1年の目標がなかなか達成できない。なぜなのでしょうか(写真:YUME / PIXTA)

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いつも年末年始になると、また目標を達成できなかったと後悔するのですが、今回もそうでした。自分らしく生きる1年、と昨年年初に勇ましい目標を立てたものの、結局いつもと変わらない1年で、何も自分らしいことをせずに終わった気がします。

仕事して飲んで寝て、休日はネットフリックスを見たり、友人たちと遊び、という感じです。読書しようと思って買った本は、何年も読まれず放置したままです。目標の立て方がいけないのか、それともやり方を間違えているのか。年始の目標立案とその達成法についてアドバイスをいただけないでしょうか。よろしくお願いします。

OK 会社員

立てる目標が漠然としすぎている


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目標を達成したという経験が少ない中で、立てる目標が漠然としすぎなのでしょう。

長期的なゴールや目指すべき姿を設定する際は、むしろ漠然としていたほうがよいケースもありますが、単年度の目標という意味においては、明日から具体的な行動に移せるような具体性が必要です。

長期的なゴールであれば、例えば「40歳までに●●という職業で、誰もが認める第一人者になり、年収▲▲になる」としたところで、●●という職業がなくなっていたり不人気になっていたりすると、一気にゴールとしての妥当性などに疑問が出てきますし、ゴールを突き詰めるモチベーションにも影響が出ます。

ちょっと古い例で恐縮ですが、その昔は難関国家資格向けの予備校に、不合格を積み重ねて、10年単位で通い続けているヒトが結構いたものです。

そういったケースも、目指すべき姿が具体的かつ、1つに絞り込みすぎていたために、自分自身が目指すべきゴールの妥当性の検証や、ほかの選択肢を視野に入れる、という判断ができなくなってしまった例だと思います。

つまり長期的なゴールの場合、何か1つの選択肢「のみ」を目指してしまうと、その選択肢がなくなったり、後で自分に向いていないとわかった場合に、取り返しがつかず、方向転換が困難なので、もう少し漠然としていたほうがよい、ということです。

長期的なゴールから逆算して考える

それこそOKさんのように「自分らしく生きる」でよいのです。そしてそこから逆算で、「自分らしさ」とは何か→それを実現するためには、どんな生き方をするべきか→その中で仕事をどう位置づけるか→どんな仕事をするべきか→その実現に向けて今何をするべきか、といった、具体的でより小さい目標や行動計画に落とし込むことが大切なのです。

長期的なゴール→中期的な目標→短期的な目標→今年や来年の行動計画、という落とし込みです。

そしてそういった小さなゴールや、具体的な行動目標が「来年やるべきこと」といった単年度目標になるのです。

そうすれば仮に、そのとき目指していた中期的なゴールに対する前提が崩れたとしても、長期的なゴールに照らし合わせた、短期的な行動に対する軌道修正が可能です。

反対に単年度目標が漠然としすぎていると、そもそも何をしていいのかがわからないという話になりますし、達成に対する可否すらも見えにくくなってしまいます。

単年度の目標は明日にでも具体的行動に移せるような、つまり今自分が何をするべきか、が端的に見えるような目標であったほうがよいでしょう。

OKさんのケースでは「自分らしく生きる」と単年度目標を設定しましたが、その実現のために生き方をどうする、仕事をどうする、をはじめとした、非常に多岐にわたる変化や行動が求められる目標であるために、何から手をつけてよいのかもわからない状態になってしまったのだと思います。

そして何をしてよいのかわからない、つまり具体的行動に移せないがゆえに、いつもどおりの行動をしてしまい、「結局今年も何もできなかった」となるのです。

本来であれば、例えば「自分らしく生きる」であれば、前述のようなブレイクダウンが必要ですし、またその実現のためにはしかるべき行動と、積み重ねやステップが必要です。

したがって、そういった漠然とした目標はやはり短期的な目標としては向いていない、ということになります。

小さな目標の達成に慣れる

また、目標を立てて、そして行動に移して実現するには、プロセスそのものに対する「慣れ」も必要です。

小さな目標を立てて、それを達成することの積み重ねが、自分自身に対する自信につながり、そしてその自信がもっと大きな目標を立てる勇気につながります。

いきなり大きな目標やゴールの達成を目指して走り出すのもよいのですが、多くのヒトにとってはやはり小さなゴールにブレイクダウンして、そういった小さなゴールの達成を積み重ねることで慣れていく必要があります。

行動に移すことに慣れる、実現可能なゴールを設定することに慣れる、軌道修正に慣れる。

大きな変化を求め、大きなゴールを達成するためには、そういった多くの「慣れ」が必要です。

そしてそういった慣れを通じて、目標を達成できた自分にも自信がつきますし、経験を通じて自分自身の視野も広がりますから、より大きな目標達成に向けた準備が整う、というものです。

何事も最初は小さなステップからです。

小さなステップを踏めないヒトに大きなステップは踏めませんし、小さな努力や行動ができないヒトは大きな努力や行動もできません。

そういった小さな行動や実現を積み重ねることが、人生における成長であり、年齢や経験を重ねる、ということなのです。

そして成長や経験を積み重ねた結果としてのみ、大きなゴールである自分らしさの達成や実現につながり、または自分らしさが見えてくる、というものです。

OKさんは「目標の立て方がいけないのか」それとも「やり方が間違えているのか」と書かれていますが、前者である目標の立て方が間違えているからこそ、正しいやり方や行動につながらない、ということだと思います。

繰り返しですが、いつもと変わらない1年を脱却するためには、自分自身が具体的な行動に移せるような、具体性を持った目標の設定が大切です。

何をしたらよいかがわからないまま1年を過ごそうとすると、いつもの日常の繰り返しになります。

日常を変えるためには、変化が必要であり、変化のためには行動が必要です。

変化の第一歩を踏み出す

今のOKさんに必要なのは、具体的行動に移せるような適切なゴール設定を通じて、まずは変化の第一歩を踏み出すことです。

そしてそのためには、前述したように、長期的で大きなゴールは何か、つまり自分自身の生き様や人生観を考え、そしてそのうえで中期的なゴール、短期的なゴールは何かを考え、さらには今年や来年は何をするべきか、を考えたほうがよいでしょう。

人間誰しもいきなり大きなことを達成できるわけでもありませんし、いきなり大きな変化を生み出せるわけではありません。

小さなことを積み重ねて、大きな変化を狙う。そういった緻密さやマメさが、大切なのではないでしょうか。

そのような考え方で、OKさんが目標設定に対する考え方を改め、大きな変化につながる小さな第一歩を踏み出すであろうことを応援しております。

(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)