久保建英は右ウイングでの適性を証明 日本代表6人のCLでのプレーを採点評価
チャンピオンズリーグ(CL)グループステージ第4節。残り2節の消化を待たずに、バイエルン、レアル・マドリード、レアル・ソシエダ、インテル、マンチェスター・シティ、ライプツィヒの6チームがベスト16入りを決めた。
脱落が決まったのはウニオン・ベルリン、レッドスター・ベオグラード(ツルヴェナ・ズヴェズダ)、ヤングボーイズ、ザルツブルク、ベンフィカ、セルティック、アントワープの7チームとなる。
その一方で白黒がまったくついていない混戦のグループがグループBとグループFだ。
グループB=アーセナル(勝ち点9)、PSV(5)、ランス(5)、セビージャ(2)
グループF=ドルトムント(7)、パリ・サンジェルマン(6)、ミラン(5)、ニューカッスル(4)
日本代表選手が所属するチームから追ってみたい。久保建英所属のレアル・ソシエダはベンフィカと対戦。3−1で勝利を収めベスト16入りを決めた。レアル・ソシエダがCLでベスト16入りしたのは2003−04シーズン以来。当時、21歳の大学生ながらチームの中心だったシャビ・アロンソ(現レバークーゼン監督)は翌シーズン、リバプールに引き抜かれていった。はたして久保の場合はどうなるか。
チャンピオンズリーグ決勝トーナメント進出を決めたレアル・ソシエダの久保建英photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA
このベンフィカ戦で通常どおり右ウイングで先発した久保は、後半25分に交代で退くが、1点目と2点目の起点となるプレーを披露。後半は尻すぼみになったが、採点するならば6.5〜7で、合格ラインに達する上々のデキだった。日本代表では前回(チュニジア戦)1トップ下として出場したが、適性が右ウイングにあることを再確認させられることになったこの日のプレーぶりだった。
冨安健洋所属のアーセナルは、ホームでセビージャに2−0で完勝。決勝トーナメントが見えた状態にある。冨安は前節、アウェーで行なわれたセビージャ戦同様、左サイドバック(SB)として先発を飾った。といっても実際は、マイボールに転じると同時にポジションを一列上げ、かつ、内寄りで構える左SB兼守備的MFとしての役を担っていた。
【SBのあり方を追求するアーセナル】
SBをいかに有効に使うか。バスク出身のミケル・アルテタ監督も、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督と同様のコンセプトを掲げてCLに臨んでいる。つまりアーセナルの左SBは、相手にとって狙い目の場所になるわけだ。しかし、セビージャは冨安が上がった裏をまるで突けなかった。逆に右も含む両サイドをアーセナルに制圧されることになった。
アーセナルの左右のウイングプレーが強烈だったからである。ガブリエル・マルティネリ(左・ブラジル代表)とブカヨ・サカ(右・イングランド代表)にセビージャの両SBが押し込まれ、その結果、両ウイングが孤立。セビージャのサイド攻撃は、アーセナルのSBの背後を突くだけの威力に欠けた。
日本代表に置き換えれば、左ウイングは三笘薫で、右は伊東純也か久保建英となる。日本自慢のストロングポイントである。グアルディオラ並びにアルテタが追求するSBのあり方を、森保ジャパンも追求できる環境にあるわけだ。
今年3月に行なわれた親善試合のコロンビア戦では、左SBに起用されたバングーナガンデ佳史扶が、それに似たポジション取りを見せている。追求された形跡はある。だが、コロンビアに敗れたことが原因なのか、それっきりになっている。
マイボールに転じるや攻撃的3バックに変化するサッカーの追求は断念する一方で、5バックになりやすい守備的な3バックは健在だ。両ウイングに好選手がひしめいているというのに、そこをわざわざ削り、後ろを固めようとする。日本に適しているのはどちらか。正解はアーセナルと冨安の関係を見るまでもない。
見たいのは、両翼に三笘、伊東、久保らが張り、冨安がSB兼守備的MFとしてプレーする、4バックと3バックの攻撃的な可変型サッカーだ。W杯アジア2次予選にオールスターキャストで臨むなら(それ自体に賛同はできないが)、そのくらいの実験は当たり前のようにしてほしいものである。
セビージャ戦に話を戻せば、冨安は6.5ぐらい出せそうな、まずますの活躍をしたにもかかわらず、前半終了とともにオレクサンドル・ジンチェンコと交代でベンチに下がった。「左SBに負傷者が続出しているブライトンに移籍すれば」と、つい、ない物ねだりをしたくなる。
【最後に魅力を発揮した上田綺世】
前半でベンチに下がった日本人選手といえば、ラツィオの鎌田大地もそのひとりになる。ホーム、オリンピコで行なわれた対フェイエノールト戦。4−3−3の右インサイドハーフで先発した鎌田だったが、これと言った見せ場を作れずに終わった。マウリツィオ・サッリ監督率いるラツィオの水が合っていない印象を受ける。採点するならば5.5か。もう一列高い位置(4−2−3−1の1トップ下や0トップ)でプレーしたほうが、持ち味は発揮されるはずだ。
この試合にフェイエノールト所属の上田綺世は後半36分から出場した。リードされているにもかかわらず、押し詰まった時間からの出場になった理由は、スタメンを張る左利きのストライカー、サンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表)が優秀すぎるからだ。フェイエノールトはこの試合に0−1で敗れているが、内容ではラツィオに大きく勝っていた。
フェイエノールトはCL出場32チームの中でも、指折りの好チームと言って過言ではない。ヒメネスが1トップで構えることとそれは大きな関係がある。そこにボールがよく収まる。トップ周辺にボールが収まらず、結果は残しているものの、必ずしもいいサッカーができているとは言えない森保ジャパンとは趣を異にする。
交代出場の上田は、ヒメネスと2トップを張る恰好になった。しかし前節同様、なかなかボールに触れることができない。ゴール前で待つタイプのストライカーという特徴がその傾向に輪をかける。この日も、後半の追加タイムに入ってようやく披露したドリブルが2度目のボールタッチという有様だった。
3度目のボールタッチは6分という追加タイム表示を1分も過ぎた後半52分だった。右から、イラン代表の右ウイング、アリレザ・ジャハンバフシュがゴール前にロブ気味のクロスボールを蹴り上げると、上田はゴール前でフワリと身体を浮かせた。誰よりも上方に飛び上がると、打点の高いヘディングを、枠内めがけて叩きつけた。
シュートはGKイバン・プロベデル(元イタリアU−21代表)に防がれたが、このワンプレーに限れば100点満点を出せる、それはまさにスーパーヘッドだった。イバン・サモラーノ(元チリ代表)、ロベルト・アジャラ(元アルゼンチン代表)、はたまたティム・ケーヒル(元オーストラリア代表)らと比肩する、いかにも腰の軽そうなヘッドである。捨てがたい魅力を上田は最後の最後に発揮した。採点は6.5だ。
日本代表で上田とポジションを争うセルティックの古橋亨梧は不発に終わった。採点するならば5か。チームはアトレティコ相手に0−6で大敗。前田大然が前半23分、一発レッドで退場になったことと、それは大きな関係がある。
それまで前田は好調そうにプレーした。前半15分には右サイドを突破。対峙するマリオ・エルモソ(元スペイン代表)にエリア内で肩口をつかまれなければ、ビッグチャンスに発展していた可能性が高かった。判定はVARにまで及んだが、PKには至らず。その8分後、今度は前田自身が退場になってしまったわけだ。アドレナリンが出まくっていた。この日の前田はそんな感じだった。採点は5.5だが、日本代表のW杯2次アジア予選に期待を寄せたくなる23分間のプレーだった。