ヨーロッパリーグ(EL)グループステージ第4節。チャンピオンズリーグが同じく残り2節を余した段で6チームが突破を決めたのに対し、ELで突破を決めたのはアタランタ(グループD)、レバークーゼン(グループH)の2チームに終わった。

 ELの場合、2位以内に入っても、CLのグループステージで3位に終わった"脱落組"とプレーオフを戦い、勝利を収めなければベスト16入りできない。ELのグループステージ2位チームにとって、CLのグループステージ3位チームはたいていの場合、格上に当たる。決勝トーナメント進出を確実にするためには、首位通過する必要がある。

 グループリーグ3連勝。ブックメーカー各社から大本命に推されているリバプールは、第4節のトゥールーズ戦に勝利すれば、首位通過を確実にするところだった。アンフィールドで行なわれた第3節の同一カードは、リバプールが5−1で制していた。

 リバプールの勝利は堅いものと思われた。日本代表キャプテン遠藤航も、その第3節で記念すべき欧州カップ戦初ゴールを挙げている。ユルゲン・クロップもその余勢に期待したのだろう。このトゥールーズとのリターンマッチでも遠藤をアンカーとして先発で起用した。

 遠藤はこれまでプレミアリーグでは全11試合中6試合に出場。1試合を除いて交代出場で計118分間プレーしている(ロスタイムを含まず)。一方、リーグカップには2戦ともスタメン出場。ELにもこのトゥールーズとの一戦で4試合連続の先発出場だった。

"カップ戦要員"には通常、チーム内の序列で下位にいる選手が回るものだ。しかし同じカップ戦でも国内大会(リーグカップ、FAカップ)とELでは種類が違う。ステータス、グレードでELは国内カップ戦に勝る。その両方に遠藤は、まさにカップ戦要員として割り当てられている。クロップ監督がELのグループステージで対戦する3チーム(LASK、ユニオン・サン・ジロワーズ、トゥールーズ)のレベルをプレミアリーグで戦う相手より下と見ているからに他ならない。

【優勝候補リバプールの難しさ】

 この日のトゥールーズ戦には事実、遠藤の他にGKカオイムヒン・ケレハー(アイルランド代表)、17歳のベン・ドーク(スコットランドU−21代表)、20歳のジャレル・クアンサ(イングランドU−21代表)、コスタス・ツィミカス(ギリシャ代表)など、プレミアリーグで出場機会が少ない選手が各所に配置されていた。

 だが、このクロップ監督の読みは少し甘かった。リバプールは2−3でトゥールーズにまさかの敗戦を喫することになった。

 遠藤にとっても芳しい試合ではなかった。前半34分、相手の足を踏みつけイエローカードをもらうと、チームはその直後に先制弾を浴びる。後半40分にも遠藤は危うくイエローを出されそうなタックルで、ベンチをひやりとさせた。退場のリスクを考慮したのか、クロップ監督は、前半終了とともに遠藤をベンチに下げた。そして後半、モハメド・サラー(エジプト代表)、ドミニク・ソボスライ(ハンガリー代表)、ディオゴ・ジョタ(ポルトガル代表)など主力級を次々投入するも、追いつくことができなかった。

 ELで難しいのは、他国のリーグで戦うチームの力の見極めだ。トゥールーズはフランスリーグで昨季13位だったチーム(カップ戦で優勝。今季の成績はこれまで14位)である。そのチームとのアウェー戦に、どれほどのメンバーを充てるのが適切か。

 フランスリーグのUEFAランキングは現在5位で、プレミアは1位だ。フランスリーグの現在14位チームを、プレミアリーグに置き換えるならどれほどか。2部の上位程度と判断すれば、国内のカップ戦向けのメンバーで十分なはずだ。判断が甘かったと言われればそれまでだが、妥当といえば妥当だ。

 CLの場合、相手は最低でも各国リーグの4位以内だ。優勝候補でもベストメンバーを送り込もうとする。リーグランキングが著しく低い、マイナー国のチームとの対戦を除けば、カップ戦要員主体では臨まないのだ。CLに出場しても、悪くても全体で8番手以内に推されるに違いないリバプールが、ELを大本命として戦う難しさをトゥールーズとのアウェー戦に見た気がする。

【堂安律はゴールでアピール】

 ただ、この姿勢がなければ、遠藤らの出場時間は限られるわけで、チームの層は厚くならない。チーム強化を考えたときリバプールにとってELは恰好の舞台になる。グループステージで4連勝を飾り、他のチームに先駆けてベスト16入りを決めることはできなかったリバプールだが、そこに特にこだわる必要はないわけだ。

 メンバー発表があったばかりのW杯アジア予選を想起せざるを得ない。リバプールにとってのELが、日本にとっての2次予選に似ているからだ。森保監督がリバプールの監督なら、遠藤は使わなかっただろう。

 日本人選手が所属するチームで勝利を収めたのは守田英正所属のスポルティング(2−1ラクフ・チェンストホバ/グループD)、堂安律所属のフライブルク(5−0バチュカ・トポラ/グループA)、三笘薫所属のブライトン(2−0アヤックス/グループB)、常本佳吾所属のセルベッテ(2−1シェリフ/グループG)で、敗れたのが町田浩樹所属のサン・ジロワーズ(0−3LASK/グループE)だった。


アヤックス戦にフル出場した三笘薫(ブライトン) photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 もっとも守田、常本はケガで出場していない。守田は日本代表に招集されているが、大丈夫なのか。森保監督は先のメンバー発表記者会見で「守田は試合には臨める状態にあるから選んだ」と答えたが、その2日後に行なわれたELにはベンチにさえ入っていない。これはどういうことなのか。

 ゴールを記録したのはフライブルクの堂安律だ。後半25分に交代で出場すると、追加タイムに、チュクビケ・アダム(オーストリア代表)のパスを受けると、ゴール左に冷静に蹴り込んだ。これまでの経緯を踏まえれば、堂安は相手の実力に合わせ、あえて先発を外れた恰好だが、それでもゴールを奪い、気を吐いた。代表のウイング争いで、伊東純也、久保建英ら候補選手に遅れを取っている堂安にとって、アピールとなる一撃となった。

 アヤックスとアウェー戦を戦ったブライトン左ウイング三笘薫は、いつになく地味なプレーに終始した。前日、ベンフィカと戦ったレアル・ソシエダの久保建英との比較で言えば、貪欲さに欠けた。

 たとえば前半18分、中央をドリブルで抜け、シュートチャンスが訪れたかに見えた瞬間があったが、三笘はそこで左にいたジョアン・ペドロ(ブラジル代表)にパスを送っている。右で構えたシモン・アディングラ(コートジボワール代表)には、パスを送れなくてゴメンとジェスチャーも送っている。人のよさを全開にプレーしてしまった。

 後半23分には、ジョアン・ペドロから縦パスを受け、相手GKと1対1になる絶好期を迎えるも、その左足キックを吹かしてしまう。いつものようにフルタイム出場を果たした三笘だったが、フルタイム出場に値するプレーぶりではなかった。採点するならば6.5には届かないデキだった。

 これは左サイドバックの候補選手にケガ人が続出していることも少なからず関係している。この日も、後半20分、久しぶりに途中出場したペルビス・エストゥピニャン(エクアドル代表)が、そのわずか12分後にベンチに退くアクシデントに見舞われた。左サイドで三笘にかかる守備面の負担が、攻撃の足を鈍らせている気がしてならない。この先がいささか心配になるアヤックス戦の三笘だった。