佐賀商・中野弥花は決勝で見事な大外刈を決めた【写真:宮内宏哉】

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柔道インターハイ、女子団体戦は佐賀商が優勝

 柔道の全国高校総体(インターハイ)は11日、北海きたえーる(北海道立総合体育センター)で女子団体戦の決勝が行われ、佐賀商(佐賀)が比叡山(滋賀)に2-0で勝利。悲願の初優勝を果たした。最後は大将の中野弥花(3年)が見事な大外刈。かつての悪夢から完全脱却の一本勝ちを収め「言葉にならないくらい嬉しい」と笑顔が弾けた。

 勝てば団体戦優勝。緊迫の大将戦で、中野が豪快な投げ技を決めた。「組んだ時から行ける、タイミングが来たと思っていた」。木村穂花(2年)から大外刈で一本。全国の試合で相手を投げるイメージを持ち続けて、磨いてきた得意技だった。井上安弘監督から「ありがとう、嬉しい」と言われ、感極まった。

「インターハイに来るまでキツいこと、苦しい時の方がめちゃくちゃ多かったけれど、やってきてよかった」

 昨年のインターハイ団体戦では、初戦でこの日対戦した比叡山に0-2で敗北。当時も中野は大将だったが、引き分けだった。その後に行われた個人戦78キロ級では決勝進出を果たすも、川崎愛乃(山梨・富士学苑)に崩袈裟固で一本負け。国体でも頂点が取れず「トラウマになった」と振り返る。

「そこから試合で自分を信じられず、練習もやり切れたって日がなくて、どこかで逃げちゃう。(団体戦は)大将で気持ちが出せず、怖くてたまりませんでした。辞めようかな、無理だって思うくらい気持ちが落ちていた」

 悩む中野を救ったのは監督、仲間、両親の存在。「柔道人生のほんの一部。この経験が絶対いい方向に繋がるから」。激励に支えられて部活を続けられた。

部活で一番好きな時間「泣きじゃくって、おかしくなってるけど(笑)」

 3月の全国選手権、無差別級で殻を破る優勝。ちょっとだけ前向きになって、ようやく気付けた。

「畳の上では一人。でも、仲間の声が試合中も聞こえて『よし』って気持ちにさせてくれるんです。キツいところでさらにもう一歩、試合中も大丈夫だって思えます」

 小学1年生で始めた柔道。とことん自分たちを追い込む佐賀商の練習に魅了されて入学した。やってみると信じられないくらいキツいけど、部活に打ち込む中で一番好きな時間だ。

「めちゃくちゃしんどい追い込みをドンとする日があるんですけど、皆でやり切れた後がスカッとします。泣きじゃくって、みんなおかしくなってるけど(笑)。選手はそれぞれ調子いい日、上がらない日が正直あるし、皆が一つになるのは難しいけれど、できたときは感動します」

 12日の個人戦78キロ級で2冠を目指す。「嬉しいけれど、全然ホッとしていない。まだ終わってないので、最後まで気を抜かず勝ち切ります」。夢は「五輪優勝です」と話す中野の目は、一点の曇りもなかった。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)