旦木:子どもを自己実現の材料にしないことです。仕事に限らず、趣味やボランティアなど、何でもいいから、自分の「やりがい」を見つけたり、社会とつながることが大切だと思います。

取材で分かったことですが、毒母の多くは何でも話せるような家族や友だちがいません。夫婦仲が良くないか夫が子育てに無関心で、子育てに関する悩みを1人で抱え込んでしまう人がほとんどでした。

団塊の世代に毒母が多いのは、ほとんどの人が結婚する時代だったことが大きいと思います。当時は両親や社会から「結婚しろ」という圧がすごくて、出会って数ヶ月で結婚する夫婦が少なくなかったようですが、結婚する前より結婚後の人生のほうが長いのに、よく数ヶ月で人生を決められたなあと感心します。

毒親と対峙したほうがよいのか?

――自分のメンタルヘルスのために、毒親に面とむかって自分の思いを伝えたほうがよいのでしょうか?

旦木:毒親と対峙対決しすれば、もっと傷つけられるリスクもあります。そのリスクに耐えられないなら、毒親とは適切な距離をとったほうが良いと思います。いきなり連絡を絶つのが難しい人は、「今日は連絡をとらない・返信もしない」と1日ずつ頑張っていく。

毒親問題は共依存の問題であるケースが多いので、依存症を扱うメンタルクリニックを受診したり、自助団体とつながって自分の境遇や思いを吐き出すことが解毒に有効だと言われています。

――毒親が亡くなっている場合はどうすればよいのでしょう?

旦木:私が取材した人に、精神科医のすすめで親のお墓に行って、これまで親に言いたくても言えなかったことを吐き出したことでスッキリし、楽に生きられるようになったという人がいます。

取材を受けてくれた人の中には、「やっぱり親を悪く思われたくない」「自分も親を悪く言いたくない」と言って、途中で取材の中止を求める人もいます。毒親と言っても、常に100%毒親でない場合がほとんどですはありません。毒親と子どもの関係は、非常に複雑な思いが絡み合っています。だから自分の親を「毒親である」と断定するのが難しい人も少なくありません。

現在進行系で親と一緒にいて、話していて辛いなら、距離を置くのはひとつの解決策。そして親が亡くなってしまっているなら、自分自身で過去と向き合い、親との関係を自分の中で整理整頓することが、解毒への一歩だと思います。

その過程でやっぱり「毒親だった」と判断したなら、つらかった記憶をブログに書いたり、誰かに話したりして、溜め込んだままにしないこと。それが、時間はかかるかもしれませんが、そういった積み重ねが、解毒への道だと思います。

【旦木瑞穂(たんぎみずほ)】
愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する記事の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。

<文/此花わか>

【此花わか】
ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):@sakuya_kono