子どもの独立など、ライフスタイルの変化によって70代・80代でひとり暮らしをする人が増えている昨今。ここでは、自分らしい“おひとりさま”生活を満喫している、5人の「食事の工夫」をご紹介します。

ひとりでもいいお皿でおいしいものを

団地でひとり暮らしをしている88歳の多良美智子さん。
「高校生のときからずっとお料理をしてきました。65歳のときには調理師学校に通って免許を取得。あらためて料理の基礎が学べたのもよかったですね。今も食事が生きる原動力で、栄養のバランスにも気を使っています」

【写真】88歳、楽しい「晩酌」の様子

「ひとりだから、もうなんだっていいやとは思えない」と多良さんは言います。
「おいしいものを自分でつくって食べる、それが元気の源なんです。でも、料理はごく簡単なものばかり。ちょっといいお皿を使ったり、箸置きを添えるだけでも楽しくいただけます。食べる前には『いただきます』とひと言添えるのも忘れません」

●65歳で調理師免許を取得。台所時間が楽しい

「栄養学の授業は大変だったけれど、今の食生活にも大いに役立っています。体にいい食
材を積極的に取り入れたり、新しい調理法を試すのも大好きです」
最近はご飯の代わりにオートミールを食べたりすることもあるそう。

●朝は軽め。昼はしっかり。夜は晩酌を楽しむ

朝食はスムージーとリンゴとゆで卵と決めています。
「夫が病に倒れたときにつくり始めたスムージーはコマツナやリンゴの皮、プロテインパウダーを入れて栄養もばっちり」
昼食はしっかり食べ、夕飯は大好きなお酒と小さなおつまみで晩酌を。

記事の初出は2023年7月。内容は執筆時の状況です。

 

月1万円の食費でも豊かにおいしく暮らすコツ

食費は月1万円という、70代のひとり暮らしブロガー・紫苑さん。その金額でやりくりするための工夫とは?

●100円のサバ缶でつくる「サバ飯」は料亭の味

米1合とサバ缶(水煮)を一緒に炊くだけのお手軽炊き込みご飯。サバは缶汁ごと入れるので水はその分加減を。
「サバ缶だけでいい味が出ます。ものたりなければ、しょうゆ、みりんで味をととのえます」

●100円の鶏ガラでスープをつくり、いろいろな料理に

100円の鶏ガラを長ネギの青い部分と一緒に2〜3時間煮てスープに。
「市販の鶏ガラスープの素は買いません。うま味たっぷりで、クリームシチューやカレーなど使い勝手抜群」

記事の初出は2022年7月。内容は執筆時の状況です。

おひとりさまの手間いらずな「ケチ」ご飯

美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さんは、高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。ケチカロジー」という言葉を生み出し発信してきた小笠原さんの、お金をかけない「食事の工夫」について教えてもらいました。

●外食はささやかなグルメ、おうち食は栄養優先に

私は、そもそも料理下手であり、おいしいものは人につくってもらうものだと思っています。しかしケチの身に外食は危険。それでも「駅そば」やスーパーなどの「イートインコーナー」では、案外ケチをねぎらう安らぎのスペースがあるものです。そこを見つけて入るのが、ケチ外食のテクニックですね。

月に一、二度私はささやかなグルメを楽しみに生きていますので、「おうち食」は美味の追求ではなく栄養優先です。翌日の献立を考えメモしておくのが日課です。献立といっても、料理とはいえない食事なので厳密には不適切用語なので、食品に敬意を表して御の字をつけたとしても「御餌」でしょうか(笑)。

たとえばある日は、新タマネギの挽肉あえ。翌日は豚小間としらたき煮に、酢とゴマ油がけのお豆腐。つづくはサバ缶とレタスあえ…など。三大栄養素に配慮しつつ最低限の食材と調理法に徹します。

最低限とは、買いに行かずに当日冷蔵庫に入っているものをアレンジすること。ほとんど調味料は入れないで、素地の味を探求することです。

記事の初出は2023年5月。内容は執筆時の状況です。

70代、「3食手づくり」は手放した

高齢者向けのサービスつき住宅(分譲マンション)にお住いの70代の真藤眞榮さん。現在、家事は手の届く範囲で丁寧にしつつ、最小限にとどめているそうで、食事づくりにも変化が。

●3食きっちりつくるのやめました

「3食きっちりつくらなきゃ、と自分に課すのはやめました」と話す真藤さん。マンションの食堂を利用したり、自作のつくりおき副菜ですませることも。
「最近は節約も兼ねて、自炊の割合を増やしています」

●テイクアウトもお皿に移して楽しむ

入居時はコロナ初期で、食堂の料理はパックづめをテイクアウトする形式。
「そんなときも、お気に入りのお皿に移し替えて、目からも楽しんで食べていました」

記事の初出は2023年8月。内容は執筆時の状況です。

80歳の現役料理家、元気を支える食習慣

福岡でキッチンスタジオをきり盛りしながら、ひとり暮らしをしている80代の村上祥子さん。年齢を重ねても全国を飛び回れるほど元気なのは、バランスのいい食事のおかげです。そこで、村上祥子さんが実践する、最小限の手間でかなえる食事づくりのルーティンをうかがいました。

●1食ごとにタンパク質と野菜をまとめるとラク

タンパク質:野菜が1:2になるように心がけているという村上さん。
「好きなタンパク質と野菜を組み合わせた1食分の素材をまとめて冷凍保存し、メイン料理に使うとラクです」

●すぐに食べられる常備菜を副菜に

ご飯、汁もの、タンパク質と野菜のメイン料理が基本の1食ですが、ものたりないときに便利なのが常備菜。
「酢キャベツや酢タマネギなどは、健康効果もあって箸休めにぴったり」

記事の初出は2022年10月。内容は執筆時の状況です。