スタッドレスタイヤに履き替えず、たまに積雪地へ行く際にチェーンを使うという人もいるかもしれません。しかし、チェーンでは不利なところが増えている側面もあります。

「一部チェーンは使用禁止」の区間とは?

 2023年11月11日頃から13日頃にかけて、北日本を中心に雪やみぞれが予測されているとして、道路管理者が警戒を強めており、NEXCO東日本などは冬用タイヤの着用とタイヤチェーンの携行を呼び掛けています。本格的な冬がいよいよ到来しました。


金属チェーンのイメージ。使用禁止の区間もある(画像:natoly Tiplyashin/123RF)。

 2018年からは全国13の峠などの区間を対象に、冬用タイヤだけではNGなチェーン必須の「チェーン規制」が敷かれるようにもなっています。脱着がしやすい非金属チェーン(おもに樹脂)や布製チェーンだけでなく、昔ながらの金属チェーンも、登坂能力の高さから再注目されました。

 非降雪地帯に住む人は、冬用タイヤに履き替えず、チェーンだけで乗り切ろうという人も多いかもしれません。ただ、チェーンだけの走行は、注意を要する区間が増えているという見方もできます。

 たとえば関越道の群馬・新潟県境にまたがる全長11000m前後(上下線で長さが異なる)の関越トンネルは、金属チェーンの使用が禁止されています。金属チェーンは前後の脱着所で取り外さなければなりません。2017年に東北中央道の福島・山形県境に開通した全長8972mの栗子トンネルも、同様に金属チェーンの使用が禁止されました。

 なぜなら、トンネル内は乾燥路のため、チェーンが切れる恐れがあるからです。特に金属チェーンは、切れたチェーンが飛んでくれば危険な状況になることは容易に想像できます。

金属チェーンじゃなければOK?

 これらトンネルも金属チェーンでなければ走行は可能。JASAA(日本自動車交通安全用品協会)の認定を受けた非金属チェーンは、国内最長の山岳道路トンネルである「関越トンネルを装着したまま走れる」ことが、ひとつのウリにもなっています。

 とはいえ、チェーンを乾燥路で使用する破損リスクは常に伴います。非金属チェーンでも基本的に乾燥路での使用は推奨されていません。特に、50km/h以上のスピードを出すと、チェーンの耐久性が急激に低下すると注意喚起している非金属チェーン商品もあります。


東海北陸道では「チェーン切れに注意」の看板が(乗りものニュース編集部撮影)。

 国内で関越トンネルの次に長い東海北陸道の飛騨トンネル(岐阜県、全長10710m)では、金属チェーンの使用禁止はなされていませんが、同トンネルを含む飛騨清見IC〜城端SA間(岐阜県〜富山県)は52.6kmものあいだ、大小のトンネルが連続します。トンネルを抜け、豪雪の屋外区間をわずかに挟み、再びトンネルへ――といった具合で、多くの区間が乾燥路になるため、トンネルの手前には「チェーン切れに注意」という標識と脱着所の案内が設置されています。

 このように、新しい道路ほど積雪地域を抜けるトンネルが多くなっており、積雪路と乾燥路が頻繁に切り替わる場面が増えているのです。そうしたルートでは冬用タイヤの方が向いているとされます。