高速道路で事故や故障のトラブルが起きた後、さらなる事故に巻き込まれて命を落とすという不運なケースが目立っています。事故や故障で停車したら、まず、すべきことがあります。

けっこう深刻 “停止中の車両や人”へ衝突する死亡事故

 高速道路で死亡事故が増加傾向にあるようです。コロナ禍で減った交通量が戻ってきた影響も考えられますが、“命を落とすシチュエーション”に、ちょっと意外かもしれない特徴があります。「停止中の車両や人への衝突死亡事故」が目立っているのです。


高速道路での事故のイメージ(画像:写真AC)。

 NEXCO中日本管内における2022年の死亡事故件数は33件で、計38名が死亡。2021年と比べて7件8名の増加でした。そのなかでも「対停止車両」への衝突は14件14名と、2021年に比べ大幅に増えたといいます。

 死亡事故の半数を占めたという「停止中の車両や人への衝突死亡事故」、その態様は次の通り。

・停止中の事故車への衝突:7件
・停止中の故障車への衝突:2件
・工事停止車両への衝突:2件
・休憩施設内駐車車両への衝突:1件
・休憩施設の入口ランプの駐車車両への衝突:1件
・渋滞末尾で停止していた車両への衝突:1件
・事故で車外に出て轢かれた事故(対人事故):3件
・高速道路外から侵入し轢かれた事故(対人事故):1件

 事故や故障で困っているところ、さらに衝突される……不運というほかないのかもしれませんが、「高速道路は一般道と違います! 同じ感覚での行動は絶対におやめ下さい」(NEXCO東日本の動画)などと呼びかけられています。もしものとき、どうすればよいのでしょうか。

クルマから離れろ!!

 NEXCO東日本は、事故や故障の際、速やかにクルマを路肩に移動させるとともに、後続車に対する安全措置を取ってほしいとしています。すなわち、ハザードランプ点灯、発炎筒の発火、停止表示器材(三角板)の設置です。

 そのうえで、同乗者全員、ガードレールの外側など安全な場所へ待避してほしいとしています。クルマの中に留まることは危険です。なお、その際には自車の前方ではなく後方(手前)にいることが大切とされています。万が一、追突された場合、押し出された自車で二次災害を被る恐れがあるためです。

 110番などに通報するのは、「避難をして安全を確保してから」と呼びかけられています。ちなみにNEXCO中日本によると、本線上の非常電話は、耳の不自由な人も利用できるボタン式のものがあるほか、そうでないものでも、受話器を上げただけでおよその位置がわかるとのこと。

 広い路肩があっても、停止中に追突される危険は常につきまとうようです。「停止中の車両や人への衝突死亡事故」が2020年に最も多かったNEXCO西日本は当時、停車中のクルマが走行中であると誤認し、追随しようとして追突してしまうことがあると話していました。


♯9910の道路緊急ダイヤルなどへの通報は避難してから(NEXCO東日本の画像を加工)。

 また、NEXCO中日本管内で2022年に2件の死亡事故があった「工事停止車両への衝突」も問題になっています。本線中の工事規制帯に気づかず、そのまま突っ込む事故が多発しているのです。同社は「運転支援技術を過信せず、前を見て、運転に集中して」などと、至極当たり前のことを呼びかけています。

 これは、前車に追随しながら設定した速度を維持しようとするACC(オートクルーズコントロール)などの機能に任せて、ながらスマホをしているドライバーなどに向けた警告です。前を見ず、無減速で突っ込んでくる“ミサイル”のような車両は、事故や故障で停車し困っている一般車にも、容赦なく襲いかかってくると考えられます。