作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセイ。里芋が旬の今、おいしい食べ方についてつづってくれました。

第107回「秋だ、芋炊きだ!」

秋の夜は、気持ち良いですねえ。月も美しくて、家の中で過ごすのがもったいない。

私の住む愛媛では、里芋を使った「芋炊き」が毎年恒例の秋のイベントだ。夜、河川敷にずらりとゴザを敷き、大きな鍋とコンロを並べてぐつぐつと芋を炊く。町をあげての芋炊き会場ができあがり、川に沿って20卓以上が設置される。結婚式会場さながら、家族連れや友人グループが連日鍋を囲む。

里芋、鶏肉、ゴボウ、ニンジン、焼き豆腐、糸こんにゃく、エノキ、最後はうどんも入る。鶏と醤油ベースのあっさりした出汁がおいしくていくらでも食べられる! 月を眺めながら、おしゃべりと共に煮こまれていく芋。最後のうどんの頃にはおなかもぱんぱん。蚊取り線香も炊きながらの、キャンプ気分の開放的な年中行事だ。

芋炊きをしたら、秋が来たなあという気分になる。

●里芋は採れたてが一番

この里芋が私達の地元の特産品で、私も父も作っている。父は全国に向けて出荷しているし、私が友人たちと作っている里芋は、出荷はしないけど地元のカフェでときどき対面販売をさせてもらったり、インターネット販売も行っている(チガヤ農作物店)。

というわけで家には傷の入ってしまった里芋がどっさりあるので、それを使って家で芋炊きをすることも多い。里芋はまさに掘りたての今が一番おいしいのでぜひみなさんも、近くでおいしい里芋を見つけて芋炊きをしてみてね。

里芋は、もし土つきがあればぜひ土つきを買ってください。洗ったものは数日で傷んでしまうのですが、土つきだと一ヶ月はもちます。冷蔵庫ではなく新聞でくるんで常温で保存しましょう。

●里芋はシンプルに食べても美味

皮をむくのが面倒という方も多いですが、洗っているものだったら、頭に十文字に切り込みを入れて、そのまま蒸します。下から指でつまむとぴゅいっと中身が飛び出てきますよ。もしくは指でするっと皮がむけます。

そうしたら、まずはそのまま塩や味噌をつけて食べましょう。掘りたての新鮮な里芋は、くさみもないので塩とオリーブオイルだけでいけちゃう。

あとは、蒸したあと、1センチの厚さに切って、ニンニクと一緒に表面をカリッと焼いて食べるのもおいしい! これは近所のおばちゃんに教えてもらいました。

あと、傷が入ってしまった里芋はよくコロッケにする。クリームコロッケのようにとろとろで、農業仲間や姪っ子たちも大好きなメニューです。

●芋炊きのつくり方

さて、最後は芋炊きの紹介です。

私は出汁はいりこでとっておりますが、芋炊き会場では、鶏ガラを数時間煮詰めて出汁をとっているようです。出汁醤油でもいいと思います。醤油、みりん、砂糖を入れて、好みの味に調整します。そこに、先程の要領で軽く蒸した里芋を入れ沸騰させ、鶏肉、にんじん、ごぼう(大きめのささがき)、シメジ、焼き豆腐、ネギ、糸こんにゃくなどを入れます。シャキシャキ感が好きな人は、モヤシもいいですよ。芋は煮込むと溶けやすいので大きめに切りましょう。具材が減ってきたら、シメのうどんをどうぞ。

芋炊きは、夜空を眺めながら外でするのが格別です。蚊取り線香をお忘れなくね。

秋の夜長を、里芋と一緒にお楽しみください!

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