埼玉高速鉄道「大宮へ延伸を」さいたま市議会で提案 岩槻延伸と別ルート 実はある計画
さいたま市議会の2023年6月定例会で、埼玉高速鉄道を延伸する形で大宮と浦和美園を結ぶ地下鉄を整備すべきという質問がありました。市の東西を結ぶ鉄道新線の検討はどこまで進んだのでしょうか。
大宮と浦和美園を結ぶ「東西交通大宮ルート」とは
「大宮と浦和美園を結ぶ地下鉄を整備してはどうか」。さいたま市議会の2023年6月定例会で、議員からこのような質問が出されました。
埼玉高速鉄道(画像:写真AC)。
現在、大宮駅から浦和美園駅へ鉄道で行く場合は、南浦和駅と東川口駅で2回乗り換えが必要で約40分かかります。東川口駅は川口市にあり、鉄道でさいたま市の東西を移動する際には、いったん隣の川口市を経由しなければならず、東西方向の鉄道ネットワークに課題を抱えているとされています。
そのため、国交省の答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」には、大宮と浦和美園を結ぶ「東西交通大宮ルート」の整備が盛り込まれています。市はこの構想を具体化するため、「地域公共交通協議会 東西交通専門部会」を2019年に設置。LRTなどの導入を想定して採算性や導入空間などの検討を行っていますが、基本方針やコンセプトなどは決まっておらず、まだまだこれからといった段階です。
また、浦和美園駅が終点となっている埼玉高速鉄道線は岩槻駅までの延伸計画があり、2023年度に市が鉄道事業者への事業要請に入るスケジュールを予定しています。
議員の質問では「市内の軌道交通は埼玉高速鉄道だけが大宮駅に接続しない。さいたま新都心に8年後に市役所本庁舎が移転し、市の行政の中心が移ることを考えれば、東西交通大宮ルートは新都心を経由する鉄道であることが望ましい」と要望。「仮に3駅を設けても、大宮〜浦和美園間の所要時間は約20分となることが見込まれる。この路線を埼玉高速鉄道が運営することで、同社の財政面に大きく寄与し、大宮駅の機能向上にもつながる」と指摘しました。
つまり、「東西交通大宮ルート」をLRTではなく、埼玉高速鉄道線を大宮まで延伸する形で整備すべきという趣旨です。岩槻までの延伸計画に加えて、大宮方面への延伸も実現すれば、浦和美園で岩槻方面と大宮方面に分岐することになります。
この質問に対し、小川博之副市長は「提案いただいた地下鉄整備案は、輸送力や速達性、耐震性など、様々な面で優れていると認識している」としたうえで、「地下鉄7号線(埼玉高速鉄道)延伸や沿線エリアの開発動向などを踏まえ、費用対効果や収支採算性、地域への影響、運営主体を総合的に整理し、実現性の高い適切な交通システムを選定していきたい」と回答しました。
大宮駅から浦和美園駅方面は、浦和美園駅のほか、大谷県営住宅、東新井団地、自治医大医療センターなどのバス路線が1日あたり800本運行されており、約2万人の利用があるといいます。ただ、道路混雑や渋滞などにより定時制と速達性の確保が困難な状況となっています。市は、東西交通大宮ルートを整備することで、温室効果ガスの排出削減など環境面でも効果が見込めるとしています。