師弟対決はオーストリアに軍配、対照的な道を歩むナーゲルスマンとラングニック

©️IMAGO/Matthias Koch
「結果的に、我々には課題が山積みだということ」火曜夜に行われたオーストリア代表戦にて敗れた、ドイツ代表ユリアン・ナーゲルスマン監督はTVとのインタビューのなかでそう語った。今回もまた失点を重ねた上に、さらにオフェンス面においてもまとまりに欠け、「いずれのポジションにしても、あまりに多く手をつけなくてはならない」と36歳の指揮官。ただそれはもはや誰の目にも明らかである。敵将ラルフ・ラングニック監督による「ドイツ代表は得点を多くとっても失点が多すぎる。毎回2・3点許すようでは・・・」との言葉はそのアキレス腱を的確にまとめた表現といえるだろう。半年後に向けた光明は見受けられず、今回のオーストリア戦でも「あまりに酷い数のロスト」を記録しては「いかに才能があるチームであっても物事がうまく運ぶはずがない」もの。ただ不安要素としては若き監督がその革新性に走る部分があげられ、この点については監督自身「非常にシンプル」と反論。選手たちの意見に耳を傾けているといい、前日の会見に同席したフンメルスも「物事にはある程度の時間はかかるもの」とそれを支持。結束力についても「試合の六時間前にホテルにいくと、すでに選手たちは一緒に座って話し合っている」と強調。
股も詰めの甘さ露呈、求められるドイツの美徳”ハードワーカー”
たとえば先制点のサビッツァのシーンでは「明らかに相手が股を通すことを誘発していた」なかで、ヨタナン・ターが驚くほど大股で臨み、GKトラップの守備範囲がそれだけ大きくなってしまった場面などはその典型的なシーンの1つであろう。その結果はまだピッチではまったくみられていない。フェラーSDは「結果は問題ではなく、プロセスが全く良くなかった。改善しなくてはならない」と述べ、自身が暫定監督を務め勝利した「フランス代表戦での戦いが1つの概念であり、ユーロでいい役割を演じて人々の心を取り戻すには、トルコやオーストリアのみせていたようなプレーをする事だ」と本来のドイツの美徳を再び取り戻していく必要性を訴えた。「システムや起用法どうこう以前に情熱、ダイナミズム、エネルギーがこの2試合で欠けていたものだよ。ここに着手しなくては」実際にナーゲルスマン監督もその「ハードワーカー」の必要性を口にしており、それは例えばキミヒが示したもので、アンドリヒも初戦オーストリア戦で、初招集のプレーメルは「それを信条とし練習でも適応をみせていた」と評価されている。さらにグロースについても「素晴らしい2年で、ピッチ上での彼の認識について話をすると、自分自身を驚くほど重要視していないことに気付かされる」と称賛していた。
ナーゲルスマン監督、サネの退場に「相手選手もみてほしい」
またこの試合の敗戦をより一層、際立たせてしまったのがリロイ・サネによる退場劇だ。1点を追いかける後半開始早々に、ファウルされた相手選手ムウェネ(マインツ)より挑発行為を受けた27歳は、相手の首もとに手にやったり押したりして反応、プロ402試合目にして主審よりレッドカードが提示されている。ナーゲルスマン監督は「ムウェネ自身がとった行動というのも見なくてはならない」としつつ、それでも「ああいう結果にならないように、もっとクレバーにならなくてはならない」ともコメント。選手自身も「この試合は僕のせいだ、自制しなければならなかったし、あんなことはあってはならない。チームに対して申し訳ない」と反省を述べた。「あれはムウェネどうこうというよりも、自分自身のパフォーマンスの苛立ちからくるものだった。でもさっきも強調したように、あんなことは起こってはいけない。もちろんやる気はあるし皆と好転させるために戦って行きたいんだ」ただこれからFIFAより出場停止処分が最低でも3試合見込まれ、自国開催のユーロまで残されているのは3月の代表戦2試合、そして本番直前の腕試し含む合計4試合のみだ。
ギュンドアン「落ちるところまで落ちた、それだけが好材料」
主将イルカイ・ギュンドアンは「全て自分達で招いた結果だ。あの退場はそれをまさに象徴したものだといえるだろう。苛立ち、失望、それは自分達に向けられたものでもある。僕たちはオーストリア代表にもあまりに簡単に得点チャンスを作らせてしまっていた」と総括。「守備というものはそもそも前線から始まるものであり、そこではいかに走るか、プレスをかけるか、それをどこまで貫けるかが試されるが、僕たちの答えはいつも逆だ。だから対人戦で敗れてオーストリアの思惑通りにいかせてしまった。それでどうやってうまくできるだろう」と付け加え、マッツ・フメルスも「特に強豪国相手となれば物足りなさすぎる。50分に数的不利になるまで気迫という部分に欠けており、このままでは到底やっていけるものではない」と同調する。「サッカーを知る人なら皆知っていることだけど、守備は単に守るだけではない。攻撃は単に攻撃するだけではない。ゴールできない時はすぐにケアにあたらないと。その逆も然りだ」ギュンドアンは「これ以上の底もないだろう。それが唯一の光明」と自虐的に振り返りつつ、「ナーゲルスマン監督は事態打開に向けて何をすべきか、その理由をわかっているはず」と期待。「僕たちは今こういう辛い経験をしているしドイツは特に議論となる国ではあるけど、それでも自分自身を見つけ直して何をすべきかを全員が明確にしていかないといけない。成功への術を見いだせない限り、成功への道は開かられることはない」と語った。
師弟対決制したラングニック氏は立て直しに成功
その一方でナーゲルスマン監督との師弟対決を制した、ラルフ・ラングニック監督は「今回の試合は私の就任以来、この18ヶ月で最高の試合となったね。どの時間帯においても、自分達が試合をコントロールすることができていたし、選手たちは全て、指示されていたことを見事に実践へと移してみせていたよ」と称賛。「この選手たちが大好きだし、このチームが大好きだ。当然だがね。皆が同じ船に乗り込んでいれば、なにも不安に駆られる必要もない。選手たちはとてもクレバーで落ち着いている。このレベルでの戦いで勝利する術を知っている。こういった試合に臨む姿勢、メンタリティをしっかりと持ち合わせているんだ」と胸を張った。そのドイツ代表とはまさに対照的な見方と同様にその結果も対照的なものとなっており、世紀の大不振に喘ぐドイツとは異なりオーストリア代表は2023年だけで20勝8敗、得失点差20:8を記録。これは1990年以来過去34年間で振り返ってみても、2015年以来となる大きな成功でありとりわけフォーダ監督解任、ラングニック監督招聘という前年度(10試合で3勝2分5敗)からユーロイヤーに向け、師弟対決を制したラングニック氏は順調にチームを導いているといえるだろう。
ナーゲルスマン監督の時間稼ぎに「なさけない」
ドイツ代表に勝利したオーストリア代表ではあるが、しかしながら今もある場面が物議を呼んだままとなっている。それはサネが退場となった直後の後半51分に突然、GKケヴィン・トラップが負傷を訴えて治療にあたり、そしてその間にナーゲルスマン監督は9人の選手たちに支持を与えていたのだが、これが時間稼ぎのための演技であると指摘。解説者のハーバート・プロハスカ氏は国営放送で「情けない」と呆れ顔。同様の件で最近オーストリアでは、元シュトゥットガルトのパトリック・ヴィマー氏がウィーンダービーにて、元バイエルンのGKフリュヒトルに同様のことを命じて1試合の出場停止処分に処されたばかり。ナーゲルスマン監督についても動画でその証拠は残されているようだが、ただ同様の処分を受ける恐れは必要ない。
