7月19日、久保建英(23歳)は所属するレアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)のプレシーズンに合流している。この日の久保は全体練習に参加せず、ジョギング程度。ファンに対してサインする時間のほうが長かったようだ。

「タケ・クボのふたつの大きな挑戦」

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』はその見出しで、2024−25シーズンの久保の目標を「2けた得点」と「ヨーロッパカップ戦での得点」としている。

 久保は昨シーズン、2けた得点を目指していたが、7得点に終わった。年内に6得点を記録したものの、年明けからはアジアカップ招集などで失速(これまで何度も指摘しているが、シーズン中の大陸別大会参加は疑問だ)。前半だけを見ればラ・リーガのベストイレブンに値する活躍で、ダビド・シルバが引退、アレクサンダー・セルロートが移籍でチームを去るなかでエースに君臨しただけに、悔やまれる後半戦となった。

 また、久保は昨シーズン、チャンピオンズリーグでチームを20年ぶりのベスト16に導く活躍ぶりを見せた。インテル、ベンフィカをねじ伏せ、グループリーグを突破させた功績は大きい。ただ、一昨シーズンのヨーロッパリーグ(EL)を含め、ヨーロッパのカップ戦でゴールがない(ビジャレアル時代には1得点)。今シーズンのELではそのゴールで上位進出が望まれる。

 攻撃では孤軍奮闘の感もあった久保が、新シーズン、最高のパフォーマンスを見せられる陣容は整ったのか?


去就にも注目が集まる久保建英(レアル・ソシエダ)photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 7月20日、ラ・レアルはアラベスと地元のカップ戦で1−1と引き分け、PK戦では敗れている。結果はあまり意味がない。FWカルロス・フェルナンデスが7カ月ぶりにピッチに戻り、ブライス・メンデスがゴールを決め、始動したこと自体が朗報だろう。

 ユーロ2024でスペイン代表として優勝したGKアレックス・レミーロ、DFロビン・ル・ノルマン、MFマルティン・スビメンディ、ミケル・メリーノ、FWミケル・オヤルサバルは休暇中。コパ・アメリカのベネズエラ代表ジョン・アランブルや、パリ五輪に出場するDFジョン・パチェコ、MFベニャト・トゥリエンテスは不在で、久保やシェラルド・ベッカーもメンバー外だった。

【ポイントはストライカーの補強】

 新シーズンに向け、チームは補強に動いている最中だ。
 
 まずはマンチェスター・シティの左利きオールラウンダー、セルヒオ・ゴメスを獲得した。「バルサ育ちのレフティで、シティに所属」という経歴だけでラ・レアル好みと言える。シティのジョゼップ・グアルディオラ監督は左サイドバックでの起用にこだわっていたが、五輪代表では攻撃を担当し、ラ・レアルでの起用法も後者になるか。

 ラ・レアルはアラベスの左サイドバック、ハビ・ロペスを移籍金650万ユーロ(約11億円)で獲得している。ハビ・ロペスは長身でダイナミックな動きができ、左利きの攻撃的なタイプ。おそらく、セルヒオ・ゴメスはアタッカーでの起用になるだろう。ちなみに昨シーズン、後半にレンタルで獲得した左SBハビ・ガランはアトレティコ・マドリードに戻したが、再度レンタルの話を進めているという。また、キーラン・ティアニーはアーセナルに返却された。

 ラ・レアルが最優先で進めているのは、ストライカーの補強である。セルロートの放出はあまりに痛かった。アンドレ・シルバはライプツィヒに返却。ウマル・サディクは2000万ユーロ(約34億円)以上かけて獲得したFWだけに、資金回収のためにもレンタルか、交渉次第で完全移籍に。ヘタフェのボルハ・マジョラルとトレードの可能性も出ているという。

 マジョラルは、ラ・レアルのイマノル・アルグアシル監督が求めるストライカー像に合う。高く、強く、ポストプレーに長け、昨季はカップ戦含めて17ゴールと得点力も高い。半月板損傷からの復帰なのと、年俸が手取りで470万ユーロ(約8億円)と高く、移籍金も最低1400万ユーロ(約24億円)と値は張るだけに"投資"になるが、実力は折り紙付きだ。

 ヘタフェは堅守カウンターのスタイルで、むしろサディクのようなFWがマッチするだけに、マジョラルとの交換はない話ではないだろう。

 ラ・レアルは左利きの天才ファンタジスタ、トルコ代表アルダ・ギュレルのレアル・マドリードからのレンタルを目論んでいる。過去にマルティン・ウーデゴール、久保が大成したように、レアル・マドリードからの左利きアタッカーの移籍は相性がいい。ただし、ユーロ2024でスーパープレーを連発したギュレルは引く手あまた。レアル・マドリードも戦力と考えているはずだ。

 ラ・レアルはもうひとり、トルコのサイドアタッカーに食指を動かしている。ユーロ2024トルコ代表ケレム・アクトゥルコールで、大きくはないが俊敏で力強く、左サイドからゴールへ迫る。アンデル・バレネチェアに代わるドリブラーがいないだけに、戦力アップにつながるはずだ。

 一方、ル・ノルマンはアトレティコ・マドリードに移籍濃厚で、メリーノやスビメンディも獲得の打診を受けており、戦力低下も考えられる。

「リバプール移籍か?」

 久保に関しては、そんな噂が出ている。日本発信のニュースで、スペインのメディアはそれを追いかけるような報道。久保サイドからのリークの可能性もあるが、そうだとすれば信ぴょう性もあるか。

 ラ・レアルは久保を戦力の中心と考えているが、100億円の違約金を積まれたら売却せざるを得ない。その場合、リバプールも最低1000万ユーロ(約17億円)以上の年俸を用意することになるだろう。モハメド・サラーの後継者と考えているなら「ない」とは言えない話だが......。

 ラ・レアルは現時点で5人のユーロ2024優勝メンバーを抱え、セルヒオ・ゴメスを加えた3人のパリ五輪メンバーも擁する。他にもメンデス、バレネチェア、アマリ・トラオレ、イゴール・スベルディア、ホン・アランブルなどの実力者がずらり。これでストライカーがはまれば......ラ・レアルは陣容が整いつつある。

 7月25日、久保はガンバ大阪と戦うジャパンツアーのメンバーに名を連ねている。