猫でも、言葉の使い方次第で、飼い主さん自身の気持ちは愛猫にも伝わります。

もし同じ状況になったら、より良い対応ができるよう次のような言い方をしてみてはいかがでしょうか。

「邪魔、どいて」→「ごめんね、少し場所を空けてくれる?」 「触らないで」→「今は少し一人にしておいてくれる?」 「あとで、あとで」→「ごはんのときに一緒に遊ぼうね」 「バカじゃないの」→「気を付けようね。次は大丈夫だよ」 「あなたが悪いんでしょ」→「どうしたの?何かあったのかな?」

良くない言葉の場合は、飼い主さんの考えをそのまま独り言のように猫に発してしまっていることが多いものです。

その点に気を付けて、猫に対して穏やかに伝えることで、猫の方もお願いや気持ちを受け取りやすくなります。

また、猫が何か問題を抱えていそうなときには、その状況を理解して生活環境を改善することも飼い主のつとめです。

まとめ

猫に言ってはいけない言葉は、本来なら誰に対しても発するべきではない言葉です。しかし、猫とのコミュニケーションでは、社会的な緊張感が薄れるため、つい頭に浮かんだ言葉を口にしがちです。

飼い主の言葉をそのまま聞いている猫にとっては、飼い主からの否定的な言葉は、その意味がわからなくても気持ちとして受け取ってしまいます。言葉の意味が飲み込めなかったとしても、言葉の強さや飼い主の表情などから雰囲気を読み取ることは可能かもしれません。

もし、誤って悪い言葉を言ってしまったときには、すぐにやさしく声をかけて、撫でるなどしてフォローするようにしましょう。相手が猫であっても、十分な配慮が必要なのです。


(獣医師監修:平松育子)