ホストクラブの高額請求問題、新宿区が売掛金の自主規制を要請「この街が再生するには今が最後のチャンス」
東京・新宿区歌舞伎町のホストクラブやメンズコンセプトカフェでの高額請求問題で、吉住健一新宿区長は11月17日、「事件化しているのは氷山の一角」として、ホストクラブに対して売掛金制度の自主規制を求めるほか、相談窓口の設置などの被害対策を実施すると発表した。この他、新たな被害者を出さないための啓もう活動も行う方針だ。
この日、新宿区役所で開いた会見では、「儲けるために他人を不幸にしてもいい、という考えをこの街の商売のルールにしてほしくない」(吉住区長)と強い意気込みを語った。
新宿警察の永野雅通署長も、売掛金に関する相談が昨年から倍増しているとし、「犯罪に該当するケースは、警察が関与すべきものとして事件化を図るなど対応する。併せて店舗への立ち入りを通じて、行政指導や取り締まりを行うなど、違法営業店の排除を進めていく」と厳しい態度でのぞむ方針を示した。(ジャーナリスト・肥沼和之)
●売掛金制度そのものを規制することは難しいが……
11月5日には歌舞伎町の路上でホストクラブ勤務の男性を客とみられる女性がナイフで切り付ける事件も発生するなど、歌舞伎町では「カケ(売掛金)」と呼ばれる支払い方法が慣例化している。それにより多額の借金を背負った女性が、性風俗産業で働かされる、暴力を受ける、家族に請求が行く、など様々なトラブルに発展するケースが散見されているという。
吉住区長は、売掛金制度そのものを規制することは難しいと説明。そのため大手ホストグループの経営者たちと連絡を取り、来月をめどに業界団体を立ち上げてもらうことや、売掛金制度に関する業界の自主ルールを作ってもらうことを要請したと明かす。歌舞伎町に約300店のホストクラブがあるなか、現状で100以上の店舗が話し合いに応じる見通しだとした。
自主ルールの内容については、毎月一定の金額以上はカケができなくなるような総量規制を想定し、すでに検討しているホストクラブもあると話した。すでに売掛金が発生しているケースは、担当ホストに放棄してもらうことができないか、店舗に相談しているという。
被害が相次ぐ要因のひとつとして、高額請求をされている女性自身が、ホストに恋愛感情を持ってしまっているため、騙されて不当な請求を受けていると自覚していないケースが多いと指摘。そのため、高額な売掛金を支払うために風俗を紹介された、暴力を振るわれた、などの事例を発信していき、該当すれば騙されている可能性が高いと、本人が気づけるような啓もう活動を行っていくと表明。
また小池百合子都知事にも、悪質な店舗やグループは名前の公表、摘発可能なケースは摘発するなど、厳罰化を要請したと明かした。
●「恋愛詐欺商法」
「青少年を守る父母の連絡協議会」の玄秀盛代表も、悪質なホストの高額請求を「恋愛詐欺商法」と断罪し、売掛金制度のそもそもの問題を次のように語った。
「売掛金制度は前からある商いの習慣だが、ホストの売掛金制度の悪質なところは、ホストが立て替えていること。個人の貸借になっている。女性が飛んだらホストが払わないといけないので、がむしゃらに取り立てる。こういうシステムをホスト業界が作りあげたのが一番の根底。売掛金というシステムを止めて、健全なビジネスに持っていかないといけない」
さらに、悪質なホストクラブが新人へ行っている研修内容も問題視。疑似恋愛のような接客方法でマインドコントロールし、女性を「ホストを助けるためには何でもする」という状態に陥らせる。そうなると、たとえ両親であっても、第三者が口を出すと敵愾心を持たれてしまう。そういったプロセスをマニュアル化し、一部のホストクラブが研修として行っていることに「大変な問題」と語気を強めた。
最後に吉住区長は、「この街が再生するには今が最後のチャンス」とし、「未成年をはじめとした家出少女を含めて、この街に流れ着いた人が犯罪に巻き込まれたり、人生が破滅したりすることを自治体として避けたい」と力強く訴えかけた。