「待てたらお菓子をもう1個」で我慢できずに食べてしまった保育園児の末路
「勉強ができるようになりたい」と願う人は多いだろう。持って生まれた知能が素晴らしくても、それだけでは勉強ができるようにはならない。知能の発達に加え、非認知能力を高めることが必要になる。非認知能力の中核である「自己コントロール力」とは、具体的にはどのような能力なのだろうか。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
自己コントロール力〜目の前の欲求を我慢できるか?
知的能力が同じ子どもであっても、成績に差が付くのはなぜか。いくら知的能力が高くても、やる気や忍耐力がなければ学力は向上せず、その成果としての成績も良くならないだろう。自己コントロール力についての実験の原点と言えるのが、心理学者ミシェルたちが行った「マシュマロ・テスト」だ。
子どもにマシュマロを見せて、今すぐ食べるなら一個あげるが、研究者がいったん席を外して戻るまで待てたら二個あげると告げ、待つことができるか、それとも待てずに食べてしまうかを試すものである(詳しくは前回記事を参照)。
ミシェルはこの実験について、「先延ばしされたものの、より価値のある報酬のために、未就学児が自らに課した、即時の欲求充足の先延ばしパラダイム」であるとしている。
先延ばしされたものの、より価値のある報酬のために、即時の欲求充足を先延ばしする、というのがちょっとわかりにくいかもしれないので、この本のテーマである勉強ができるということと絡めて、より具体的に説明してみよう。
たとえば、宿題をしないといけないのに、近所の友だちから遊びに誘われたとする。ここでの即時の欲求充足とは、友だちの誘いに応じて今すぐ遊びに行ってしまうことを指す。でも、それをしてしまうと、明日学校で先生から叱られるし、学期末の成績に悪影響がある。
この場合、先延ばしされたものの、より価値のある報酬というのは、今すぐの欲求充足を我慢して、友だちの誘いを断り宿題をすれば、明日先生からほめられる、あるいは叱られずにすむし、その日に習った内容の理解が進み学期末の成績に好影響が期待できることを指す。
このような状況で、友だちの誘いに乗って遊びに行くという目の前の欲求充足を我慢できるかどうかということである。
あるいは、もうすぐ定期試験があり、これまでに習ったことを復習するという準備勉強をしないといけないのに、好きなサッカーの国際試合がテレビで連日放映されるとする。
ここでの即時の欲求充足とは、好きなサッカーの国際試合を見たいという誘惑に負けてテレビを見てしまうことを指す。でも、それをしてしまうと、定期試験の準備勉強が疎かになり、良い成績を取ることができなくなってしまう。先延ばしされたものの、より価値のある報酬というのは、今すぐの欲求充足を我慢して、テレビでサッカーの国際試合を見るのを諦め定期試験の準備勉強をすれば、定期試験で良い点数を取ることができ、学期末の成績が良くなると期待できることを指す。