「政権放送だけで10時間」小池vs蓮舫だけでなく、へずま、黒川、NHK党…エンタメ化する都知事選

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「東京都民であることが恥ずかしい……」

そうこぼすのは都内在住の30代女性だ。

東京の首長を決める東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)は、日本を左右する重大な選挙だ。

下馬評では12日にようやく出馬表明した小池百合子都知事と、立憲民主党を離党して立候補した蓮舫氏の一騎打ちの様相。そのほか、元広島県安芸高田市長の石丸伸二氏や、タレントの清水国明、元航空幕僚長の田母神俊雄氏など著名人が立候補を表明しているが、あくまで次点という扱いだ。

問題はそれ以外のいわゆる“泡沫候補”だ。現時点で40人以上が立候補を表明しており、カオスな状況となっている。

先の補選で他党への妨害行動で逮捕された『つばさの党』代表の黒川敦彦容疑者は、7日に別容疑で再逮捕され、都知事選期間中に“外の空気”を吸うことは不可能になったが、それでも立候補を予定している。

元祖“迷惑系YouTuber”のへずまりゅう氏も、早々に出馬を表明した。

6日に都庁で会見を行い、そこへ『ダウンタウン』松本人志のそっくりさんを同席させ、早くも劇場化。都政の評価に関する質問に対し

「すいません、勉強不足です。わかんないです」

と醜態をさらす場面もあった。

「都知事選だけにとどまらず、関心の高い選挙区では選挙がエンタメ化している。供託金300万円を支払えば、基本誰でも立候補する権利がある。メディアは公平性が問われるので、そうした泡沫候補も短時間ではあるが取り上げる必要がある。爪痕を残そうと有象無象がどんどん出てきている印象だ」(全国紙社会部記者)

その最たる例が今回の都知事選。冒頭の女性は他県の友人から

「東京ヤバイね」

と散々ネタにされ、恥ずかしい思いをしているという。

テレビ局員も現状に辟易している。

立候補者は政見放送を行うことができるか、過去最多となることで、長時間の放送が義務付けられる可能性がある。

政見放送は候補者1人当たり5分30秒以内という決まりがあり、候補者の経歴を紹介する経歴放送も30秒という上限がある。NHK総合では各候補者の経歴放送と政見放送をセットで2回ずつ、経歴放送のみを1回流すことになっており、40人だと計500分、のべ8時間20分となる。

これに立候補書類は受け取ったものの、まだ事前審査を済ませていないとされる28人が全員出馬となれば、その長さは10時間を超える。NHK関係者の話。

「これまでは再放送枠に政見放送を当てはめてきたが、それでは足らない。どう編成すればいいものか、頭を悩ませている」

政見放送はNHKのほか、TOKYO MXが放送。民放ではTBSラジオが放送することになっている。まさに“貧乏くじ”だ。

都知事選のビジネス化を進める者もいる。

政治団体『NHKから国民を守る党』の立花孝志氏は4月の会見で都知事選に候補者を大量に擁立し、選挙ポスター掲示板をジャックすると宣言。それだけにとどまらず、同団体に寄付すれば、都内約1万4000ヵ所ある選挙ポスター掲示板のうち1ヵ所を選んで、自身で作成したポスターを貼れる“ビジネス”を提唱した。

寄付額は1口5000円以上、6月以降は1万円以上で、1口1万円で計算すると、1億4000万円の寄付収入が入る算段だ。

「NHK党から24人が候補者を予定しており、仮に24人分の供託金(300万円)を払っても、7000万円近い利益が出る。掲示板を広告スペースと捉える手法で、よくもまぁ思い付いたな、と。

立花党首は『売買ではない』『民主主義に則ってやっている』と主張しているが、今後議論を呼ぶことは間違いない」(政界関係者)

ネット上では旧時代の法制では新時代の選挙には追い付かないとして「なんらかの新たなルール作りが必要」という声も聞かれる。

“小池百合子VS蓮舫”だけでは終わりそうもない都知事選。どんなカオス展開が待っているのか――。