京阪神と鳥取を結ぶ特急「スーパーはくと」の車両老朽化が顕著になっています。現在は全便が京都駅発着となっていますが、運行形態も変化するかもしれません。

「特急車両の更新」はJR西日本との調整が必須

 京都・大阪から第三セクター「智頭急行」(上郡〜智頭)を経由して鳥取・倉吉までむすぶ特急「スーパーはくと」は、山陰方面への輸送で重要な役割を担っています。智頭急行は2023年10月10日(火)、特急料金の改定を発表しました。改定の理由として、特急車両の更新に備える必要があることなどをあげています。


京阪神地区と鳥取方面を結ぶ特急「スーパーはくと」(画像:写真AC)。

 現行の特急車両「HOT7000系」は、1994年に登場。最高速度130km/hでの走行が可能な振り子(車体傾斜)式車両で、内装もリニューアルされています。ただ、導入30年から経過しており、そろそろ後継車両の登場が気になる時期です。
 
 智頭急行は「現行の特急車両は天井から水漏れが発生するなど、車体の老朽化が進んでいます。傷んだ箇所の修繕は順次行っていますが、車齢が40年に達する前に、車両更新を検討していく必要があります」(運輸部)と話します。
 
 2019年に策定された智頭急行の中期経営計画には、特急の車両更新の検討が盛り込まれましたが、コロナ禍により、いったん仕切り直しとなったそうです。

 同社は「現時点では、まだ車両更新について具体的な検討を行っている段階ではありません」としたうえで、「単独で車両を開発するのは難しい状況です。新型特急車両を導入する際は、JR西日本との調整は必須になります」(同)と話します。
 
 現行車両の「HOT7000系」はJR西日本管内に直通するだけでなく、車両の保守・管理まで同社に委託しています。新型特急車両を導入する場合、最高速度130km/hで走行できることや、京阪神地区のホーム可動柵への対応など、様々な面でJR西日本の仕様に合わせる必要が出てきます。

 沿線自治体や商工会などで構成する「JR・智頭線中部地区利用促進協議会」は、「環境に配慮したハイブリッド車両などへの更新」を求めていますが、現行車両がどのような形で更新されるか、明らかになるのはしばらく先になりそうです。ちなみに、現在運行されているJR東海のハイブリッド特急「HC85系」の設計最高速度は120km/hとなっています。

そもそも「スーパーはくと」自体どうなる?運行区間を変更?

 車両更新が注目される「スーパーはくと」ですが、運行形態も変化する可能性があります。現在「スーパーはくと」は6往復を運行。コロナ禍前は7往復体制でしたが、1往復(6号と9号)が多客期のみの臨時列車に変更されています。
 
 そうした状況の中、JR西日本では「スーパーはくと」の運行区間を短縮したうえで本数を増やすことを検討しているようです。

 2023年7月に開催された「JR線・智頭線中部地区利用促進協議会」の総会では、智頭急行の西尾浩一社長が「現在は全便が京都駅発着となっているが、例えば大阪まで短縮することで往復数を増やすことなどを、JR内部で検討中と聞いている」と発言したことが、総会の議事録から明らかになっています。
 
 2023年12月には、2024年3月ダイヤ改正の概要が発表される見込みですが、そこに「スーパーはくと」の運行区間の変更が盛り込まれるのか気になるところです。