家づくりでは、広めのLDKと5、6畳の個室が3、4部屋ある間取りが一般的。しかしこれだと、コンパクトな敷地では窮屈で使い勝手の悪い間取りになりがちです。1年ほど前にハウスメーカーで家を建てた日刊住まいライターは、あえて扉のない間取りを採用。おかげで、延床面積31.5坪とコンパクトな家なのに広さを感じることができ、満足しています。40万円のコストダウンにつながり、その予算を回して念願の無垢の木床も実現!

扉をなくし、小さくても広く感じられる家を建てたい

筆者は現在、妻と2人暮らし。1年ほど前に総2階、延床面積31.5坪の注文住宅を建てました。

最近の住宅は、土地や建築費の値上がりにより、なるべくコスパよくコンパクトに建てることが多くなっているようです。わが家も予算や建ぺい率などの関係で、これ以上広くするのは難しい状況でした。

そこで、小さな家でも広く感じるようにするために、必要のない扉(建具)をなくすという方法を取りました。そうして実現したのが、上の間取り図(1階部分)の家です。

こうすることで、坪数的には広くなくても、視線が抜けることで圧迫感がなくなり、広く感じることができるはず。その思惑どおり、実際に住んでみると、開放感がちゃんとあります。

 

1階のLDKと玄関、洗面所の間も扉なしに

こちらがわが家の1階のLDKです。おそらくほとんどの人は、玄関とLDKをつなぐ扉と、洗面所には扉をつけると思います。しかし、筆者の家では、脱衣所(写真正面)とトイレ以外は、扉をつけませんでした。

実際にハウスメーカーの提案時点では、ついていました。しかし、少しでも開放感を出したい。そこで、どうせあけっ放しにするだろうと感じた扉は、片っ端からなくすことにしたのです。

 

上は玄関からLDK(写真右手)を見たところです。階段下を利用した土間収納にもLDKとの入り口にも扉はつけていません。

仮に玄関とLDKの間、さらに土間収納に扉があると、玄関に入ったときに圧迫感が出ていたと思います。しかし、扉がないことで、LDKに視線が抜けます。この効果は絶大! 決して広いとは言えない玄関でも、狭く感じることはありません。

また、このように扉をなくすと、各場所が一室空間のようにつながっている状態に。まるで全館空調をしているかのように、家じゅうの温度差が少なく、玄関だけ寒い暑いということもありません。

2階も書斎以外は扉なし!将来の子ども部屋も活用できた

こちらが2階の間取りです。

現状夫婦ふたり暮らしで、個室はあまり必要ありません。そこで思いきって、子ども部屋は将来区切れるように、壁部を入れる予定の場所に補強だけ入れて、建具を一切なくしました。

さらに隣の寝室も、間仕切り壁があるだけ。ドアがないので空間としては、将来の子ども部屋とつながっています。ですから、仕切られた空間は筆者の書斎のみです。

 

こちらが将来の子ども部屋の写真です。

このようにすることで、今は自分たちの生活に合わせた使い方をすることができています。ちなみに今は、セカンドリビングとして使用しています。

このセカンドリビングが、とても居心地がいいです。わが家でいちばん日当たりのいい場所なので、格好の昼寝スペースになっています。

一方で、もしも最初から区切っていたとしたら、5畳の部屋が2つでき、広さ的にセカンドリビングとしての使用はできていなかったと思います。おそらく片方は妻の部屋になり、もう片方は納戸になっていたでしょう。

そして子どもの個室が必要になったときは、妻の部屋がなくなり、納戸も片づけが必要になります。それならば1つの大きな部屋にして、そのとき自分たちに必要な使い方をする方がよいと思います。

 

扉をなくすことで約40万円のコストダウンができた!

当たり前ですが、扉をつけるのにはお金がかかります。ハウスメーカーによって金額は変わりますが、扉1枚でも5万円はするので、数枚の扉をなくせば簡単に十数万円のコストダウンができます。

実際にわが家の場合、約40万円のコストダウンに成功。このコストダウン分で、床に無垢材を使用することができました。「入れたいオプションがあるけど予算が…」という方には、扉をなくすというのもありかもしれません。

デメリットは音。ただ家族の気配と思えば気にならない

扉をなくすことで開放感はでますが、しかし空間がつながることで、家じゅうに音が伝わってしまうというデメリットもあります。

寝室にいても、1階のテレビの音が聞こえます。筆者は前に住んでいた賃貸のときも、家じゅうの扉をあけっ放しにして生活していたので、あまりそこまで気になりませんが、人によっては気になると思います。

ただし、これは裏を返せば、家のどこにいても、家族の気配を感じられると考えることもできます。

開放感を優先して扉のない間取りを採用し、満足している筆者。この結果は、わが家のライフスタイルと相性がよかったという点も影響しているでしょう。ですから、「扉がないのが正解」などと言うつもりはまったくありません。必要なプライバシーとのバランスを考えながら、このアイデアを参考にしていただけたらと思います。