昨シーズンの2月のニューヨーク・ファッションウィーク(NYFW)では、プラスサイズのモデルの数とサイズインクルーシブなランウェイショーの数が激減、前者は24%近くも減少しており、当時、NYFWがそれ以前のシーズンに行ってきた多様性への進歩が後退したとの見方が強かった。

9月のNYFWで改善されているかどうかを語るには時期尚早だが、サイズインクルーシブの分野のデザイナーらはGlossyに対し、多様性に欠けるランウェイの一因となるキャスティングやモデルの起用について、いまも多くの障壁や課題があると語っている。

圧倒的に数が少ないプラスサイズのモデル



デザイナーであり、自身の名を冠したブランドの創業者であるギタ・オムリ氏は、プラスサイズのファッションを専門としている。9月8日に行われたオムリ氏のショーでは、標準サイズのモデルと半々となるように、12人のプラスサイズのモデルをブッキングした。通常、プラスサイズのモデルはひとりもいないか、せいぜい2人程度である平均的なNYFWのショーにくらべてはるかに多い人数だ。オムリ氏によれば、多くのプラスサイズのルックを紹介するショーを行う上で、もっとも大変なことのひとつがキャスティングだという。

「ショーが開催される数日前にキャスティングを行うのが、ニューヨーク・ファッションウィークの文化となっている」とオムリ氏は述べた。「大抵、ファッションウィークが始まる数日前までモデルはニューヨークにいない。だが、大きな体型にきちんとフィットさせるには時間が必要だ。ランウェイに女の子たちを送り出して、服のルックに納得いかないことがあったが、それはその服が体型に似合わないからではなく、時間が足りなくて私が適切にフィットさせられなかったからだ」。

オムリ氏は、今シーズンの初めにキャスティングを試みたが、評判のよいエージェンシーに所属するプラスサイズのプロフェッショナルなモデルの数が圧倒的に少ないため、モデルを見つけるのに苦労したと語った。ある試算によると、ファッションブランドが起用できる人材プールのうち、プラスサイズのモデルは全体の5%程度だという。典型的なランウェイモデルのサイズは0か2だが、平均的な米国人女性のサイズは16だ。米国におけるプラスサイズファッションは、3000億ドル(約44.2兆円)近い産業に成長している。

大手エージェンシーに所属するモデルによって、獲得できるモデルは限られている。インクルーシブなサイズをフィーチャーしたショーではエージェンシーと協働することが信じられないほど難しい場合がある。匿名であることを条件にそう述べたのは、今シーズンにサイズインクルーシブのショーを行ったデザイナーだ。このデザイナーは、あるエージェンシーがショーに間に合うように多くのプラスサイズのモデルを用意すると約束したのに、最後の最後になって手を引いたという出来事を挙げた。

プロではないモデルを起用するブランドも



アンダーウェアブランド、アドアミー(Adore Me)のCEO、モーガン・ハーマンド=ウェイチ氏も、プラスサイズのプロフェッショナルモデルの人材プールが限られている点に同意している。ブランドがプラスサイズのモデルを起用しないため、エージェンシーもプラスサイズのモデルを採用せず、ショーから除外される状況が助長されるという悪循環になっているという。

だが、ハーマンド=ウェイチ氏いわく、そうした状況から、ブランドはエージェンシーに依存せず、プロではないモデルを求めるようになっている。9月9日のアドアミーのショーでは、イスクラ・ローレンス氏のようなプロのモデルと、アマンダ・ヘルナンデス氏といったプロではないモデルをあわせて登場させた。ヘルナンデス氏は看護師であり、ブランドのファンでもある。モデルとしての経歴がないにもかかわらず、ランウェイを歩くために採用されたのだ。

「アマンダは、私たちの幅広いコミュニティのうちのひとりだ。彼女が登場した時、観客から非常に力強い反応があった。古いルールに固執し、マニュアル通りに物事を行わなくてはならないという思考は間違っている」と、ハーマンド=ウェイチ氏は言う。

アドアミーのランウェイには、オープニングモデルとしてショーを支えたローレンス氏を含めて、半数以上がプラスサイズかカーブサイズのモデルだった。

「99%が細いモデルで、プラスサイズがひとりだけというブランドをたまに見かける」とハーマンド=ウェイチ氏。「確かにひとりもいないよりはマシだが、そうしたやり方が信頼できるものだとも思えない」。

[原文:NYFW designers say casting for size inclusivity remains challenging]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)