日本とフランスで違う「バッグ」の持ち方。“両手を空ける”のは喜びを表せるようにするため
おしゃれの本場・フランス。先日パリに滞在していた、フランス文化研究者・翻訳家のペレ信子さんは、「バッグを斜めがけ」している人が多かったと話します。日本でももっている人が多い、斜めがけのバック。同じでもどのような違いがあるのか、ペレさんが教えてくれました。
ショルダーバッグやハンドバッグ。その持ち方からフランス人が想像するもの
日本でもフランスでもおしゃれな革バッグを斜めがけしている女性をよく見るようになりました。ストラップを少し短めにして高い位置にバッグが来るような持ち方。とくに流行に敏感な方がそんな持ち方をしているように感じます。
この持ち方、そしてそのほかのバッグの持ち方からフランス人が感じることがあります。
小さめのショルダーバッグをしっかり体に沿わせて防犯!
ショルダーバッグを文字通り肩から下げている人よりも、斜めがけにしている人が圧倒的に多いと感じるフランス。とくにパリではその傾向が強いようです。
その理由はもちろん、「防犯」。最近のメトロは本当に混んでいて隣の人とほぼ密着ということも増えてきました。バッグは体にピッタリと斜めがけするのが安心です。
昔、旅行者がよく持っていたウエストポーチは旅行に慣れない人の象徴だったようで窃盗の標的になったこともありました。
パリ以外のフランスの都市でも、人混みに出かけるときはバッグ斜めがけで大切なものを守ります。流行と実用を兼ねた持ち方です。大きな買い物のために小さく畳んだマイバッグを持ち歩くのは日本と同じです。
サコッシュという言葉、古きよき時代のフランスのおじさんの象徴でした
斜めがけのバッグといえば、この頃「サコッシュ」とカタカナで日本語でも使われるようになった、斜めがけ専用の小さめのバッグ。これはフランスでは主に男性が持っているイメージです。
フランスの男性はなぜか昔からバッグを持つのが嫌いです。夫のおじいさん、お父さん、おじさん、夫も、みんななるべく手ぶらで出かけようとします。それでも手ぶらにできないとき、貴重品を入れるだけの大きさのサコッシュを使っていました。
サコッシュとは昔の郵便配達人や、集金係が斜めがけにしていた小さなバッグのこと。この言葉が日本でも最近使われるようになってなんだか懐かしい気持ちがしています。
斜めがけバッグのもう一つの利点とハンドバッグの役割
防犯のほかに斜めがけバッグの大きな利点は「両手が空くこと」。高齢者や足が不自由な方にとって両手が空くのは大切です。
そのうえで、フランス人にとって両手を空けておく日常的には大事な理由があります。
それは街で、店で、知り合いに会った時に握手、ハグ、キスと大きなジェスチャーで喜びを表すときに手が使えること。手を出さずにキスのために顔だけ突き出しているのは少し冷たい印象になってしまいます。
それでは、ハンドバッグの出番はなくなったのでしょうか。
いえいえ、ふだん斜めがけバッグで両手を振ってぐんぐん歩いているからこそ、高級なレストランに行くとき、片手を占領する小さな美しいバッグを持つことは女性の身のこなしに品を与えてくれるのです。
ハンドバッグを持っているとドアを開けてくれたり、周りの人も優しく接してくれます。フランスで高級レストランに行くときには小さなハンドバッグを忘れずに。
実用的でトレンディーな斜めがけ、レディーとして扱われるハンドバッグ。
貴重品を持ち運ぶ、大きな荷物を運ぶという実用面だけではなく、それぞれのバッグが人に与えるイメージがあるんだと、フランスにいると思い出させてくれます。