「羽田アクセス線に新駅を」実現なるか 品川区が2023年度も検討継続 現時点では新橋〜空港ノンストップ
東京都品川区が推進している「羽田空港アクセス線」の新駅誘致。検討はどこまで進んだのでしょうか。
「羽田アクセス線」新駅誘致の目的とは
2023年6月に起工式が開かれ、いよいよ工事が本格化するJR東日本の「羽田空港アクセス線」。東京都品川区は、この新線に新駅を設置することを目指しています。検討はどこまで進んだのでしょうか。
羽田アクセス線「東山手ルート」は2031年度の開業を目指している(画像:写真AC)。
今回は東京駅や新橋駅方面から羽田空港に向かう「東山手ルート」が着工し、宇都宮線・高崎線・常磐線方面から羽田空港への直通運転が実現します。計画では、新橋駅を出ると羽田空港新駅まで無停車となります。
品川区は2029年度までの長期基本計画に、羽田空港アクセス線の早期整備に向けた働きかけや、新駅設置に向けた要望を行うことを明記。新駅を誘致する目的として「物流施設が大部分を占める地域を人が集まる地域に転換し、区外からも人を呼び込めるようなまちづくりを進めたいと考えています」(都市計画課)と話します。ただ、JR東日本に対する要望はまだ行っていないといいます。
羽田アクセス線には山手線西側エリアと羽田空港を結ぶ「西山手ルート」、新木場方面と羽田空港を結ぶ「臨海部ルート」もありますが、JR線ではないりんかい線を経由することが課題となっており、国や東京都などを含めて協議を進める必要があるため、現時点では実現の目途はたっていません。
区の2022年度補正予算には、「羽田空港アクセス線新駅可能性検討業務委託」として770万円を計上し、JR東日本コンサルタンツに業務を委託しています。この調査では、「西山手ルート」、「東山手ルート」、「臨海部ルート」について、線路の線形や周辺土地利用の状況を把握するとしています。また、新駅の候補地選定、課題抽出、概算工事費の算出、概略平面図作成、他自治体における事例や事業スキームの調査なども検討内容に含まれています。調査結果は公表しない方針です。
2023年度予算には270万円を計上
品川区は次のように話します。
「羽田空港アクセス線沿線は物流施設が多い土地利用となっており、商業・業務施設は少なく、新駅ができてもあまり利用者が見込めないという課題があります。昨年度の調査で技術的に新駅設置が可能な場所を何か所か絞り込んでいますが、今後は新駅設置を要望できる可能性があるのかという点も含めて検討を進めていくことになります」
2023年度予算には引き続き、「羽田空港アクセス線新駅可能性検討」として270万円を計上しており、新駅誘致の可能性を模索する方針です。新線の工事が始まったことから、この機を逃さずに検討を進めるとしています。なお、2023年度予算の用途は未定で、新線沿線のあるべき土地利用の検討や新駅に関する勉強会など、複数の案を検討している段階だといいます。
対してJR東日本は、羽田空港アクセス線への新駅設置に関して「現時点では羽田空港新駅のみを整備する予定となっており、利用者が乗降できるような途中駅を設けることは想定していません」(広報部)と話します。
現状では、区がJR東日本に要望を行っておらず、その可能性も含めて検討を進めていくというスタンスのため、新駅誘致はスタートラインに立ったばかりです。実現は見通せませんが、今後の動向が注目されます。