著書『80歳。いよいよこれから私の人生』(すばる舎刊)を出したことでも話題の多良久美子さんは、85歳の夫と55歳の障がいがある息子と3人暮らしです。昨今の物価や光熱費の高騰は、年金暮らしには辛い状況だと言います。著書のなかでも節約へ言及がある多良さんは、「お金がない!」と嘆くのではなく、「お金がないことを受け入れ、どうやって節約しよう」と考えているそうです。そんな多良さんの普段の節約法を紹介します。

冬の電気代は上手に使って、5000円ほどカット

多良さんのお宅はオール電化なので、電気代の高騰は家計への影響が大きいと言います。とくに、冬の寒い時季の電気代は、今までよりも1万円近くも上がりました。そこで、電気代節約のため、まずは、電気毛布から湯たんぽに変更。さらに、エアコンをつける時間を減らすために、石油ストーブを買いました。部屋が暖まるまではエアコンもつけますが、その後はストーブだけで十分だそうです。ただ、息子が施設から帰ってくる週末は、事故が不安なのでストーブはお休みにします。

【写真】レンジでつくった鶏もも肉の酒蒸し献立

灯油代がかかるので、エアコンだけのときの電気代、エアコンの電気代+灯油代のどちらが安くなるのか、家計簿につけて検証しました。そうしたら、いちばん寒い月で、電気代+灯油代のほうが5000円ほど安くなったのです。

「石油ストーブの機種代もあるので、元をとるにはもう少しかかります。でも、工夫して目標を達成するのは楽しいですね。ストーブは長く使えそうなアラジンのものにしたので、きっと元は取れると思います」

キャリアを乗り換えて、スマホ代が年間2万4000円も節約に

ほかに節約できそうなものはなにかと考え、通信費ダウンに挑戦しました。スマホ代を節約するため、格安スマホのお店に行って相談し、キャリアから乗り換えて月約2000円も安くなったとか。年間にすると、なんと2万4000円も節約できました。「スマホの世界もこまめに見とかんと」と思ったようです。

思い立ったらすぐ行動。まずはやってみて、もし、うまくいかなかったら、別の方法を考えます。節約は我慢するのではなく、よい方向、楽しい方向にきり替えていくのが、多良さん流です。

健康と節約のために自炊で、おいしく食べる工夫を

生活費の中でいちばんかかっているのは食費ですが、健康のためにもこだわりたい部分なので、ここは削りません。でも、外食はほとんどしないし、お惣菜を買ってくることもないので、その分は安くすんでいるはず。自炊がいちばんの節約です。

「食材を無駄にすることはありません。半端に残った野菜は漬物にするなど、工夫をしています。葉物や薬味の野菜、ハーブなどは庭でつくっているので買いません」

野菜の芯や皮などは土に埋めて堆肥しているので、野菜の肥料に使えて一石二鳥です。食いしん坊なので、おいしく食べるための工夫は苦にはならないそうです。

年齢を重ねると、自炊がおっくうになることがあります。多良さんは、そんなことはないのでしょうか。

「元々、私はクイック料理が専門。障がい児を抱えての生活だったので、料理だけに時間をかけていられませんでした。今も、調理時間15分で完成するような簡単なものばかりです。早くできる理由は、買い物してきた後に、まとめて下ごしらえをしてしまうからです。
たとえば、鶏肉や豚肉は小分けにして冷凍。ショウガは、スライス、千切り、すりおろしてから冷凍します。一気にしてしまえば面倒ではなく、毎日がラクになるメリットのほうが大きいですね」

たとえば、よくつくる「三枚肉のチャーシュー風」は、小分けして冷凍した豚バラ肉の塊を、冷蔵庫に移動して解凍。そして、600w電子レンジで3分、裏返して3分加熱し、調味料につけておくだけ。そのまま食べてもいいし、炒飯の具にしたり、ラーメンの上にのせたりしてもおいしいそうです。

ごく普通の料理が、器のおかげでおいしそうに。節約の強い味方です!

そんなクイック料理を助けてくれるのが、多良さんがずっと集めてきた器です。姉の多良美智子さん(YouTube「Earthおばあちゃんねる」で活躍中のYouTuber)をはじめ、ほかの姉たちも器好きだったので、自然にそうなりました。息子が小さいころ通っていた養護学校の近くに陶器に窯元が集まる地域があったので、送迎の合間に立ち寄り、少しずつ集めたりもしました。

「私のごく普通の調理も、器のおかげでおいしそうに見えます。器はずっと使えるので、食費の節約の強い味方と言えるかもしれません。今は年金生活なので、新しいものはほとんど買いませんが、時々はお小遣いを貯めて。器屋さんのネットショップで、次はなにを買おうかなと見ているだけでも楽しいです」