埼玉と千葉のあいだに「三郷流山橋有料道路」が開通しますが、使えるETCカードが1社発行の1種類のみであることに落胆の声が広がりました。ここに導入されるのは“新型ETC”のひとつ。今後どう改善されていくのでしょうか。

三郷流山橋、ETCは「ダイナースクラブカード」だけ

 埼玉県が三郷市と千葉県流山市の間で整備を進めていた「三郷流山橋有料道路」が、2023年11月26日(日)15時に開通します。2.5km南で両市街を結ぶ「流山橋」の慢性的な渋滞の緩和効果に期待がかかっていますが、一方でSNSでは、落胆の声も上がりました。


11月開通の三郷流山橋有料道路(画像:埼玉県道路公社)。

「導入されるワンストップ型ETCがダイナースクラブカードしか使えないのは残念です」――道路を視察した岩井やすのり千葉県議会議員は、自身のX(旧Twitter)で率直にこう記しています。

 三郷流山橋有料道路では現金のほか、キャッシュレス決済のひとつとしてETCも利用可能ですが、対応するETCカードが「ダイナースクラブカード」のみ、しかも「三井住友トラストクラブ株式会社が発行するもの」という条件付きです。

「使える人はごく僅かじゃないか」「流石にダイナースは持ってない」「えええ、そんなの聞いてないよー」「渋滞緩和を目的として作った橋なのに、わざわざ渋滞する要因を作った?」といった声がSNSでは集まりました。

 三郷流山橋有料道路で導入するのは、一般的な高速道路のETCではなく、「ETCGO」と呼ばれる新たなサービスです。首都高グループと日立製作所、アマノが共同で事業化したもので、三郷流山橋が最初の供用事例になります。

 首都高速道路によると、三井住友トラストクラブ以外の発行会社とは交渉中だそうで、「最終的にはETCカードを発行している11社全てのカードを使えるようします」とのこと。ただ、いつまでにどれくらい対応カードを増やすかという具体的なメドは立っていないといいます。

似たような「ETCX」というサービスも 何が違うの?

 ETCGOは、先行して事業化している「ETCX」とともに、ETCを高速道路の料金決済以外でも導入すべく国が推進する「ETC多目的利用サービス」の検討を経て生まれたサービスです。

 ETCGO、ETCXともスマートICと同じく一旦停止が必要ですが、その分、現場の機器構成が大幅にスリム化され、導入コストを低減できることから、コスト面で障壁のあった地方有料道路のETC化にも資すると期待されています。決済時のセキュリティ処理を高速道路会社のサーバーで行うため「ネットワーク型ETC」とも呼ばれており、ETCXはNEXCO中日本、ETCGOは首都高速道路がその役割を担っています。

 2021年4月にサービスを開始したETCXは、すでに伊豆中央道や箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク箱根)など全国6路線で導入済みです。このほか、東名豊橋PAの事前予約駐車場や、市中のガソリンスタンドなどでも導入されており、ETCで料金決済が可能になっています。

 ただ、両サービスとも事業者がそれぞれ、各カード会社と利用契約を結んでいく必要があることから、三郷流山橋有料道路でのETCGO利用開始にあたっては三井住友トラストクラブのみということになったのです。ETCXも順次、対応カードを拡大してきましたが、いまだに利用不可のカードもあります。

 また、ETCXは事前に利用登録が必要ですが、ETCGOは利用登録が不要であることがメリットとされています。対応カードが増えれば、利用者は事前登録をすることなく、いつものカードでそのまま通過することが可能になります。


埼玉県道路公社が管理する皆野寄居有料道路は交通系ICカードが使える。三郷流山橋有料道路も同様になる(乗りものニュース編集部撮影)。

 なお、三郷流山橋有料道路では、埼玉県道路公社が別の路線でも導入している「交通系ICカード」や「WAON」の決済も可能です。料金所で係員が提示する読取り器にカードをピッとかざす形ですが、ETCGOも一旦停止のうえ、決済処理に3秒程度かかるというので、所要時間としてはそこまで大差ない可能性もあります。

 ちなみに首都高速道路へETCGOの今後の展開を聞いたところ、「地方有料道路と駐車場」をメインにするとのことで、ETCXのように物販への拡大は予定していないそうです。もしかしたら、取扱いシーンでもETCXとの差別化が生じてくるかもしれません。