災害時に困ることのひとつが「トイレ」問題。「排泄は生理現象ですから、我慢してなんとかなるものではありません。被災下で、できるだけトイレに行く回数を減らしたいからと水分や食事を控えると、体調を崩す原因にもなります。安心してトイレに行ける環境を整えることが大切です」と、災害専門のレスキューナースとして国内外34か所の被災地で救助やケアにあたった国際災害レスキューナースの辻直美さんは言います。

しかし、市販の防災トイレを1か月分、家族全員の災害トイレを買い備えるとすると、コスト面でかなりの負担。そこで、辻さんの著書『プチプラ防災』『プチプラで「地震に強い」部屋づくり』(いずれも扶桑社)から、身近なものでできる「災害トイレ」のつくり方をご紹介します。

市販の災害トイレをたくさん用意するは難しいからこそ…

専用の災害トイレがなくても、低コストで災害トイレをつくることはできます。使うのはゴミ袋(45リットル)とペットシーツ、新聞紙です。私はペットを飼っていない人もペットシーツを備蓄することをおすすめしています。

その理由は、コスパがいいから。100枚入って1200円程度のものもあり、おまけに、災害トイレ以外にも日常的に使えるのです。吸水性に優れているので、スープなどをぶちまけてしまったとき、雑巾代わりに使えてとても便利です。

ペットシーツでつくる災害トイレ

<使うもの>

ゴミ袋(45リットル)2枚
ペットシーツ(レギュラーサイズ)1枚
ちぎった新聞紙(1枚程度)

(1) 便座をあげて、ゴミ袋を二重にして便器にかぶせる。

(2) ペットシーツを吸水面が外側になるよう二つ折りにする。

(3) ペットシーツ の中央に小さなくぼみをつくって、便器にセットする。

(4) 用をたしたら、ちぎった新聞紙ひとつかみをのせる。新聞紙は吸水と消臭、排泄物を目隠しする効果があります。

(5) 便座を下せば完成。

用をたしたあとは、ちぎった新聞紙を排泄物の上にかけて、上のゴミ袋だけを外して口を結びます。ゴミ袋を縛る前にハッカ油やティートリーの精油などを振りかければにおい対策に。ビニール袋の余った部分をひっくり返して縛れば二重になります。

被災下の「トイレ事情」は厳しい

避難所のトイレは、何十人何百人もの人が使い、かつ、水道がなければ掃除ができず、あっという間に汚れます。できるだけトイレに行く回数を減らしたいからと水分や食事を控えると、体調を崩す原因にも。尿道炎を発症して、そこから膀胱炎、腎盂腎炎にまで進んでしまうケースもあります。

在宅避難をしていても、地震の影響で停電や断水になればトイレを使うことができなくなります。お風呂のくみおきの水を使えばいいと思うかもしれませんが、地震後は排水管や下水管が破裂しているかもしれません。

とくにマンションなどの集合住宅の場合、トイレに水を流すと、汚水が漏れたり、復旧に時間がかかったりする可能性も。確認ができるまで、トイレに水を流してはいけないのです。その際は、ぜひ「ペットシーツ災害トイレ」を活用してください。