チャンピオンズリーグ(CL)グループステージ最終節。第5節までにベスト16入りを決めていたバイエルン(グループA)、アーセナル、PSV(B)、レアル・マドリード(C)、レアル・ソシエダ、インテル(D)、アトレティコ・マドリード、ラツィオ(E)、ドルトムント(F)、マンチェスター・シティ、ライプツィヒ(G)、バルセロナ(H)の12チームに加えて、コペンハーゲン(A)、ナポリ(C)、パリ・サンジェルマン(F)、ポルト(H)の4チームがそれに続いた。

 スペイン4チーム、イタリア、ドイツ各3チーム、イングランド2チーム、フランス、オランダ、ポルトガル、デンマーク各1チームという内訳である。

 また各グループの3位チームに入ったガラタサライ(A)、ランス(B)、ブラガ(C)、ベンフィカ(D)、フェイエノールト(E)、ミラン(F)、ヤングボーイズ(G)、シャフタール(H)の8チームは、ヨーロッパリーグ(EL)のベスト16入りを懸け、ELグループステージ各組3位チームとのプレーオフに臨むことになった。

 日本人選手のおさらいをすれば、グループステージの土を踏んだ選手は計8人で、突破したのは冨安健洋(アーセナル)、久保建英(レアル・ソシエダ)、鎌田大地(ラツィオ)の3人。上田綺世(フェイエノールト)がELプレーオフに進んだのに対し、セルティック(古橋亨梧、旗手怜央、前田大然、岩田智輝)は最下位に終わり、欧州戦線から退くことになった。


インテルに引き分け、首位でグループステージを突破したレアル・ソシエダの久保建英photo by Ricardo Larreina/AFLO

 この最終第6節では、前節の段階でグループリーグ敗退が決まっていたセルティックとフェイエノールトが直接対戦した。セルティックは前田と旗手をケガで欠いたが、古橋に加え、岩田が守備的MFとしてCL初先発を飾った。1年前、横浜F・マリノスから移籍して以来、出場機会に恵まれていたわけではない岩田にとって、まさに晴れの舞台となった。しかし好事魔多しとはこのことで、前半19分、相手と交錯し負傷。交代の憂き目に遭う。日本代表も望めそうな実績を積んだと思われた直後の不幸な出来事だった。

【鎌田、冨安のアジアカップは?】

 試合は2−1でセルティックが接戦をものにしたが、CL本大会で2シーズン続けてグループリーグ最下位という現実を突きつけられると、そこでCLに出場する意義に引っかかりを覚えることも事実なのだ。「今季、日本人のチャンピオンズリーガーは8人を数える!」と胸を張りたくなる気持ちが、いささか萎える。サッカーの可能性という点でも、メンバーを落として試合に敗れたフェイエノールトのほうが勝っていた。

 今季、久々に欧州の表舞台で戦ったフェイエノールトは好チームだった。ELに回ってもやりそうな気配を感じる。問題は1トップを張るサンティアゴ・ヒメネスが冬の移籍市場でチームに残るか否かだ。

 今季ブレイクを果たした22歳のメキシコ代表。国内リーグ、CL合わせて19試合に出場して20ゴールを叩き出しているヒメネスがいる限り、上田綺世の出場機会は増えないと見る。

 3位フェイエノールト、4位セルティックに終わったグループEで、この日、1位と2位を争う恰好となったアトレティコ対ラツィオは、2−0でアトレティコの完勝に終わった。

 ラツィオ所属の鎌田も出場時間が伸びていない。直近のセリエA対ヴェローナ戦では出場なし。その前の2試合も交代出場に終わっている。この日も0−2とリードされた後半19分からの出場だった。

 鎌田自身の問題以上に大きいのが、ラツィオのサッカーそのものだ。昨季のセリエA準優勝チームにしては弱すぎる。3位に終わったフェイエノールトとの直接対決を見ても、内容ではラツィオのほうが劣っていた。現在の国内リーグの成績は10位。そこで鎌田は出場機会に恵まれていないわけだ。移籍は失敗だったと言わざるを得ない。当面は監督交代に期待するしかない。CL決勝トーナメント1回戦は2月14日スタートで、これはアジアカップ決勝のわずか3日後になる。鎌田はアジアカップに出場すべきか否か、難しい状況にある。

 意味合いは異なるが、首位通過を果たしたアーセナルの冨安も好ましくない状況にある。チームはブックメーカー各社から、マンチェスター・シティ、バイエルン、レアル・マドリードに次ぐ4番人気に推されているが、12月2日のウルブス戦でケガをした冨安は、その一員として決勝トーナメントに参加することはできるのか。もしケガが治ったとしてもアジアカップ出場は慎重になるべきではないか。

【インテルに内容で優っていたソシエダ】

 今季の日本人チャンピオンズリーガー8人の中で、もっとも順調なステップを踏んでいるのは久保だ。インテル、ベンフィカ、ザルツブルクと同居したグループDで、レアル・ソシエダはインテル、ベンフィカに次ぐ3番手候補と見られていた。ベンフィカには劣るだろうと。だが終わってみれば、インテルと同勝ち点の1位通過だった。

 昨季の準優勝チーム、インテルとの直接対決の結果はホーム1−1、6節目のアウェー戦は0−0で、内容的にはレアル・ソシエダのほうがわずかに勝っていた。惜しかったのは1−1に終わった初戦。インテルが同点に追いついたのは後半42分で、それはレアル・ソシエダが布陣を4−3−3から5バックに変更した2分後の出来事だった。普通に戦っていれば勝っていた、とは筆者の印象である。インテルをリスペクトしすぎたことが仇となった。

 最終節のアウェー戦も、レアル・ソシエダはボール支配率で、UEFAのデータに基づけば62対38の関係で勝っていた。引いて構えるインテルをレアル・ソシエダがどう崩すかが焦点になっていた。

 だが結局、最後まで大人数で守るインテルの守備を、レアル・ソシエダは崩すことができなかった。攻めが真ん中に偏ったこと、外をえぐれなかったこととそれは大きな関係にある。右ウイングの久保は8、9割、内へ切れ込んだ。10数度あったウイングプレーの中で縦突破は確か2度ほどしか敢行していない。裏からではなく、結果的に正面から壁を崩そうとする恰好になった久保は、インテルの術中にはまり込むことになった。

 マイナスの折り返しは決まらなかった。こうした状況では同じドリブラーでも縦突破を得意にする三笘薫のほうが有効だ。ふとインテル対ブライトンを観戦してみたい気持ちに襲われた。

 もうひとり、久保で想起したのは、マジョルカから今季パリ・サンジェルマン(PSG)に移籍したイ・ガンイン(韓国代表)だ。最終第6節のドルトムント戦では、マヌエル・ウガルテ(ウルグアイ代表)に替わって出場を果たし、チームのベスト16入りにつながる1−1の引き分け劇に貢献した。

【評価高めたレアル・マドリード】

 ウガルテは昨季までスポルティングで守田英正と守備的MFを張っていた選手だ。PSGに移籍したウガルテに対し、守田はスポルティングに残った。イ・ガンインは、守田に先んじて出世したウガルテに替わって出場したわけだ。日本人にとってはライバル心を燃やしたくなる選手である。

 韓国人のチャンピオンズリーガーと言えば、バイエルンのキム・ミンジェを真っ先に想起する。だがこの日は、マンチェスター・シティと戦ったレッドスター(ツルヴェナ・ズヴェズダ)のアタッカー、ファン・インボムも活躍した。韓国人の欧州組は日本人の3分の1程度と言われる。総数で日本は勝るが、これにプレミアのスター選手、ソン・フンミンらを加えたトップ選手の数となると競った関係になる。チャンピオンズリーガーの数をいかに増やすかは、日本サッカー界がこだわるべき点に見える。

 グループステージを終えて、もっとも評価を高めたチームはレアル・マドリードだろう。当初、5、6番手だった順位を、先述のように3番手まで上げている。その背景にあるのはマンチェスター・シティと並ぶ6連勝というグループステージの成績だ。
 
 好調の原因は、ジュード・ベリンガムの存在なしには語れない。今季加わったイングランド代表の20歳。フェイエノールトのヒメネスどころの話ではない。毎試合、マンオブザマッチ級の活躍をここまで続ける選手も珍しい。

 だがその一方で、レアル・マドリードのサッカーは守備的になった。想起するのは、カルロ・アンチェロッティ監督の下でCLを制した2006−07シーズンのミランのサッカーだ。同じく6戦全勝のジュゼップ・グアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティとは対極を成すサッカーと言っていい。

 バルセロナが相変わらずパッとしないサッカーを見せるなかで、この対照的な両チームは際立って見える。2月14日に再開される決勝トーナメントに目を凝らしたい。