人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気の発症を経て、昨年からスペインへの単身留学を送っている54歳のRitaさん。SNSでも留学生活を紹介し、人気です。今回は、「海外に住む前に日本でやっておけばよかったこと」をつづってくれました。

気持ちが新鮮なうちにスペインの1年半を振り返り

スペインへ入国して一年半。その間まだ一度も日本へ帰国をしていませんが、住めば都…生活用品も現地調達で不自由なく過ごすことができています。

ただ日が経つにつれ「日本にいる時にこうしておけば良かった」と感じることがふつふつと増えてきました。海外在住者としてはまだ初心者ですが、日本出国時の気持ちが新鮮なうちに振り返ってみたいと思います。

語学に少しでも馴染んでおけばよかった

滞在目的にもよりますが、現地の言語には少しでも馴染んでおくと気持ちが楽になると思います。「語学は住んでいればそのうちどうにかなる」とも言われますが、「そのうち」は果てしなく遠いのです。

語学留学の場合、学校の事務室や生徒同士の団らんは英語又は現地の言葉、授業はすべて現地語です。私は分からないスペイン語で知らない文法を説明され、夜な夜な日本語の本やネットで復習しても追いつけず、先生の説明が聞き取れようになるまで1年近くかかりました。

もしも短期留学だったら、聞き取れる前にとっくに終了していたところでした。最初は座っているだけの授業で、いま頷きながら聞ける時間とは充実感がまったく違います。限りある時間を有効利用するためにも、ところどころわかる単語があるだけで理解が早くなると思います。

また「上手!」「いいね!」「困った」など簡単なひと言や、感嘆詞をパッと言えるようにしておくと、会話に入りやすく交流が広がります。私は当初そんなひと言さえも発せられず、教室の隅でお地蔵さん状態でした(笑)。

勉強する習慣を日本でつけておけばと反省

留学を決めてから約3か月で渡航した私は、その間仕事と準備に追われ、「勉強は到着後にやるからいいや」とほとんど何もせずに出発してしまいました。常に語学と向き合い、日本でも教室に通われたり独学をされている方々とは違い、この30年は恥ずかしながら「勉強する」時間すらつくっていませんでした。

異国で久しぶりの「勉強」は疲労感が多く、生活パターンに慣れるのにも一苦労。以前から、朝に現地語のネットを見聞きしたり、夜は単語本を見るなど、少しでも「勉強」を生活に取り入れたリズムをつくっておくべきだったと反省しています。

また1回触れた単語はひと時忘れても、2回目には頭に入りやすいことを実感中です。「あれ?聞いたことがある」という言葉が1つでも多いと、ステップアップが早いと思います。

クレジットカードは、複数枚用意しておくべし

クレジットカードでの生活を基本とする場合、3〜4枚は用意した方が良いと思いました。お店により使えなかったり、磁気が壊れたり、そして使用期限が切れても新しいカードをすぐに受け取ることができません。

私は複数のカード管理が不安で、ほとんどのカードを解約してしまったことを後悔しました。今のカードの使用期限が切れたら日本へ帰国するまでカードなしの生活となるので、心細い状況です。

また、更新カードの受け取りは、登録と違う住所では不可だったり、登録住所の変更も携帯電話で本人確認があったり、さらには本人以外の受け取りができないこともあります。

実際に昨年、私本人が受け取れず諦めたカードがあります。新規カードは、基本的には日本在住者向けで、住民票を外した海外在住者の登録は非常に難しい状況です。

なお、カード生活の予定でも、日本出国前に現金通貨を用意しておくと良いと思います。現金の利用は意外にも発生し、食事代の折半、代理で支払ってもらった際の返金、学校窓口への支払い、空港からのバスや電車も現金のみのことがあります。

街中に両替所もありますがすぐに行けるとは限らず、そして信用できる両替所かを判断する必要も…。また銀行での両替は、口座開設者に限られることがあります。

話題作りのために、日本を感じる写真やものを準備

海外では、「日本はどうなの?」「実物はどんな感じ?」と、まるで日本代表のように質問を受けることがあります。桜の花びらはどんな感じ? 手裏剣って何? 満員電車を見たことがある? そうした質問に、お花見写真を見せたり、手裏剣を折紙でつくったり、別れ際に折り鶴を渡したこともありました。

また友人宅に行った際、きな粉餅の一口菓子や抹茶ラテのスティックを持参すると、皆で恐る恐る口にして大騒ぎ! 楽しい時間となりました。

想像以上に日本は他国から注目され、興味深く思われています。少しでも日本文化が感じられるものを用意しておくと、話題性があり喜ばれます。

滞在国に詳しい知人を1人でもつくっておく

実際に海外に住み始めると、買い物場所、乗り物の利用、手続きの仕方…次々と疑問点が出てきます。学校の先生や現地の人に尋ねるほどではない些細なことでも、すぐに聞ける間柄はとてもありがたく感じます。「そのお店なら大丈夫!」「私も同じことがあった!」と言われるだけで心がスッと軽くなるもの。

いま住まれていなくても地域の事情に詳しい方などと繋がりを持つことをおすすめします。私の場合は、長女がスペインに在住歴がありましたが、SNSで繋がった方々からも多くの情報や励ましをいただき、今もなお救われている思いです。

日本出国時は、「何もできなくても行けば何とかなる」と、持ち前のポジティブ思考で飛び出してしまいましたが、実際には「何もできないと何も動けない」を日々実感している毎日です。こんなにも海外に不慣れだった自分…ローマ字慣れしていなかった半生を泣き笑いしながら、長い目で自分を見つめ、今後の人生を築いていきたいと思います。