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年収が上がらない、モチベーションが上がらない──そんな悩める人たちに「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化・ノウハウ化がすごい」と話題なのが、森武司著『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。FIDIA(フィディア)の森社長は、吉本のお笑い芸人引退後、4年間の引きこもりニート、家電販売員を経て仲間と起業。現在年商146億円、Financial Times「アジア太平洋地域急成長企業ランキング 未上場日本一」、「ベストベンチャー100」受賞、経済産業省選定「地域未来牽引企業」、11事業すべて黒字化、新卒500人採用、創業以来18年連続増収増益を果たした。また、素人ながら化粧品開発に取り組み、あの資生堂を抜き、アマゾン年間売上1位となった注目の経営者でもある。
引きこもりニートだった著者が、なぜ、ここまでの人生大逆転を実現できたのか? その秘密はデビュー作で一挙公開した「仲間力アップマル秘マニュアル」の6大奥義にあるという。そこで今回は、本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。連載7回目は、「入社後『後からグーンと成長する人』見極めのポイント」について話を聞いた。(構成・川代紗生)

「大手のエース級社員」採用時に気をつけたいポイント

――輝かしいキャリアを持つ優秀な人を採用しても、チームにうまくマッチしていないのか、期待以上の成果が出ない。「エース級社員」のポテンシャルを最大限引き出すことができず、悩む管理職も多いと思います。
「最初だけよくて尻すぼみする人」「後からグーンと成長する人」は、どうしたら見極められるでしょうか?

森武司(以下、森):「優秀な人を採用したのに、うまくフィットしない」という悩みはよく耳にするのですが、その原因の多くは、「大手企業のやり方を、そのままベンチャーでやろうとしている」からだと思います。
 大手で大活躍していたエースを引き抜いた場合、当然、まわりの期待値は上がりますが、いざ働き始めると、「前の会社ではこうだったんですけど」と、大手のやり方に固執してしまう。
「この商品のマーケティング戦略を考えてください」と頼んでも、「テレビ広告を打ちましょう」というアイデアがまず出てくる。
 うちはベンチャーだから、テレビ広告を出すような予算はない! と説明しなければいけない……というような。

――大手でキャリアを磨いてきた人も、自分なりのやり方にプライドを持っているから、合わせるのが大変だったりしますよね。

森:今までやってきたやり方を、新しい環境によって、カスタマイズする柔軟性があるかどうか。これが、大手企業だろうが、ベンチャーだろうが、「どこに行っても活躍できる人」「入社後、さらにグーンと成長し続ける人」の、共通点の1つだと思います。

「入社後パフォーマンス」を左右する!
ハイクラス人材に伝えるべきフレーズとは?

森:自社に合った人材を見極めるノウハウは、『スタートアップ芸人』にもまとめたので参考にしてもらえたらと思いますが、後は、「入社前に何を伝えるか」も非常に重要です。
 僕は、ヘッドハンティングしたり、面談したりするとき、「相手に何を期待しているか」を具体的に伝えることも意識しています。

――入社後、こういうことを実現してほしい、みたいなことですか?

森:そうですね。まわりの社長仲間からも、「入ってもらったはいいものの、期待していた成果が出ない」と相談されることはよくあるんです。
 詳しく話を聞いてみると、「とにかく売上をあげてください」「とにかくマネジメントをやってください」など、ふわっとした情報しか伝えておらず、「入社してから、どんな課題を解決してほしいか」という話をしないままになっていることが多い。
 せっかくビッグネームの優秀なコンサルタントを雇ったのに、「あれ、そういえば、僕って何をすればいいんでしたっけ?」と、課題が曖昧になっていたり……。

――たしかに、「優秀だから、こちらが細かく言わなくても、勝手に課題を見つけて、勝手に解決してくれるはず」と、甘く見積もっている場合もありそうです。

森:僕が気をつけているのは、ヘッドハントするとき、「僕たちは今、こういうことで困っているのだが、どうすれば解決できると思いますか」と、こちらの課題をできるだけオープンにすること。
 たとえば今、当社でCFO(最高財務責任者)を担当している中嶋は、COOの中川に紹介してもらいました。
 中川に「今まで出会った中で一番優秀な人を紹介して」と頼んだところ、彼が即答したのが中嶋だったのです。
 塾にも行かずに京都大学に合格し、その後、京都銀行で働いていた超エリートの中嶋は、10年間銀行一筋。
 フィディアに入社してもらうのは難しいのでは? と言われていましたが、それでもぜひ参画してほしいと思ったのは、僕たちが、財務上の問題を抱えていたからでした。
 年商100億円を超えるようになってから、データ上の数字が合わないことが多々あったのです。

――中嶋さんをヘッドハントするとき、その会社の問題をありのまま伝えたのですか?

森:はい。本書にも書いたエピソードですが、

“「CFOとして会社のあらゆる無駄を省いてほしい。
11事業のお金の使い方を整理したら、たぶん埋蔵金が5000万円とか1億円出てくる。
それがあなたに一番やってほしいことだ。
そして、僕らは今、120億円企業だけど、本気で1兆円企業を目指している。その資金調達と財務をすべて任せたい」”(P104-105)

 と、はっきりと伝えました。

――中嶋さんは、それを受けてどんな反応を?

森:COOの中川からは「堅い人だから、口説くのは難しいと思う」と言われていたのでちょっと心配していたのですが……。
 僕たちの課題を具体的に話した後、中嶋は、「自分はこの会社に貢献できそう」という顔をしてくれていましたね。
 さまざまな人の採用やヘッドハントに携わってわかってきたことですが、ハイクラス人材に「ここで働きたい」と思ってもらうためにもっとも大事なのは、「自分はここで活躍できる」という具体的なイメージを思い浮かべてもらうことです。

 このように、「自分はこういう期待をされていて、この仕事をするためにここに入ったんだ」という意識があるかないかで、入社後の働き方も大きく変わってくると思います。
 本書には、「いい仲間を見極める方法」と、「仲間を成長させる方法」を、それぞれ、僕たちの実体験をもとにまとめました。
 いい人材を採用できずに困っているという管理職の方には特に、手に取ってもらえたら嬉しいですね。