防衛省が公開した2025年度の概算要求により、護衛艦の寝床がカプセルホテルのような寝台になることが明らかとなりました。こうした大きな変更に至ったのは、現場の声も大きく関係しているようです。

カーテンのみの仕切りから大幅変更!

 2024年8月30日に公表された防衛省の2025(令和7)年度概算要求では、さまざまな装備が調達されることが明らかとなりましたが、ある意味では装備品以上に重要な点も細かく変わります。そのひとつが「自衛官の処遇の向上」です。


2024年現在、建造が進むもがみ型護衛艦。同型以降の新型FFMがカプセルベッド化すると予想される(画像:海上自衛隊)。

 なかでも、「艦艇乗組員の生活・勤務環境改善」の項目に注目すべき変更点がありました。なんと、艦艇居住区の寝床を従来艦のものから大きく変更し、プライベート空間を維持できるカプセルベッド化するとのことです。

 これは2024年度以降に建造される新型FFM、つまり、2024年現在、導入が進められているもがみ型護衛艦よりあとに誕生する新造艦に関して、寝台がカプセルベッドになる模様です。

 これまでの海上自衛隊の曹士(外国軍隊の下士官と兵に相当)用寝台は、2段ベッドが基本で、外との視界を遮るのはカーテンのみ。照明は読書灯しかありませんでした。しかし、2段ベッドでもかなり改善された方で、海上自衛隊発足時にアメリカから貸与された大戦型駆逐艦を転用した、あさかぜ型護衛艦やありあけ型護衛艦などは4段ベッド、初期の国産護衛艦である、はるかぜ型なども4段ベッドでした。

 その後、3段ベッド化し、このタイプに関しては艦齢の古いはたかぜ型練習艦やあさぎり型護衛艦などに残っていますが、数は少なく、2024年現在は多くの艦が2段ベッドになっています。今回のカプセル化では、2段のままではあるようですが、さらにプライベート空間の確保に配慮し、カプセルホテルのように寝床のほか簡易的な机や照明なども付くようです。

ネット環境も充実! 自衛隊の“魅力化”図る

 こうした改革には、自衛官からとったアンケートの結果も強く反映されています。アンケートでは、「プライバシーの確保」や「通信環境の改善」といった要望が多かったとのことです。

 そのため、プライバシーの確保と同じく要望の多かった通信面に関しても、艦艇内にWi-Fi通信機を設置して通信環境を改善するとしています。すでに練習艦「かしま」「しまかぜ」へは2024年5月にKDDIのStarlinkの海上向けサービス「Starlink Business マリタイムプラン」が導入されていますが、このようなサービスが全艦艇に拡大することが予想されます。これまでは、洋上に出てしまうと、ネットも携帯電話も通じませんでしたが、Starlinkの本格導入によって劇的に改善されることになりそうです。

 なお、陸上自衛隊に関しても営内居室の個室化を推進しており、2024(令和6)年度以降に立てられた生活隊舎は、原則として個室化を図るとしています。

 防衛省が公開した今回概算要求の資料によると、これらの改革が進められる理由としては、少子化や労働人口の減少により、人材確保がより一層厳しくなるなかで、「『自衛隊で働く』ということに対するさらなる魅力化を図る」という目的がある模様です。