ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第62回は「犬と高野山へおでかけしたこと」について教えてくれました。

犬と過ごしたある“秋”の出来事

9月19日、三連休を終えた翌日。目を覚ましてカーテンを開けたら、残暑の陽射しではあるが、通る風は秋の顔をしていて、空は高く感じる。

「犬と遠くに行きたい、でも暑いから危険」そんな思いを募らせて9月も半分を過ぎたが、もしや今日が吉日? おでかけ日和では!

出番を待っていた新品のスニーカーを卸しちゃおうか、なんて浮かれる。犬、ふたりで高野山に行きませんか。

スニーカーを自室から引っ張り出してきたら犬が調査を始める。念入りに、においを嗅がれるのだ。でも新品を卸すのは私だけではないよ、あなたにもあるよ。新しい食器台を差し上げます。

犬が9歳になって、今まで以上に健康面を気に掛けるようになった。頭を下げないでお水を飲んだり、ご飯を食べれたら楽なのかな。もともとご飯は台に乗せていたけれど、お水は床に置いていたので購入に至った。

そうしてネットショッピングで注文したのが昨日届いてその日のうちに組み立てた。

昨晩、私が説明書を読むかたわらで、やはり犬は興味津々といった様子で嗅ぎにきた。やはりにおいは犬にとって大事な情報なのだろう。

新しい食器台に朝ごはんをよそって差し出す。「使える? まだ慣れないかな?」なんて心配したのも束の間、はぐっはぐっと食べ始める。順応力が高い子です。

これまでお水を入れていた器は、犬の誕生日にプレゼントに贈ったもの。

名前と誕生日がそれぞれ片面に入っていて、愛着があるし絶対捨てられないし捨てたくないし。

今まで通りお水を入れて置いておこうかな? 猫は家のなかに給水所が何カ所かあるとよく飲んで良いらしいが、柴犬ってどうだろう? 悩みながら器を撮っていたらフワァっと犬が写り込んできた。そのまま水面を揺らして犬の舌がお水を汲んだ。じゃあやっぱりもうしばらく置いておこうかな。

●たどり着いた「高野山」

ようやっと出発をして、標高1000メートルを車で上って高野山に到着する。

高野山・奥の院の駐車場に設置されている温度計で気温26度という表示を見て驚いた。

山上では5度くらい気温が低い。空気は涼しくて、陽射しはあたたかくて気持ちいい。わたしたちは奥の院の参詣道を歩く、歩く、歩く。

犬の後ろ姿を追っていたら、高野山の案内犬と呼ばれていた“ゴン”という犬がいたのを思い出した。町石道という高野山まで続く道があるのだが、ゴンは町石道を登っていく人の先頭に立って導いていたそう。興味がある方は調べてみてね。

現代社会のなかで疲れていない人のほうが少ないと思うが、私もそのうちの一人で最近ぐったりしていた。やっぱり心を遠くに連れていくのは大事なんだなぁ。

このとき奥の院で過ごしたのは1時間にも満たないのだけれど、心身ともに息を吹き返したような気持ちになった。

どんなにぺしゃんこにされても、犬を美しく感じる心が残っている限りは再起できる。

また紅葉の季節に高野山を訪れようか。さぁ、家に帰ろう。