板橋尚皇実容疑者らが無修正わいせつ動画を投稿していたサイト

「1〜2カ月くらい前だったかな、福岡ナンバーのテスラが家の前に停まっていたの。そしたら、犬を抱いたなおみちゃんと、大きくて少しイカつめだけどカッコいい男性が2人でいたのよ。なおみちゃんの髪の毛がツヤツヤしていて、品のある服に高級そうなバッグを持っていたので、お金持ちの彼氏ができたのかしらなんて思ってねえ(笑)」(近隣住民)

 5月14日までに、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の疑いで逮捕されたのは、福岡市に住む板橋尚皇実(なおみ)容疑者と、交際相手の桐伸年容疑者だ。2人は、自らの性行為などの無修正わいせつ動画を190点投稿し、約9500万円の収益を得ていたという。彼らは「お金を稼ぎたいと思い、犯罪とわかっていても投稿を続けていた」と容疑を認めている。

 板橋容疑者の実家は、東京都内にある。都心から少し外れた、閑静な住宅街だ。冒頭で板橋容疑者の近況を語った近隣住民は、続けて彼女の幼少期を振り返る。

「あのお宅は、なおみちゃんとおばあちゃんとお母さん、お父さんと、年の近い弟の5人で住んでいましたよ。なおみちゃんが生まれたころだったかな、お母さんがあまりにも大きな声で叱責するものだから、近所まで声が丸聞こえでね。何度も聞こえるから、虐待の心配をしたほどだったのよ。あと、お父さんとおばあちゃんがあんまり仲よくなかったみたいで、家のなかからお茶碗を外に投げるほどの大げんかをしたこともありましたかね。おばあちゃんが自分で警察を呼んで、しょっちゅうパトカーが来ていました。お父さんは、最近はまったく見てないわね」

 別の近隣住民は、板橋容疑者の別の一面を語る。

「20歳くらいのころに見かけたときは、髪はまだらな茶色で、すごく短いスカートをはいて、肌の露出が多い服装でした。夜のお仕事してるのかな、なんて思っていましたよ。今年(2024年)に入って、10年ぶりくらいに姿を見かけたけど、すっかり変わってました。きれいになって、裕福になったのかなと思う雰囲気。ただ、香水の匂いがキツかったのはよく覚えています」

 板橋容疑者の実家のインターホンを鳴らすと、「来客があるため、少し時間をあけてほしい。娘について話しますよ」と優しい声で女性が対応してくれた。しかし、再度、接触すると、まるで別人のように「詳しくわからないのですいません。警察の方にしか言えません。せっかく来てくださったのにすみません」とインターホン越しに対応された。

 桐容疑者の実家がある京都にも、足を運んだ。京都市の中心から少し外れた国道沿いに、ポツンとたたずむ立派な自宅だ。近隣住民に話を聞いた。

「伸年くんは、福岡のほうで医療関係の仕事をしていると聞いていた。お父さんは学校の先生をしてはった。たしか、伸年くんには妹が2人いてたと思う」

 近くに住む別の男性は、「小学生時代から野球をやっていて、高校でも野球をしていたと思う。友だちと道でキャッチボールしたのを見たことがある。しかも、勉強もよくできると聞いていた。たしか、京都の有名な私立高校に通ってたんやないかな。大学から九州のほうに行ったはず。数年前だったかな。普通の国産車やったと思うけど、車で帰って来てたこともあった。九州のほうで会社員になってると聞いた」と教えてくれた。

「今回、2人が使っていたのは『OnlyFans』というサイトです。会員になると色いろいろ見られる有料サイトに登録してもらって、収益を得ていました。いわゆるサブスクですね。Xなど無料のアプリで、際どい写真をアップして有料サイトに呼び込む流れもあります」

 今回のカップルの収益構造について解説するのは、フリーライターでアダルトメディア研究家の安田理央氏だ。彼らが儲かっていたのは、「無修正動画」を積極的に投稿していたからだという。

「海外のサイトだと、大丈夫だと誤認して投稿する人は多いです。実際は捕まるんですけどね。ですが、無修正動画って1年間で何十万本と作られていて、そのなかで逮捕されるのは年間数件レベル。今回の場合は、よほど運が悪いのか、売れすぎて目立ったかのどちらかでしょう。無修正動画のほうが購入される? そうですね。修正入りに比べると、無修正の方が断然、人気があります。正直、捕まることわかってても、売り手が無修正を選んじゃうっていうのは多いと思います。

 さらに彼らを後押しするのは、無修正動画の投稿で捕まっても実刑はほぼなくて、罰金刑の最高額が250万円なんですよ。差し引きした金額を考えると、報道で実名が出るリスクよりも、収益をあげるのを選ぶほうが多いですね。ただ最近は、取り締まりの強化によると思いますが、警察などが無修正動画をアップできるサイトの決済にクレジットカードを使用できないよう、圧力をかけています。とはいえ、イタチごっこになる可能性もありますけどね」(安田氏)

 ネット犯罪に詳しい奥村徹弁護士は、今回の事件の量刑について次のように話す。

「今回はわいせつ電磁的記録媒体陳列の容疑で逮捕されました。逮捕時には名前も出て、送検の様子が報じられました。ただ、こうした事件では、初犯だとほとんどが実刑にはなりません。なぜなら、具体的な被害者がいないからなんです。これまでの判例からすれば、主犯は懲役1年6月、執行猶予3年、罰金約200万円が相場でしょう。さらに犯罪で得た収益金、今回は9500万円といわれていますが、これは没収、追徴の決定が下されると思います。

 これに加えて、具体的にわいせつ動画を購入した人が特定できれば、頒布目的だとして、わいせつ物頒布等などの容疑も適用できます。さらに動画をいつ、どこで撮影したのかが特定できれば、公然わいせつ罪の容疑も加わります。もっとも、これらはそんなに重い罪ではないので、量刑が増えることはあまりありません。

 また、そもそも海外のサイトで動画を販売しているので、そこには日本の法律は及びません。無修正でも大丈夫な国はいくらでもありますから。なので、警察の捜査にも限界があり、取り締まりが行き届いているとは言えません。多くのケースでは、違法だとわかっていても、儲かるからわいせつ動画を流します。しかも、逮捕されても実刑にはならないと思っている。なので、今後もこうした事件は増えるでしょう」

 今回の逮捕は、よほど「悪質」と思われたようだ。