最近ではテレビなどで保護猫を扱っている番組も多く、その活動が気になっているという方も多いのではないでしょうか。ライターの高木沙織さんも、現在保護猫だった小虎くんと暮らしています。ボランティアで地域猫の管理者としても活動する高木さんに、今回、自身の経験をもとにした「保護猫」との出合いや暮らし方について教えてもらいました。

賃貸住宅の寝室・床下から保護された猫と暮らすことに

「猫と一緒に暮らしたい」と思ったときに、まずはどうやって猫と出合ったらいいのかと考える方も多いのでは? パッと思い浮かぶのは、ペットショップやブリーダーさん、もしくは知人自宅で生まれた子猫を譲り受けるなどがあるかと思いますが、もう1つ、「保護猫」を迎えるという方法もあります。

●愛猫は元保護猫だった

保護猫というのは、飼い主がいない、家がない、劣悪な環境で暮らしているなど、さまざまな理由から自治体や動物保護施設、個人によってレスキューされた猫のこと。

レスキューされた猫は、食事や健康管理がされるほか、いつか出合う里親(飼い主)のもとで暮らしやすいように人慣れの練習をして過ごすそうです。筆者のまわりにも、保護猫譲渡会に足を運んで家族に迎え入れたという知人がなんと4人もいます。

また、猫との出合いを求めていないときに出合ってしまうというケースもあるかもしれません。今、わが家で暮らす愛猫の小虎(ことら/6歳・男の子)がまさにそうで、当時暮らしていた賃貸住宅の寝室・床下から保護された猫なのです。

●床下で猫を発見!どうすればいいのか…

2017年4月。早朝4時、寝室の床下から「ミーミー」という赤ちゃん猫の鳴き声が聞こえてきました。じつは以前にも、同じ時期・同じ場所で赤ちゃん猫の鳴き声を耳にしていた筆者。はじめは、聞き違いだろう、そのうち母猫が戻ってきて、どこかに連れて行くだろうとも思っていました…。

様子をみること3日。まだ猫の鳴き声が聞こえます。そこで、春先とはいえ、暑い日だったので心配になり、管理人さんに連絡をすると、そこにはまだ目も開かない茶トラの赤ちゃん猫が1匹ポツンと取り残されていました。

子育て中の母猫は、安全な場所を求めて赤ちゃん猫を移動させるといいますが、その子はどういうわけか連れて行ってもらえなかったようです。かわいそうに…と思っていると、その場で管理人さんが引き取ることになり、ホッと胸をなで下ろしたのでした。

それから2年。今度は1匹ではなく、何匹かの赤ちゃん猫が床下にいる様子。ふたたび管理人さんに畳をあげてもらい、床材を数か所外すと、鳴き声が一層大きく聞こえてきます。

懐中電灯を手に中をのぞき込んだ管理人さんによると、「また、野良猫がここで子育てをしているかも」とのこと。けれど、そこには母猫の姿は見当たらないそう。さて、どうしたものか…。

●母猫がいるか・いないかによって対策が変わる

母猫の不在に管理人さんと顔を見合わせていると、「シャー!」という大きな威嚇の声が。

母猫が激しく怒りながら戻ってきました。子猫を守るために、普段の何倍も過敏に神経質になるというのを聞いたことがあったので、下手に手を出して怪我をするのも、人のにおいがついた子猫だけを残して姿を消してしまっても大変です。そこで、なにも見なかったふりをして、床材と畳をもとに戻しました。

どうしたものかと頭を悩ませ、以前お世話になった獣医師さんに相談すると、「母猫がしっかり子育てをしているなら、もう少し様子をみてみんな一緒に保護しましょう」とのこと。

人の手によって無理やり親子を引き離した場合、母猫が子猫を探して激しく鳴いてまわったり、心に傷を負ってしまったりすることがあるそうです。

また、気配を察した母猫が、無理に子猫を移動させようとして怪我をしたり、事故にあったりすることもあるといいます。仮に、母猫が育児放棄をしているようであれば、子猫を保護すればいいだけの話だけど、こういうケースはタイミングが難しいのだそう。

運よく全猫を保護できたとしても、家族みんな一緒に…とはいきません。子猫はすぐに里親が見つかることが多いけれど、外での暮らしが長い大人猫は難しいそうで、不妊・去勢手術を済ませて元の場所へ戻す“TNR(※)”をすることになるというのが現実です。

それが母猫にとっていいことなのか…と、悶々としているあいだにも、子猫が放置される時間が増えていきます。母猫が、人の気配を気にし始めたのかもしれません。

TNRとは、T=Trap(猫を安全に捕まえて)、N=Neuter(不妊・去勢手術をして)、R=Return(元の場所に戻す)活動のこと

●母猫の保護を試みたが…

そこで試みたのが、母猫の保護です。ところが、警戒してなのか一向に姿をあらわしません。このままでは子猫たちが飢えてしまいます。

急きょ床下に潜ると、そこには手のひらに収まるくらいの小さな3匹の子猫の姿。結局、それからも母猫は帰ってこず、TNRの機会は得られないまま。子猫2匹は同じ里親さんにもらわれていき、1匹は小虎と名づけられてわが家で暮らしています。

のちにわかったことですが、小虎は母猫の初乳をしっかり飲めていて、お母さんから強い免疫力をもらえたようです。排泄の手伝いもちゃんとしてくれていたようで、わが家にきて初めての大便もお尻を軽くトントンしただけでスルッと気持ちよさそうにすませることができました。

「よいお母さんだったんだね」と思うのと同時に、今でも母猫が望まない妊娠・出産を繰り返しているのでは…と考えると、6年経ってもなお反省と後悔をするのでした。その分、小虎をしっかり愛して幸せにしよう!(こちらが幸せにしてもらっていますが)と改めて思わされます。

猫の出産時期のピークは、3〜4月と8〜9月頃。もし外で野良猫の赤ちゃんを見かけて、保護しようかどうか迷ったときは、はじめに母猫がそばにいるかを確認してあげるといいかもしれません。