先日開催された「ドラコンウルトラマン決定戦2023・著名人の部」で、平成の怪物・松坂大輔と並ぶ最長飛距離330ヤードを記録し見事優勝したのは、大人気ゴルフ系YouTubeチャンネル『Sho-Time Golf』を運営する尾崎翔太プロ。身長167cmと、決して体格に恵まれているわけではないが、圧巻のロングドライブはチャンネルの見どころにもなっており、登録者数は17万人に迫る勢いだ。2022年にはPGAプロテストを見事一発で通過。名実ともにプロゴルファーの仲間入りを果たし、YouTuberとしてだけでなくプロゴルファーとしても今後の活躍が期待される。YouTubeについて、そして飛ばしの秘訣について話を聞いた。


『Sho-Time Golf』の尾崎翔太プロ

【チャンネル開設からわずか半年でYouTube一本に】

――まずは、尾崎プロがゴルフを始めたきっかけを教えてください 。

「父が大のゴルフ好きで、小さいころに練習場に連れて行ってもらったのがきっかけです。コースデビューは5歳の時で、ゴルフ歴で言うと20年以上になります。ちゃんとゴルフをやり始めたのは中学生からですけどね」

――ゴルフを始めるまでは何か他のスポーツをされていたんですか?

「小学生から中学1年生の1学期までサッカーをやっていました。その後は本格的にゴルフに切り替えました」

――サッカーからゴルフに切り替えたきっかけは?

「昔から身長が小さかったので、サッカーよりまだゴルフのほうがいけるかなって(笑)」

――尾崎プロは高校、大学とアメリカにゴルフ留学をされていましたよね。アメリカでの学生生活について教えてください。

「明確にプロゴルファーを目指していたわけではないのですが、ゴルフがうまくなりたくて、父親に頼んで留学させてもらいました。アメリカで通っていた学校はゴルフアカデミーの様な感じです。授業の前にゴルフの練習をして、お昼は授業を受けて、学校が終わったあとは勉強。ゴルフアカデミーと言っても、アメリカでは宿題もたくさん出るので、ちゃんと勉強もしなきゃいけなかったんです」

――とても忙しい毎日を送られていたんですね。ところでなぜYouTubeを始めようと思ったんですか?5年ほど前に尾崎プロがYouTubeを始められた頃は、ゴルフ系のチャンネルもまだ少なかったように思います。

「アメリカ留学を終え日本に帰ってから、プロゴルファーとして成功する保証もなかったんです。漠然とゴルフで食べていきたいな、と考えてはいたのですが、今ほどゴルフも流行っていませんでしたし、まだあまりゴルフ系のYouTubeチャンネルもありませんでした。もともとYouTubeが好きだったので、他にやっている人も少ないし、じゃあやってみようかなって(笑)。そうしたらわりと序盤からトントン拍子にうまくいっちゃいました。 日本に帰ってから、並行して3ヶ月くらいはゴルフ場のキャディもやっていたんですよ。でも、ありがたいことにYouTubeで食べられるようになって、すぐにYouTube一本になりました」

――YouTube一本で行ける、と思ったタイミングは?

「YouTubeを始めて、大体半年くらいの頃だったと思います。そのあたりからチャンネルの収益が上がってきて」

――収益化はあっという間だったんですね。チャンネルでは「中古クラブ1万円企画(予算1万円以内でクラブセットを組んでラウンドする『Sho-Time Golf』の人気企画)」など個性的な企画を色々とやっていらっしゃいますが、企画はどうやって考えているのですか?

「海外のYouTube動画を参考にすることもあります。『Rick Shies Golf』さんや『gm_golf』さんなどをよく観ています。単純に動画として面白いし、ゴルフの勉強にもなりますね」

――今後の企画も楽しみです。ちなみに尾崎プロが上手いなと思う他のゴルフYouTuberはいらっしゃいますか?

「ゴルフYouTuberと言っていいのか分からないですけど、堀川未来夢さん(笑)※。やっぱり上手いですよね。堀川選手が出場していた先日の『ZOZO CHAMPIONSHIP』でも『人気YouTuber』と紹介されていましたし(笑)」
※堀川未来夢(ほりかわ・みくむ/30歳。2022年日本プロゴルフ選手権ほかツアー通算4勝。2023年賞金ランキング17位)

【「プロテスト通っているの?」ってよく聞かれるので「じゃあ通ってやるよ」と(笑)】

――尾崎プロは去年、ランバン スポール主催のゴルフ系クリエーターのトーナメントでも優勝されていましたね。

「去年は優勝する自信がありました。今年は負けてしまいましたが、敗因は自滅です(笑)。トーナメントは9ホールのマッチプレーで戦うのですが、9ホールはきついですよ。巻き返すのは難しかったです」

――昨年の決勝の相手は、同じ『Sho-Time Golf』の姜秀一さんでした。姜さんをはじめ、一緒に動画に出演されている浅野勝也さん、エンター豊田さんとの出会いを聞かせてください。

「(浅野)勝也はアメリカの留学先が一緒で、高校時代からの付き合いです。姜(秀一)は知り合いの知り合いがゴルフに誘ってくれて一緒に回ったのがきっかけです。ゴルフも飛ばすし、話も本当に面白くて(笑)。初めて会った日にラウンドしたのですが、ランチの時に笑いすぎて、後半ゴルフにならなかったのを覚えています。エンター(豊田)は動画の企画で知り合いました。僕と姜がエンターを含むドラコンプロとゴルフで対戦する企画でした。そこから仲良くなって、定期的にYouTubeに出てもらうようになりました」

――姜さんの飛距離もすごいですもんね。姜さんと尾崎さん、どちらの方がお上手なんでしょう。

「今だと...僕じゃないですかね。プロですから(笑)」

――ここからはゴルフのお話を伺います。尾崎プロといえば、昨年のプロテストでの一発合格が印象的です。

「プロテストの時、OBを結構打っちゃって(笑)。2日目で合格圏外に落ちてしまったんですが、何とか3日目で盛り返しができたのでよかったです」

――そもそも、なぜ今までプロテストを受けていなかったんですか?

「日本だとプロテストに受かってすぐツアーに出られるわけでもないので、あまり意味がないのかなって。QT※も通らなきゃいけませんし。でも『尾崎さんはプロテストに通っているの?』って本当によく聞かれるので、そんなに聞かれるなら『じゃあ通ってやるよ』と(笑)。受かる自信はありましたから」
※QT(クォリファイングトーナメント。ツアーや下部ツアーの出場権を争う予選会)

――そして有言実行のプロテスト一発合格。今はどれくらいの頻度でラウンドされているんですか?

「試合がある時は週の半分以上ラウンドしていますね。冬の時期はあまりラウンドしていませんが、ラウンドがない日もゴルフ場に来て2〜3時間は練習していると思います」

【ドライバーの飛距離UPには「捻転差」と「筋肉量」】

――先日、来年度の日本ツアーの出場権を争うQTに出場されていましたが、惜しくも3rd QT進出とはなりませんでした。ご自身と、QTを通過してツアーに出場している選手と比べて、明確な差は感じましたか?

「ツアーメンバーやFinal QTまで出場する人って、とにかく皆ドライバーが曲がらないんですよ。飛ぶのに曲がらない。パターも圧倒的に上手い。ただ、飛距離的なアドバンテージだけは自分にもあるな、とは感じました」

――尾崎プロはパターやアプローチなども上手な印象ですが、そんなに差があるんですね。

「実はあまりパターは得意ではないんです(笑)。Final QTに行く選手やツアープレイヤーは、150ヤード以内くらいからの精度もずば抜けています。そのあたりの距離からは、みんなほとんど2打であがっちゃうんですよね」

――つい先日、日本ツアーにも出場されているJ・チョイ選手が動画に出演されていました。

「全然レベルが違いましたね。パターも上手いですし、やっぱりドライバーは曲がらない。あとめっちゃ面白かったです(笑)」

――ドライバーといえば、先日ドラコンの大会(「ドラコンウルトラマン決定戦2023」)で松坂大輔さんと並んで優勝されていましたね。現在の最長飛距離はどれくらいですか?

「330ヤードくらいです。昔から飛距離には自信があって、中学生の時から260ヤードは飛んでいました。身長は150cmくらいしかなかったんですけどね」

――中学生で260ヤード。すでに飛ばし屋の女子プロ並の飛距離があったんですね。尾崎プロが考える、飛ばすためのご自身の強みって何でしょうか。

「難しい質問ですね(笑)。強いて言うなら上半身と下半身の捻転差くらい。あとは、大学に入ってから筋トレも始めたので、それもあると思います。僕の場合、本格的に筋トレをやるようになってから、明確に飛距離も伸びていきました」

――やはり筋トレは大事なんですね。ちなみに、飛距離に直結する筋肉は?

「よく聞かれますけど、どこを鍛えればいいとかは無いんじゃないかと思っています。個別の筋肉というより、全体的な筋肉量を増やすことが大切だと考えているので、トレーニングは大きい筋肉を中心に満遍なくやるのが大事です。大きい筋肉を鍛えるトレーニングは効率も良いと思います。最近はあまり筋トレをできていないんですけど、昔は週6でやっていました(笑)」

――尾崎さんは男性としては小柄な方(167cm)だと思うのですが、筋力以外の飛ばしの秘訣があればぜひお伺いしたいです。

「皆さん、すぐ飛ばせるようになりたいと言ってくるんですけど『これをやったらすぐに飛距離がUPします』みたいな、多分そんなオイシイ話って無くて、やはり地道な努力と練習が必要だと思うんです。あえてポイントとして挙げるとすれば、限界まで肩を回しながら、腰の部分で上半身と下半身の捻転差を作ることが大事です。体の柔軟性も要求されるので、日頃のストレッチも必要です。 あとは、僕は普段の練習の時からいつもマン振りするようにしています。抑えるショットばかり練習していたら飛距離が落ちますし、スイングも変わってきちゃうので。もちろんコントロールショットも練習はしますが、練習でマン振りしておかないとコースで振れなくなります。振れるようになってくると、飛距離も伸びてくると思います」

――簡単に飛ばせるようにはならないと。アマチュアが飛距離を伸ばそうとすると、その分ボールも曲がってしまいやすいと思うのですが、尾崎プロは飛距離をある程度妥協すれば、曲がりを抑えることができるのでしょうか。

「多分変わらないですね(笑)。だったら飛ばしたほういいかな、と。(持ち球のドローではなく)フェードボールを練習したりと、曲がらないように努力はしていますけど、飛ばすことより曲げないことの方が僕には難しいです」

――尾崎プロにスイングを教えてもらったら、飛ばせるスイング作りに繋がりそうですね。

「申し訳ないんですけど、僕が教えるとみんなチーピン※になっちゃってます(笑)」
※チーピン(球が低く飛び出して、急に左に曲がること。語源は麻雀牌の「七筒」から)

【やっぱりレギュラーツアーでツアープロとして活躍したい】

――ドライバー以外で、得意なクラブやシチュエーションはありますか?

「グリーン周りのアプローチは結構好きですね。昔からアプローチは得意です」

――アプローチの練習方法は?

「転がしや、ちょっと上げて落とすショットなど、いろいろな種類のショットをクラブも変えながら練習します。転がせるシチュエーションでは、ピッチングウェッジや9番アイアンを積極的に使うようにしています」

――そのほか、普段の練習で意識していることを教えてください。

「スイングの動画を撮って逐一確認しています。これは絶対に皆さんもやったほうがいいと思いますね。動画で確認すると、思っていたイメージと全然違う動きをしていることがあるので、面倒でも毎回ちゃんと確認することが上手くなる秘訣なのかなと思っています」

――アマチュアゴルファーが練習場でできるおすすめの練習方法はありますか?

「左右どちらかの手だけでアプローチをする、いわゆる片手打ちもいいと思います。片手打ちを左右両方の手でやるとバランス良くスイングできるようになりますし、ボールのコンタクト率も向上すると思います」

――そのほか、尾崎プロが普段の練習に使っている練習器具などはありますか?

「ちょっとお値段は高いんですけど、ProSENDR(プロセンダー)といって、トップの位置が矯正される練習器具はいいと思います。これをつけたままスイングするだけなので、練習場でも使いやすいと思います」

――クラブセッティングを紹介していただけますか?

「ドライバーはCobraを使っています。3番ウッドがCallawayで、次がPINGの3番ユーティリティ(19°)です。ロフトの大きいユーティリティだと僕の場合、ボールが左に出てしまうので、ユーティリティとアイアンの間にアイアン型ユーティリティも入れています。ユーティリティが捕まり過ぎる人にはいいと思います。アイアン(5番〜PW)とウェッジ(50°、56°、60°)はONOFFを使っています。ONOFFのアイアン(FORGED IRON KURO)は僕の動画でも紹介していますが、アマチュアゴルファーにもおススメできます。今バッグに入っているパターはL.A.B. GOLFのツノ形ですね」

――YouTuberとプロゴルファー、軸足が2つに増えましたが、プロとしての今後の活動は?

「以前から日本やカナダツアーのQTに挑戦していますが、プロとしての成功は昔から目指していましたし、やっぱりレギュラーツアーに出たいですね。ツアープロとして活躍したいです」

――最後に、『Sho-Time Golf』の目標を教えてください。

「日本一のゴルフ系YouTubeチャンネルです。チャンネル登録者数では厳しそうですけど、動画の再生数で日本一を目指して頑張りたいです!」

【profile】 
尾崎翔太(おざき・しょうた)
1995年3月19日生まれ。東京都出身。YouTuber/プロゴルファー。中学校時代から本格的にゴルフを始め、高校・大学と米国にゴルフ留学。「James Madison University」を卒業後帰国し、YouTubeチャンネル『Sho-Time Golf』を開設。ロングドライブと個性的な企画でまたたく間に人気チャンネルとなり、チャンネル登録者数は17万人に迫る勢い(2023年12月現在)。YouTuberとしての活動の傍ら、2022年にはプロテストに一発合格し、現在はPGAトーナメントプレイヤーとしてレギュラーツアー出場を目指し奮闘中。167cm/72kg。