「血圧が高い=単なる高血圧ではない」可能性も!? 怖い“二次性高血圧”とは?
高血圧と聞くと食生活や肥満などの生活習慣が関係しているというイメージがありますが、じつは原因はそれだけではありません。何らかの疾患によって、引き起こされるものを「二次性高血圧」と呼びます。そこで今回は、川名部 新先生(おばな内科クリニック 院長)に高血圧の基本的な知識と二次性高血圧について解説してもらいました。
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川名部 新(おばな内科クリニック)
聖マリアンナ医科大学卒業。同大学病院では代謝内分泌を主として、糖尿病や生活習慣病を専門に経験を重ねる。2023年4月より川崎市中原区にある『おばな内科クリニック』を継承し、院長を務める。日本内科学会認定医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医、臨床研修指導医
高血圧ってどんな状態?
編集部
高血圧について教えてください。
川名部先生
血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力を数値化したもので、高血圧症は正常範囲よりも高い血圧が続く病態をいいます。
編集部
どうして血圧が高くなるのですか?
川名部先生
原因はひとつではなくさまざまです。例えば、血管に弾力があるときは、血圧は基準値以下に収まりますが、動脈硬化などで血管が厚く、硬くなるとそれを補うために心臓がより強い力で全身に血液を送ろうとするため血圧が上がります。これが動脈硬化による高血圧症です。血圧にはいわゆる「上(収縮期血圧)」と「下(拡張期血圧)」がありますが、動脈硬化による高血圧症の場合は、上も下も高くなるのが特徴です。
編集部
動脈硬化があると血圧が高くなってしまうのですね。
川名部先生
そうですね。さらに、血圧が高い状態が続くと血管の壁に圧力がかかり、血管の壁がさらに厚く、硬くなります。そうなるとさらに強い力で血液を押し出す必要があるため高血圧に拍車がかかり……といった悪循環が常態化してしまいます。
高血圧にも種類がある? 「二次性高血圧」とは?
編集部
高血圧にも種類があるのですか?
川名部先生
高血圧が起こるメカニズムで考えると、明確な要因があるわけではない「本態性高血圧」と、ほかの疾患や薬剤の副作用が原因で起こる「二次性高血圧」とがあります。日本人の高血圧症の約90%が本態性高血圧といわれています。
編集部
例えばどんな原因が考えられますか?
川名部先生
「本態性高血圧」は、遺伝的要因や塩分の摂り過ぎ、肥満、過度な飲酒、喫煙、運動不足、精神的なストレスなどの環境的要因が重なって発症すると考えられています。
編集部
では、二次性高血圧の原因にはどんなものがありますか?
川名部先生
薬剤の副作用によるもののほかには、内分泌疾患が原因である二次性高血圧が多くみられます。ただし、高血圧を引き起こす内分泌疾患には症状のないものも多くあり、また高血圧そのものも自覚症状がありませんので、なかなか気づくことのないままというケースも少なくありません。
編集部
気づかないとどうなるのですか?
川名部先生
二次性高血圧に気づかずそのままにしておくと、先ほど言ったような悪循環で動脈硬化を引き起こし、さらには心不全や狭心症、心筋梗塞といった心臓血管系の病気を招いたり、脳出血・脳梗塞の原因になったりします。さらに、内分泌疾患も気づかずに放置してしまうことになり、その疾患自体も進行してしまいます。症状がないからといって放置しておくことはとても危険なのです。
二次性高血圧の原因となる内分泌疾患はどう調べる? 予防法や治療法も教えて!
編集部
二次性高血圧の原因となる内分泌疾患はどうやったらわかるのですか?
川名部先生
内分泌疾患は多岐に渡るため、血液や尿などのホルモン測定や、部位を特定するための画像検査など詳しいホルモン検査が必要になります。
編集部
原因がわかれば治すこともできるのですか?
川名部先生
その疾患にもよりますが、病気によっては適切に治療すれば高血圧症状を完治させることもできます。内分泌疾患は、ホルモンの過剰分泌が起こっていることがほとんどなので、過剰分泌を起こしている部分を摘出すれば完治が期待できます。摘出ができない場合は、ホルモンの分泌をブロックするお薬を内服することで症状が緩和されます。
編集部
二次性高血圧に対し、セルフケアとしてできることはありますか?
川名部先生
二次性高血圧だとしても、高血圧であることは変わりませんので、まずは、定期的かつ決まった時間に血圧を測定してご自身の血圧を管理しましょう。医療的な治療が必要な場合はそれを大前提として、さらに継続的に行う適度な運動や食生活を中心とした生活習慣の改善が治療にとても有効です。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
川名部先生
高血圧で長いこと悩んでいる人の中には、実は内分泌疾患が原因というケースが一定数いると考えられています。これは通院の有無関係なく、例えば何年も通院していていたが検査をするまでホルモンが原因とはわからなかった、という人も実際にいます。高血圧を指摘されている人で内分泌の検査をしたことがないという人は、まず検査を受けていただきたいです。かかりつけ医に「ホルモンの検査をしてほしい」と言えば対応してもらえると思いますので、特に20~30代で高血圧と言われている人や降圧剤でうまく管理できない高血圧の人、血圧の変動が大きい人などは検査をお勧めします。
編集部まとめ
今回は高血圧の種類や原因、「二次性高血圧」について詳しく解説していただきました。二次性高血圧の場合は、原因によっては完治させることも可能なのですね。また、通院の有無に関係なく高血圧症をお持ちの方は、一度ホルモン検査をしてみると良いかもしれません。
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