「武道館ライブ」発表のとんねるず ウラにフジテレビ港社長が仕掛ける「“視聴率三冠王”への秘策」

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お笑いコンビ『とんねるず』が今年11月8日と9日の2日間、武道館で『とんねるず THE LIVE』を開催することが発表され、注目が集まっている。

「お笑い界のレジェンドとして活躍する一方、『情けねぇ』で日本歌謡大賞の大賞を受賞。『ガラガラヘビがやってくる』でミリオンセラー達成するなど、音楽シーンにも爪痕を残してきました。

今回は中井貴一さん、水谷豊さん、藤井フミヤさん、芸人のおぎやはぎやバナナマン、サンドウィッチマンなど豪華ゲスト陣も参加。歌ありコントありの構成が予定されていますが、全容は明らかになっていません」(ワイドショー関係者)

注目すべきは、これがフジテレビの事業部仕切りで行われるということ。これには’22年にフジテレビ代表取締社長に就任した、港浩一氏の影響力が見え隠れする。

「フジテレビの視聴率三冠王の時代(’82〜’93年、’04〜’10年)を2度にわたって経験した港氏は、社長に就任するとバラエティ制作センターが一丸となり、『27時間テレビ』をコア視聴率において圧勝に導くと、新しい看板番組『新しいカギ』を立ち上げ『学校かくれんぼ』企画などをヒットコンテンツに成長させました。

さらに伝説の昼帯『笑っていいとも!』枠も情報番組からバラエティに戻すと、金曜深夜で『オールナイトフジコ』を立ち上げるなど、古巣のバラエティ班をテコにフジテレビ復活を目指してきました」(制作会社プロデューサー)

さらに今年に入ると、反町隆史の大ヒットドラマ『GTO』のスペシャル。そして“月9”ドラマを恋愛路線に修正。さらに映画『踊る大捜査線』の続編決定と、ドラマのヒットコンテンツも次々に復活させている。真意はわからないが2度にわたる黄金期の成功体験が、港社長を突き動かしているのかもしれない。

港氏は『オールナイトフジ』『とんねるずのみなさんのおかげです』などを手掛けた、言ってみればとんねるずの“育ての親”。港氏の社長就任をきっかけに、とんねるずの完全復活プロジェクトは始まったと考えたほうが良さそうだ。

「実際、ABEMAの番組『石橋貴明 お礼参り THE WORLD』の中で、石橋は『(港社長に)自分たちの番組をやらせてほしい』と発言。港社長自身も『大きな番組で、2人には、これからも活躍してもらいたい』とコメントしています。この辺りからも、そうした気配が伺えます」(前出・ワイドショー関係者)

だが、港社長が思い描く“とんねるず復活”のシナリオとは、一体どんなものなのか。

「『みなさん』の初期には他の芸人とは絡ませず、松田聖子や小泉今日子、当時人気のあった宮沢りえ、観月ありさ、牧瀬里穂、チェッカーズといったアイドルや女優、アーティストたちと、ドラマや映画のパロディをやった。

こうしたパロディコントとの相乗効果もあり、トレンディドラマや『北の国から』も大ヒットしフジテレビは黄金時代を築きました。もう一度、視聴率三冠王に輝くためには、起爆剤としてスタートした頃の『みなさん』のような番組が必要だと考えているのかもしれません」(前出・プロデューサー)

しかし、とんねるずの“完全復活”への道は、そう簡単ではない。

’18年に終わってしまった冠番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)は、視聴率の低迷以外にも深刻なトラブルを抱えていた。

「『男気じゃんけん』などの“パワハラ的”な企画が非難を浴び、石橋は『日経エンタテインメント!』の“嫌いな芸人ランキング”で、’16年から3年連続1位。さらに’17年の30周年記念SPでは、青ヒゲにピンク色の頬っぺたが特徴の名物キャラ・保毛尾田保毛男を復活させ、LGBT関連の団体から抗議を受け、当時の宮内社長が定例会見で謝罪するなど、明らかに時代を読み違えていました」(制作会社ディレクター)

今回の『とんねるず THE LIVE』では、とんねるずを作ったもう1人の仕掛け人・秋元康氏が作詞を手掛ける新曲も披露するという。

『楽しくなければテレビじゃない』を旗印に天下を取ったフジテレビ。視聴率で低迷する同局の復権には、やはりとんねるずの完全復活が欠かせないのだろうか――。

文:島 右近(放送作家・映像プロデューサー)
バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版