小川航基が三笘薫ら同世代のライバルに宣戦布告「日本代表FWのポジションは自分のもの」
11月5日にNECのホーム「ホッフェルトシュタディオン」で行なわれたエールディビジ第11節フォレンダム戦。今夏に横浜FCから移籍してきた26歳のFW小川航基が2得点の大活躍を見せた。NECの勝利こそならなかったが、サポーターたちは大いに盛り上がった。
試合終了直後、場内アナウンスでこの日のマンオブザマッチが小川とコールされると、大きな拍手が鳴り響いた。だが、その数分後に取材に応じた小川は、自身がマンオブザマッチに選出されたことを理解していなかった。
興奮する周囲とは裏腹に、本人は「あ、そうなんですか。へえ」と言うだけだった。
今季からオランダでプレーする26歳の小川航基 photo by Getty Images
小川にとって8月18日以来、2カ月半ぶりの得点でもあった。今季よりNECに加入した小川は開幕2戦連続で得点したが、その後第3節から第9節まで出場したものの無得点。ついに第10節ではメンバーを外れた。
「復帰したのは、ほんとつい最近。コンディションに不安があったなか、こういう時こそ自分がどういう真価を見せられるのか、それを課題としてゲームに臨んだ。そのなかで結果が出たっていうのは、評価できるひとつの試合だったんじゃないかなと思います」
小川の説明によれば、第10節の欠場はもともと抱えている股関節痛の影響とのこと。彼いわく「そんなに長い時間ではないけど」練習を数日休み、このフォレンダム戦前に復帰した。
試合前々日は60〜70パーセントのコンディション。前日でも90パーセントくらいの戻り具合だったそう。そのため練習での紅白戦にも参加せず、いわばぶっつけで本番に臨んだという。
前半6分、NECは相手GKのミスを誘い、小川のゴールで先制。その後、フォレンダムに逆転されるも、後半アディショナルタイムにNECが2点、フォレンダムが1点を決めて3-3で決着した。
【同世代は三笘薫・堂安律・前田大然・上田綺世...】小川が試合の最後に決めた2点目はアディショナルタイム8分、右CKにヘディングで飛び込んだものだ。心身ともに疲れた時間帯のなか、屈強なディフェンダーたちとのコンタクトをモノともしないジャンプと強烈なヘディングでのゴール。このパワフルな一撃を、小川は丁寧に振り返る。
「最後、キーパーが上がってきた時、ちょっと俺に(マークが)甘かったんですよ。だからしっかりとボールを見極められた。マークがついていると、ボールの動きより目の前のマークを外す動きに集中しちゃうんですけど、最後はしっかりと自分のステップを踏んで落下地点に入ったらボールが来た」
この得点は、ケガの功名ではないが、コンディションに不安を抱えていたことから生まれた。
「無駄に競らないというか。競ってジャンプばっかりしていると、ふくらはぎがつってきちゃうこともあるので。最後にジャンプできたのは、そういうところだった」
不安要素があるからこそ、大事にしたものがあったともいう。
「コンディション的にはなかなか難しかったです。だけど、そのなかでもできたというのが、人として強くなれたところでもあった。不安要素があって、なかなかうまくいかない選手はこっち(心)が弱かったりすると思うので、(結果を)見せられたのはよかった」
そう言いながら、右の拳で左胸を叩いた。
オランダリーグで現在4得点。そうなると、気になるのは日本代表への意識だ。
世代別代表でともに戦った仲間である三笘薫や堂安律、前田大然、上田綺世らは、現在の日本代表の軸になりつつある。26歳になった小川は今、日本代表についてどう捉えているのか。
「日本代表とはどの距離感にあるのか、僕自身はちょっとわかりません。でも、見てはくれているし、結果を出せば必ず呼んでくれると確信している。そこのポジション(日本代表のFW)は自分だと思っているので。
ヨーロッパに来てやるということは、そこ(日本代表)を目指しているところでもある。あとはチョイスをしてもらえるような活躍ぶりを見せたい。今まで呼ばれている選手は貯金(結果)があるから、俺はそれ以上に結果を出していかないと呼ばれないと思うので」
さらっと口にしたが、「そこのポジションは自分だと思っているので」は、FWのメンバー争いへの宣戦布告である。
【ワールドカップ予選メンバーにいつ呼ばれても...】今まで日本代表に選ばれてきた選手たちと差があることは、本人も重々理解している。また、欧州組として俎上に載った、という自覚も持っている。
「今まで(日本代表に)呼ばれるような活躍をしてこなかったですが、今はしっかりチョイスできるところまで乗っかってきていると思うので、(日本代表入りを)掴めるかどうかは自分次第。そこは小さい頃から目指しているところなので、しっかりと選ばれるように。今は自分の力をつけるのが一番。頑張りたいです」
森保一監督は、招集メンバーより大人数の「いわゆるラージグループ」の総力戦でワールドカップ予選を戦う意向を示している。
それは、小川のような選手にもチャンスがあると受け取ることができる。一方でヨーロッパ、アジア、日本と移動が増えれば、疲労や負傷のリスクも高まる。だが、それも覚悟のうえ。
「所属クラブと一緒で、『チーム日本』というクラブとしてのチーム戦。それが個人の結果につながってくると思います。選手は準備し続けることをマストでやらないといけない。いつ、どんな時でも呼ばれたら行けるように、準備しておかないといけない」
11月8日に発表された日本代表メンバーに「小川航基」の名前はなかった。だが、これから長きにわたるワールドカップ予選や、その先の大舞台で、いつ名前が呼ばれてもいいように──。小川は着々と、力を蓄えていく。