前回は「2024年上半期ベストヒット」として、フードのトレンドやヒット商品を紹介しましたが、今回はその下半期版として、「次に何がくるのか?」というネクストトレンドを9つのキーワードでまとめました! フード編は、今回もフードアナリストの中山秀明さんに解説をしていただいています。

 

キーワード01【一流シェフ×リーズナブル】

中山さんがまず挙げたのは「一流シェフ×リーズナブル」というキーワードです。

 

「酒場業態で一流シェフの味をアウトプットする形が顕著に出てきています。たとえば『STAND BY Mi』(東京・新橋)はスタンディング居酒屋なんですけども、一流シェフの作ったレシピを買い取ってその味をお店で出しています。また、その系列店で『屋上屋台中華 りんりん』(東京・新橋)という中華酒場がありまして、こちらもフレンチの一流シェフによるフレンチ中華のレシピがお得な価格で楽しめます」(中山さん)

 

この2店に限った話ではないと中山さん。

 

「僕、中華というジャンルに結構注目しているんですけど、例えば名古屋の『桑原飯店』(名古屋・今池)は、銀座アスター出身の方が厨房に立っています。あと横浜の『馬車道8』(横浜・関内)。こちらはみなとみらいのヌーベルシノワのテストキッチンみたいな形で始まったんですけど、一流シェフがレシピを作って、それを馬車道8で出しています」(中山さん)

 

一流シェフの味が、気軽に、手頃に楽しめるというのは私たちにとって嬉しいですね。

 

キーワード02【スポーツ施設グルメ】

続いてのキーワードは「スポーツ施設グルメ」です。

 

「もともと野球では売り子さんによるビールの販売が伝統的にありました。さらにエスコンフィールドHOKKAIDOや西武ドームでは、クラフトビールが新たな選択肢として結びつくようになってきています。僕が本命だなと思っているのが、この6月末に東京ドームシティにオープンする『FOOD STADIUM TOKYO』。国内クラフトビールのプレイヤーがやっているお店が2店舗オープンするということで、かなり注目しています」(中山さん)

 

全国的にスタジアムやアリーナ施設の開業が続いており、この10月には「有明アーバンスポーツパーク」(東京・有明)も開業予定です。

 

「10月には『長崎スタジアムシティ』(長崎市)もオープンします。あのジャパネットさんが社運を賭けているということで、ここもスタジアムやアリーナがありながら、オフィス、ホテル、ショッピングモールまで揃っています」(中山さん)

 

キーワード03【寄りから引きへ】

3つ目のキーワードは「寄りから引きへ」。これはどのような意味でしょうか?

 

「インスタ映えを狙って、料理に寄って写真を撮ることが長らく定番だったと思うんですけど、それがもっと引いた空間で写真を撮るのがトレンドになってきました。”料理をこのお店で食べる私”みたいな世界観で、ブランディングというかセルフプロデュースをする人たちがどんどん増えていると思います」(中山さん)

 

代表的なお店はあるのでしょうか?

 

「話題になっているのが『フーフー飯店』(東京・錦糸町)という新しめの中華酒場です。こちらは、客席の上に昔の電車の網棚みたいなものがあって、そこにスマホを置いて真上から写真が撮れるというのが特徴で、若い方を中心にバズっています」(中山さん)

 

渋谷周辺にアパレル出身者が作った酒場が増加しているというトレンドもあり、何を食べるかよりも、料理を含めた「場」が一層重要になってきそうです。

 

キーワード04【飲食店のファストパス】

現在、飲食店でテーマパークのようにファストパス(列に並ばなくて済む権利)を導入する店が増えており、「これが広がっていく」と中山さん。

 

「価格は+500円ほどですね。サービスを始めたのが、テーブルチェックさんというもともと予約サイトの会社なんですけども、昨年11月くらいにテストで始めて、今年の2月から正式運用をスタートし、ラーメン屋を皮切りに導入されています」(中山さん)

 

その背景にあるものとはなんでしょうか?

 

「これはインバウンドですね。外国の方は、自国の外食がすごく高いので、日本のラーメンは安いんです。プラス500円ぐらい払っても痛くも痒くもない。観光でいろいろなところを回りたいので、並んでいる時間がもったいないと」(中山さん)

 

キーワード05【未来のレモンサワー】

6月にアサヒビールが発売した「未来のレモンサワー」は大きな話題を集めました。レモンサワーブームはまだまだ終わりません。

 

「フルオープン缶の『生ジョッキ缶』が昨年すごく人気でしたが、その仕様をこちらにも取り入れて、フタを開けると泡がぐわっとなりながら出てきて、さらにスライスレモンが浮き上がってくるという演出が楽しめます」(中山さん)

 

キーワード06【無糖レモンサワー】

もうひとつ、レモンサワーでは「無糖レモンサワー」というキーワードもあると中山さん。

 

「甘くない無糖の缶チューハイは今始まったわけではなく、年々人気が上がってきています。有名なのは『氷結無糖』と『−196無糖』。あとはもともと宝酒造さんも『タカラcanチューハイ』『焼酎ハイボール』などでやっています。今年はレモンサワーに特化して人気があった『檸檬堂』も、いよいよ満を持して無糖を出すことになりました」(中山さん)

 

食事にビールではなく、レモンサワーという選択肢が浸透してきているようです。

 

キーワード07【ニッカウヰスキー90周年】

ニッカウヰスキーが1934年7月2日に創業してから今年で90年ということで、周年記念商品が待望されています。

 

「80周年の時も大型の記念商品が出たので、間違いなく今年も出てくるでしょう。北海道の余市はニッカウヰスキーの最初の蒸留所で、なにかアニバーサリーなウイスキーを出すと思います」(中山さん)

 

昨年はサントリーがジャパニーズウイスキー100周年ということで、「山崎」「白州」のハイボールを発売し大ヒット。

 

「ニッカが『余市』ハイボールや『宮城峡』ハイボールを缶で出したら僕はもう感動です!」(中山さん)

 

キーワード08【エレキソルト】

8つ目のキーワードは「エレキソルト」。聞き慣れない方も多いと思いますが、どのようなものでしょうか?

 

「キリンが作ったんですけど、実は昨年、イグノーベル賞を取ったほどユニークです。スプーン型デバイスで、それを使って食べると電気の力でしょっぱさがプラスされる。塩を使わずに、減塩している方が濃い味で楽しめるというベネフィットになってます」(中山さん)

 

お椀型や箸型も検討されていたそうで、今後の展開も楽しみです。

 

キーワード09【板ガム】

最後のキーワードは昭和生まれには懐かしい「板ガム」です。

 

「2021年、ガムの市場規模はついにグミに抜かれてしまいました。でも、ガムって昭和生まれの方には懐かしいかなと思うんですよ。ダウントレンドの中で長年ガムのヒットメーカーだったロッテが、昔のレトロな商品を復刻させています」(中山さん)

 

昭和世代にはドンピシャで、若い世代にとってはレトロで逆に新しい。板ガムの大復活、あるかもしれません。

 

 

まとめ/柚木安津